81話 最強の大魔王。
今日は月末で、遅くなる可能性大なので、
朝にすべて投稿します。
本日の1話目です。
81話 最強の大魔王。
「ずいぶんとナメられたものだな。まさか、余の城に忍び込んでおいて、バレたら逃げればいい、などと、ふざけたことを考えていたのかね?」
(次元ロック……それも、おそろしく高度な……だ、ダメだ……これは、突破できない……)
「ヒエン、やばいわ! 相手は思った以上に魔力が高い! 正面から、殺して逃げましょう」
(それしかないか)
覚悟を決めると、影牢は、闇に溶け込んで、ゾメガを殺そうと、時空を駆け抜けた。
素晴らしい練度の暗殺術で、的確かつ超高速で、ゾメガの首をはねようとした。
「決して悪くはない動きだ。まあ、余の目には、止まって見えているがね」
次元の違いをみせつけていく。
ゾメガは、終始、本のページに意識の大半を向けたまま、
世界最高クラスの暗殺者三人を手玉にとる。
『犬とじゃれている飼い主』もかくや、という気軽さで、
ゾメガは、三人と対峙し続けた。
「ふむ……三人とも、殺意は一級だが、『正面からの削り合い』は苦手な様子……まさか、貴様らは、暗殺者だからといって、強者との実戦を怠っているのかな?」
訓練を怠っているわけではない。
ただ、『実戦』という意味においては、確かに経験が少ない。
部隊の特性上、どうしても『雑魚狩り』中心になってしまうし、
アサシンの特性上、相手に気づかせず、一瞬で首を刈り取ることの方が大事。
正面からの削り合いになった時点で、むしろ恥とも言えた。
(つ、強すぎる……ばけもの……っ……まさに魔王……っ!)
――ヒエンは、全力でゾメガに抗った。
いくつかの『とっておきの切り札』も全ブッパして、どうにか、風穴を開けようとしたのだが、しかし、そんなものが通じるほどゾメガはヤワじゃない。
現状、ゾメガは、『存在値500』程度の、かなり手を抜いた力で対応しているのだが、それでも、ヒエンたちでは相手になっていない。
ゾメガは強すぎる。
人の身で勝てる相手ではない。
(だめだ、絶対に勝てん。ゾメガは、本当に王族クラスだ……っ。……ど、どうする……魔法による逃走は不可能……自力で逃げるのも不可能……)
走って逃げる方法も考えて、ためしに、かるく逃走フェイトをかけてみたりもしたのだが、そのことごとくを、ゾメガに、完璧に防がれてしまっていた。
(こ、こうなったら……)
そこで、ヒエンは、
「降参する。まいった。貴殿の強さは理解した。降伏する。一度、断っておいてなんだが、『先ほどの提案』をぜひ受け入れさせていただきたい。今日より、我々は、あなたの下につく。だから、どうか、殺さないでいただきたい」
ミッションを優先させて、そう言った。
一瞬だけ、『このまま殺されてもいいかもしれない』などとも思った――が、リーダーという立場が、ヒエンに、殉職を思いとどまらせた。
長年一緒にやってきたので、メンバーには、それなりの情がわいている。
『ワガママに付き合わせて、一緒に死のう』とは思わなかった。
ヒエンの提案を受けて、ゾメガは、
「――と、言っておりますが、師よ、いかがいたしますか?」
ふいに、臣下の態度で、そう言った。




