70話 高次の対話。
70話 高次の対話。
「ゾメガ! 感動したぞ! お前は、間違いなく究極の化け物だ!!」
センは心からの歓喜を叫びながら、
ゾメガのふところに飛び込んだ。
出力を700に抑えているので、
ゾメガにも、センの動きは見えている。
――見えているのだが、
(ぬぅ! な、なんという鋭い動き……っ。信じられないほどの練度。とてつもない戦士……余は魔法使いとして最強だが、この男は、戦士として、間違いなく世界最強……っ)
動きをとらえきることができず、
「閃拳!!」
腹部への、まっすぐな一撃を許してしまう。
直撃をくらう瞬間、
「ドリームオーラ・ファンタジア!!」
反射的に、強力なバリアの魔法を張ったが、
「ぐぶふぅうう!」
ダメージカットが追い付かず、
ゾメガの内臓が悲鳴をあげた。
「だ、大治癒ランク23!!」
すぐさま、超高位の回復魔法で体を癒すが、
センは、『ゆっくりと回復するスキ』をあたえてくれなかった。
続けて繰り出される、
「深淵閃風」
水平蹴りで、
「うおっ!」
体軸を狂わされたゾメガは、
「時空移動ランク23!」
すっ転ぶ前に、魔法で亜空間に飛び込んだ。
亜空間を移動しつつ、センの背後をとり、
もう一度、フルパレードゼタキャノンをぶちこもうとしたが、
(いないっ……どこだ?!)
センの姿を確認できない――と、
思っていると、
「亜空間を移動できるのが自分だけだと、いつから錯覚していた?」
頭上で気配を感じて、
バっと顔をあげると、
センが、
「異次元砲」
両手にためた魔力をぶっ放してきた。
「ぐぉおおおおっ!」
押し出される形で、亜空間から排出されるゾメガ。
センも、亜空間から飛び出して、ゾメガの様子を確認する。
すると、ゾメガは、
「見事だぁああ! センエース! 認めよう! 貴様は、戦士としては間違いなく全世界最強! ただ、魔法の腕は、そこまでではないな!」
「おいおい、マジかよ……俺の異次元砲が、ここまで効かないとか……普通にショックだぜ」
魔法に対するすべての適性が高いゾメガは、
異次元砲のような『無属性』かつ『貫通属性』という、
『耐性を無視する力』が高い魔法に対しても適性を持つ。
めちゃくちゃな話だが、これがゾメガ・オルゴレアム。
魔法に関しては誰よりも高い場所にいる化け物。
実数値、潜在能力、適性、耐性、天賦。
ゾメガは、間違いなく、世界最強クラスの数値を誇っている。
(……だが……)
と、センは思う。
(……『戦闘力』は低いな)
『同じ存在値どうしで闘った時にどっちが勝つか』――その指標として扱われるのが戦闘力。
数値では表せられない、純粋無垢な『戦闘偏差値』。
(……おそらく、ゾメガは、本当に、生まれた時から最強だったんだろう……)
生まれた時から強すぎて、
同格と死闘を繰り広げるという経験がない。
――『雑魚狩りの楽勝』をいくら繰り返しても、心技体すべてを見据えた『本物の強さ(高い戦闘力)』は、永遠に獲得できない。
『経験値という数字』を稼ぐことはできても、
『本当の器』を磨き上げることは不可能。
――終焉が見えてきましたね。
この土日で、すべてが終わります(~_~;)
少しはやいですが、土日の予告を。
「センエース死す。――結局のところ、命に意味はなかった。世界はただの空虚な箱庭のまま。『理想の循環』など、夢のまた夢。何もできないまま、世界は終わった」




