44話 バッパーはマジで強い。
昨日早く帰れたぶん、今日は確実に残業です。
というわけで、朝に2話投稿します。
本日の1話目です。
44話 バッパーはマジで強い。
「……バカが」
そうつぶやくと、バッパーは、全身に力を込める。
高純度のオーラと魔力が、『バッパーのすべて』を輝かせていく。
「私は、世界最強クラスの力を持つグリドの第一王子バッパー・グリディアール。西大陸で私に勝てるのは、リブレイのバルディ王子ぐらい」
堂々と名乗りを上げるバッパー。
そんな彼の名乗りを受けて、センは淡々と、
「否定はしねぇよ。1万年前は、確かにそうだった」
バッパーの強さは本物であり、
『強大な力を持つブロール』でさえ、
バッパーやバルディには敵わない。
この世界において、『王族の血』には、とてつもない価値がある。
「1万? 何を言っているか分からんが、私の大事な婚約者を傷つけた罪は、その命で償ってもらうぞ!!」
バッパーは、そう言い捨てるとセンに向かって拳を突き出してきた。
センは、あえて、ギリギリのところで回避する。
(避けた?! こいつ……っ! ただのナイトではない……っ)
バッパーの『本気の拳』を、ナイトごときが避けるなどありえない。
(先ほどの魔法も、ナイトとは思えないランクとマナコントロールだった……こいつは、いったい、何者だ……こんなヤツがいるなど、聞いたことがない……っ)
センの『素晴らしい動き』に動揺しつつも、
バッパーは、
(……捕縛して、事情を聞かせてもらおうと思ったが……こいつは、全力で殺しておいたほうがいいかもしれない)
的確な判断を下すと、そこからはオーラに殺気を込めた。
キレのある動きで、センとの距離をつめつつ、剣を抜くと、
「剣気ランク19」
剣の火力を上げるバフ魔法を使う。
ランク19という超高ランクのバフ魔法により、バッパーの剣は激烈に強化された。
一般的なナイトであれば、絶対に抗えない力、
上位貴族であっても、対応するのが難しいほどの魔法と剣技。
そんな王級の力で、センの首を切り飛ばそうとした――が、
「全体的に高性能だな。それは認めてやる」
センは、バッパーの一撃を、指でつまむ形で受け止めていた。
その状態のまま、センは、ぶつぶつと、
「性格が終わっていると言う点をのぞけば、お前は非常に優秀な王子だ。性格さえまともだったら、ノコに推薦する王子候補の中に入れていたんだが――」
などと、何かを口にしているセンに対し、
バッパーは、顔中に冷や汗を浮かばせて、
「……な、なぜ……私の剣を止めることが…………ま、まさか、見えたのか? そ、そんなバカな……私の剣が……わ、私の剣だぞ……ランク19で強化した、私の剣を……王族でもない者が……な、なんで……」
そう言いながらも、反射的に、剣を戻そうとするバッパー。
ググっと両手に力を込めるが、
「う、動かん……っ……なんだ、魔法か?! 魔法を使っているのか?!」
どれだけ力を込めても、ピクリとも動かない。
「ご、剛腕ランク19!」
パワーを底上げするタイプのバフ魔法を使ってまで、『センにつままれている剣』を抜こうとしたのだが、しかし、どれだけ力を込めても、センの指から剣をぬくことができない。




