68話 『永き時空を旅した敗北者センエース』VS『すべての魔を置き去りにした大魔王ゾメガ・オルゴレアム』
68話 『永き時空を旅した敗北者センエース』VS『すべての魔を置き去りにした大魔王ゾメガ・オルゴレアム』
「余は命の頂点。生まれながらにして最強。すべての魔を置き去りにした、真なる大魔王」
「それを疑う気はないよ。あんたは強い。俺が今まであってきた命の中でぶっちぎり最強。だからこそ、俺はあんたが欲しい。あんたがいれば……ノコの防衛は完璧になる」
そう言いながら、
センは、魔力とオーラを全身に充満させていく。
高純度のエネルギーで満たされていくセンを見て、
ゾメガは、
「ほう……力のコントロールは、なかなかお上手じゃないか。数多くの強者を見てきたが……そこまで澄み切った明鏡止水は初めてだ。フェイクオーラの練度も美しい。……少なくとも、先ほど勝手に死んだ雑魚よりは強そうだ。存在値600……いや、700はあるか?」
などと、センを推測しながら、
ゾメガも、全身に力をためていく。
とてつもない質量をもった魔力がボコボコと泡立つ。
「存在値700を超えた人間など見たことがないが……仮に、貴様の存在値が700を超えていたとしても、余には及ばない。余の存在値は800を超えているから」
ニっと、自信満々にそう言ってから、
ゾメガは、無詠唱で瞬間移動を使う。
素晴らしい練度で時空を駆け抜けて、
センの背後にまわりこむ。
「連射・煉獄魔弾ランク23!!」
背後から、速攻の魔法攻撃。
完全に死角を奪い取ったと思ったのだが、
「すげぇぞ、ゾメガ! お前は数値だけじゃない! 技の熟練度も見事だ!」
そう言いながら、
センは、アクロバティックに、
ゾメガの『マシンガンのような魔弾の連射』を回避しつつ、
アイテムボックスから剣を抜いて、
「――飛翔一閃――」
飛ぶ斬撃を放った。
「ぬっ?!」
素晴らしい一撃だったので、
ゾメガは、一瞬、見入ってしまった。
(な、なんという見事な……ここまで磨き抜かれた空斬を見たのは初めてだ……っ)
避けられない速度ではなかったので、
一瞬、見入ってしまったものの、
普通に回避することはできた。
しかし、
(あの一撃……もし、直撃していたら、大ダメージは免れなかった……)
ゾメガは、あまりにも強すぎるため、
これまで一度も、『強力な一撃を叩き込まれる』という経験がなかった。
『まともな闘い』になる相手と、『向かい合ったこと』そのものが初めて。
体の芯がゾクリとした。
これは恐怖ではない。
そこまで安い感情ではない。
頭の中で、感じたことのない分泌液が、勢いよくはじけているのを感じた。
「面白いな、人間。貴様は強い」
そう言いながら、全身に送り込む魔力の質を変化させる。
より強く、より重く、より硬く、
『死闘』に向いた魔力を練り上げていく。
「もっと見せろ、貴様の強さ。そして、もっと余を楽しませてみろ。もし、余の目にかなったら、貴様を余の配下にしてやる」
「はは……認めてもらえたのは嬉しいが、上に立つのは俺だ。俺がお前を支配する」
「真に実力があるのであれば、その過剰な生意気さも愉快と思える。脆弱な愚かさに吐き気を覚える退屈はもう飽きた――さあ、くるがよい。貴様に、真なる高みを見せてやる」




