52話 才能だけは超一流のクズ。
52話 才能だけは超一流のクズ。
(パラミに負けたらセンエースに殺される……でも、私じゃあ、パラミには勝てない……どっちみち死ぬ……い、いや……死にたくない……死にたくない……っ)
極限状態に立ったことで、
また、さらに、トワネの眠っていた才能が芽吹く。
「武装闘気ぃいい!!」
オーラを鎧にして纏う魔法を使うトワネ。
ブルムンドの血族の切り札。
父も兄も、本気で闘う時は、この魔法を使う。
トワネも、一応、使えたのだが、おそろしく難易度が高い技なので、
これまでは、あまり、うまく扱えなかった。
しかし、命の土壇場に立たされたことで、
火事場の馬鹿力が、武装闘気を屈服させる。
「な、なんという強さ……っ……君の才覚は、エイル・ブルムンドに匹敵している……っ」
エイル・ブルムンドは、トワネの兄。
優れた実力を持つ戦士で、王族を除けばナンバーワンの実力者とまで言われている。
そんなエイルと比べても、トワネは決して劣っていない。
「あああああああああ!!」
トワネは、死にたくない一心で、
必死になって、パラミ王子と戦った。
パラミ王子の存在値は450で、
トワネの存在値は320。
存在値の差を考えれば、大健闘と言ってもいいぐらい、
本当に、トワネは頑張った。
だが、
「ぐっはぁあっ!!」
パラミ王子の渾身の前蹴りをくらい、吹っ飛ばされて、壁に激突する。
内臓に多大な損傷を負って、口から盛大に血を吐いた。
武装闘気の魔法も解除され、
死にかけのボロ雑巾になったトワネに、
ココが近づいて、
「いいザマ」
ゴミを見る目で、そう言ったココ。
その目は、芯から冷えている。
『大好きだった両親を殺された恨み』は一ミリも消えてはいない。
そんなココの冷たい目をみたトワネは、
「……は、はは……」
まるで、挑発するように、鼻で笑う。
その目は、笑っているけど、死んでいた。
なにかを諦めたような、そんな、あやうい色だけがにじんでいる。
「ねぇ、ココ……あんたから両親を奪ったことを、私が後悔したり、反省したりしていると思う?」
「……」
黙ったままのココに、
トワネは、舌を出して、
「しているわけないじゃない。アブライから、『ミスって、あんたの両親を殺してしまった』と聞いた時、心の底から『最高!』って叫んだわ。実は最初から『目の前で家族を殺した上でさらってこい』って依頼をしたかったのだけれど、そこまでの内容になると、さすがにお金がかかりすぎて、私のポケットマネーでは払いきれなかったのよ」
もう、死ぬのを覚悟しているような顔で、
トワネは、
「苦しむあんたの顔を見るのは最高の娯楽だった。私の暇つぶしに協力してくれて、ありがとう。ココ」
小ばかにしたような顔で、そう言ったトワネ。
ココは、へし折れるほどに奥歯をかみしめて、
トワネを殺そうと、両手に魔力を込めた。
だが、ココがトワネを殺すよりもはやく、
「ぐぶふっ!!」
センエースの腕が、
トワネの心臓を貫いていた。
「ご苦労、トワネ。お前が『命の最前線に立つことで開いた才能』は、すべてココが引き継ぐ。お前自身は、もういらない」




