66話 ゾメガを召喚した代償。
66話 ゾメガを召喚した代償。
「え、えぇっ?! なに?! なんだ?! なんで、手が……っ! ゾメガ、貴様、何かしたのか?!」
「厳罰の魔法を返しただけだ。他は何もしていない。だが、貴様に何が起こっているのか、だいたいの予想はつく」
「お、おしえろ! どうなっている?! ああ、あああっ! どんどん、体が漆黒に……なんでぇええ?!」
「貴様の力だけで、このゾメガ・オルゴレアムほどの大魔王を召喚することなど不可能。何か、特殊なアイテムか秘術に頼っただろう?」
「そ、それがどうした! アイテムを使ったが、しかし、実際に使ったのは私ではない!」
「余を召喚する代償が一人で済むとは思わないことだな。貴様が使ったアイテムがどんなものかは知らんが、どれだけの力を持った神器であれ、生贄一人で済むわけがない」
「そ、そんな……あ、ああああっ! ああああああっ!」
自分の身に何が起こっているのか、正しく理解する間もなく、
パラミの全身は無慈悲な漆黒に飲み込まれた。
そして、その漆黒は、グニャリと、一度、大きなうねりを見せてから、
パァアンッ!
と、盛大に、はじけ飛んでしまった。
その光景を見ていたセンは、心の中で、
(願い玉は、他人に使わせても無意味なのか……それとも、ゾメガ言うように、ゾメガの召喚が、それほどまで重たいのか……どっちが正解かは分からないな……)
などと、考えていると、
バーサミー王が、
「ぞ、ゾメガ……どの! 貴殿の力は理解した! 私は、バカ息子とは違い、貴殿の価値を称えよう! 素晴らしい力だ!」
どうやら、バーサミー王は、パラミよりは、少しだけ賢いらしい。
ゾメガを強制的に働かせようとするより、うまく利用した方がいいと判断した。
バーサミー王は、息子に対する情が薄い。
正直なところ、家族に対して何とも思っていない。
あくまでも有益なコマの一つ。
バーサミー王にとって大事なことは、いつだって、
自分が、より多くの愉悦をえられるかいなか。
それだけである。
「センエースを殺してくれれば、それでいい! それ以外は何ものぞまない! のぞまないどころか、むしろ、ゾメガどのがのぞむものを提示しよう!」
と、下手に出るバーサミー王。
だが、そこで、
「うぶっ……」
ふいに、バーサミー王は、くるしみだした。
見てみれば、体が漆黒にそまりだしていた。
「なっ、わ、私まで! 私まで呪われるというのか! なぜだ! 願いを叶えさせたのはパラミではないか!」
バーサミー王だけではなく、
「い、いやぁあああ!」
ラミルも、
そして、
ブロールが背負っているバッパーも、
どんどん、体が漆黒になっていき、
最後には、パラミと同じように、
パァンとはじけとんでしまった。
それをみたセンは、
(……王族全員の命を代償としたってことかな……それだけの力が、ゾメガにはある……ということ……だろうな……)
現時点では、ただの推測にすぎない。
ただ、その推測が正しかった場合、
(とんでもない力……王族と貴族、あわせて5人分の魂を必要とするほどの魔王……)




