50話 せまりくる最強。
50話 せまりくる最強。
「間者の報告によると、兄上を殺したのは、ノコ・ドローグのナイト『センエース』。リブレイから送られた資料によると、存在値200程度の『どこにでもいる平均的なナイト』とのこと。その程度の雑魚が兄上を殺せるとは思えません」
第二王子パラミがそう言うと、
「絶死のアリア・ギアスでも使ったか?」
と、国王の『バーサミー』がボソっとつぶやく。
絶死のアリア・ギアスは、『死』と引き換えに『リミッター』を外すという、世界との契約。
王の言葉を受けて、パラミが、
「絶死を使えば、確かに、一瞬だけ、存在値を底上げできますが、しかし、潜在能力以上の力は出せません。たかがナイトに、そこまでの可能性が秘められているとは、とても思えません」
「兄さま、わたくしの間者からの方向によると、王城に異次元砲を叩き込んだのも、そのセンエースとかいう下賤の者らしいですわ。あれほどの異次元砲を放てるのは、ナイトの領域から、おおはばに逸脱しております」
パラミの妹『ラミル』が、怒りをあらわにしながら、
「これは、もしかしたら、リブレイの侵略では? 『ノコ・ドローグが離反した』という虚偽の噂を流した上で、『隠し持っていた高位戦力』をグリドに送り込んだ。その高位戦力がグリドを滅ぼしたとしても、リブレイは関係ないと言い張る。……そういう算段だと考えれば、もろもろのつじつまも合いますわ」
「昨今の状況で、リブレイが、グリドを狙う意味はないが……」
「リブレイは強欲です。東大陸の大帝国にまで手を伸ばすため、グリドを完全に支配下におさめようとしているのでは?」
「かの国は、そこまで愚かではないと思いたいが……しかし、完全に否定はしきれないな……」
などと、話し合っている時のことだった。
ドガァアアアンッッ!
と、豪快な音が、玉座の間に響き渡った。
ダイナミックに登場したのは、
男2人、女2人の少数パーティ。
その中の一人、黒髪のナイトが、
「やるじゃねぇか、トワネ。お前は、間違いなくクズだが、能力だけは、悪くない。今後も生きていたければ、もっと、己の存在価値を示しつづけろ。そうすれば、飼い殺しにしてやる」
「はぁ……はぁ……」
「どうした? 返事をしろよ。言っておくが、お前は、もう用済みだから、殺してもかまわないんだぞ」
「っ! こ、光栄です! ぜひ、飼い殺してください! お願いします! ぶっ、おえっ……はぁ、はぁ……」
ここにくるまで、グリドの兵隊数万を、
ほぼ一人で壊滅させてきたトワネ。
『命の危機』という極限状態に陥ったことで、
『彼女の中に眠っていた才能』が開花した。
王族ほどではないが、彼女も、相当な潜在能力の持ち主。
目覚めたトワネは、必死になって、グリドの兵隊と戦った。
後先考えず、とにかく、目の前の敵を魔法で殲滅する。
それを、ひたすらに繰り返し、センたちをここまで連れてきた。
そんな、トワネの姿を見て、グリドの王である『バーサミー』が、
「――そなたは、我が子バッパーの婚約者、ブルムンド侯の娘だな。そこにいるナイトは、そなたの婚約者である我が子を殺した稀代の大犯罪者である。その賊にシッポをふるとは……いったい、なにごとだ」




