+-87930話 インフィニット・ジャイアニズム。
+-87930話 インフィニット・ジャイアニズム。
「ポンコツだったからこそ届いた世界があった。『俺たちが創り上げてきたメソッド』を盗用されたんだ。ヌルは……俺達が用意しておいた『緊急用のバックドア』を乱用して、『ソルの管理者権限』を奪い取り、原初の世界も、第一アルファも、第二~第九アルファも、その他の全ての世界も、全部飲み込み、ついには、オリジナルのセンエースをも飲み込んでしまった」
「そ、そんなわけがありません! あんなしょうもないレプリカが、センエースを飲み込めるわけがないんですよ!! 我々を飲み込むぐらいならともかく……いや『ソルを飲み込む』というのも、たいがいイカれた話で、信じられませんが、しかし、たとえ、それを成したとしても、センエースをのみこめるわけがありません!」
「俺もそう思っていた。けど、現実は無慈悲だった。すべてが、ヌルに飲み込まれてしまった。世界は終わり、英雄は死んだ。……もっと具体的に『経緯』を伝えると……ユズに開いた『レディ・ジャイアニズム』が、ヌルの中で花開き、『インフィニット・ジャイアニズム』へとプライマルプラチナ化してしまった。インフィニット・ジャイアニズムは、『願い玉の闇』とリンクして、『蝉原の可能性』すら飲み込み、気付けば、膨大に膨れ上がっていた。その膨れ上がった闇が、パラミの『センエースを殺せ』という願いを飲み込んだ。その結果が現状。……『願い玉』は知っての通り、『俺たちの権限の一部(アリア・ギアスシステムの中核)を具現化したもの』……『願い玉の歪んだ暴走』は俺達でも止められない。つまり、もう、誰もヌルをとめられない」
「な、なぜ、そんなになるまで放っておいたのですか……」
「蝉原を注視している間に、ことは起きてしまった。……ほんの少し目を離したすきに、ピタゴラスイッチ的に、負の運命連鎖が巻き起こり、ヌルを、過剰な化け物に変えてしまった」
ヌルの周囲には、不安定な負の要素が山のようにあった。
『その全て』が『ヌルにとって都合のいいように連鎖』して、ヌルは、『すべてを喰らい尽くすことも可能な化け物』へと変貌してしまったのである。
「そ、そんなふざけた話……せ、セイバーリッチは?! セイバーには、ヌルのストッパーとしての役割を与えていたはずでしょう!」
「しょせんは、あれも、できそこないのレプリカだ。ファントムトークすらまともに機能していない、ハリボテの模造品。……『負の連鎖によって完成してしまったセンエース性』を止められる力はない。セイバーの方だけでもオリジナルを使えていれば、また、話は変わったかもしれないが……」
「て、天童も……おなじように、飲み込まれたのですか? 天童の方は、いくばくか、本物の因子を使っていたはずでしょう? 女神教が召喚したのち、セイバーと同じく、センエースと合流する予定だったはず……」
「ヌルは、もはや、『レプリカの敵』じゃない。いや、もはや、アンリミテッドを相手にしてもどうかな……ヌルは、センエースをも超えているんだ」
「ま、まさか、本当に……」
絶望で頭が真っ白になりかけたが、
そこで、ソルAは、
「た、田中トウシは?! あの究極の天才は、こういう、不測の事態を凌駕するためのバックアップでしょう!」
「ヌルはセンエースを奪った相手だ。田中トウシは、確かに、最高クラスのスペックを持つが、所詮は、センエースのオルタナティブ。センエースが負けた相手には敵わない。ギリギリまで抵抗していたが……結局のところは、飲み込まれた」
「……」
「どうやら、運命は、レゾナンスを許容しないようだ。管理システムのホメオスタシスは『破滅に到る現状』の『維持』を強く望んでいる。その強い意志が、ヌルと共鳴してしまった」
「つ、つまり、どういうことですか?! 抽象的な表現はやめて、端的に言ってください。私は頭が悪いんです!」
「センエースは『破滅を殺すジンテーゼ』にはなれなかった。ヌルごときに負けるようでは話にならない。……ああ、コスモゾーンの『パッケージ』も、ヌルによって書き換えられていく。世界は終わった……俺たちが何を望んでも、意味はなかった……」
「ふ、ふざけないでください! そんな結末を、私は望まない!」
「お前が望むか望まないかは関係ない」
「ソルPは! ソルPはどこにいったのですか?!」
「ソプラノドールを経由して、ヌルに奪われた。じきに俺も消える。いずれ、俺も、『12345(じゅーご)』を経由して、ヌルに全部を奪い取られるだろう」




