34話 センエースは聖人ではないから、ただのカスを許しはしない。
34話 センエースは聖人ではないから、ただのカスを許しはしない。
「持っているじゃないか、守るべきものを! それをつぶしてやる!」
チンピラは、水を得た魚のように、意気揚々と、
「覚悟しろよ! お前の目の前で、リブレイの聖女を犯して……あ、いや、待てよ……確か、リブレイの聖女は醜い老婆だったはず……さすがに、そんな汚いババアを相手にはできないな……」
などと、ブツブツ言っているチンピラに、
センは、
「……一つだけ忠告しておく。俺の前で……」
鬼のような顔で、
両手に魔力とオーラをためると、
「ノコの悪口は言わない方がいい。彼女の悪口を聞いてしまうと、どんな理由があれ、きっと、俺は切れてしまうから」
そう言いながら、
「闇色領域ランク10」
領域系の魔法を展開させる。
効果は単純。
この領域内において、センの許可なく死ぬことはできないし、気絶することも許されない。
「最近、ノコのことを悪く言うカスばっかりを相手にして、ストレスが溜まっているんだ。少しだけ、ここで解消させてもらうぞ」
そう言うと、
センは、チンピラを、
問答無用に、容赦なく、徹底的に、
フルボッコにしていく。
「ぶげぇ! ごぼこぉ! おぐぃえ! げべぇ!! ぐごぃっ! げばはぁっ! がっはぁあああっ!」
世界最強の拳を、数百発くらったことで、
チンピラの体は、全身の『骨という骨』が、変形した上で砕けちる。
内臓も、余すことなく全て破裂したが、
しかし、それでも、チンピラは死んでいない。
それどころか、気を失うことすら出来ない。
最初の1・2発の時は、
まだ、プライドもりもりで元気に抵抗していたチンピラだが、
しかし、数百発を叩き込まれた時には、
「うげぼ……も、もう……ゆるして……」
マフィアとしての体裁を保つことはできなくなり、
恥も外聞もなく、ひたすらに、許しをもとめるだけのボロ雑巾になった。
慈悲を請うチンピラに、センは、
「なんでだ?」
と、無慈悲な言葉を投げかける。
「俺は、なんで、お前を許さないといけない?」
「……」
「逆に……もし、俺がお前に許しを求めていたら、お前は俺を許したか?」
「……ゆ、許したっ……許していたから、だから……俺も、たすけてくれっ」
そこで、センは、つい笑って、
「すがすがしいぐらい、ハッキリと嘘をつくじゃないか。ついさっき、『土下座して許しを請おうが関係ねぇ』とか言っていたじゃねぇか」
センの正論を前にして、
チンピラは顔をゆがませる。
(ぐ、ぐぅ……ど、どうにか……どうにかして、見逃してもらわねぇと……このままだと、マジで殺される……っ)
センに絡んでしまったことを全力で後悔するチンピラ。
マフィアというのは、『一般人にナメられたら終わり』の稼業。
だから、生意気な態度を取られた場合、その相手が少々手ごわい相手だったとしても、果敢に立ち向かわなければいけない。
だが、その中にも例外というか、タブーがあって、それは、
『頭がぶっ壊れているヤツには手を出してはいけない』というもの。
完全に頭おかしいヤツが相手の場合、マフィア的な対応をするメリットがない。
「……た、頼むぅ……助けてくれ……俺が悪かったから……金なら……いくらでも払うから」




