27話 『盗賊のカシラ』と『侯爵令嬢』の交渉術。
27話 『盗賊のカシラ』と『侯爵令嬢』の交渉術。
「ノコ・ドローグ。事情は、あらかた聞かせてもらった。バルディに、老化の呪いを、押し付けたんだろ? やるじゃねぇか。バルディのことは嫌いだったから、あの老いた姿を見た時、胸がスっとしたぜ。あのバカ王子、ちょっと強いからって、調子にのって、俺たちのことを好き勝手に利用していやがったからなぁ。いつか、痛い目にあわせてやりたいと思っていたが、まさか、あんな姿になるとはな……くくく」
「気持ち分かるわ。あたしも、あのバカ王子、大嫌いだったから」
「おや? 婚約していたんじゃなかったっけ?」
「バカ王子のバカ親であるバカ国王が勝手にきめたことよ。婚約が決まった時は絶望したわ。もし婚約破棄されなかったら、バカ王子を暗殺しようと思っていたくらいよ」
「貴族ってのも大変だなぁ、はっはっは!」
などと、大声で笑ってから、
「ノコ・ドローグ。あんたを殺せば、2億テスの報酬をもらう約束になっている。ターゲットが貴族級とはいえ、破格の額だ……」
野盗のボスであるレンド自身も『高額の賞金首』で、
『賞金をかけられている悪党』の中でも、かなり上位に位置するのだが、
それでも、200万テス程度。
「ただ、あんたは、俺の命の恩人だ。俺の部下の中にも、あんたに助けられたヤツは多い。そこで、提案なんだが、5000万テスをくれねぇか? そうすれば、あんたからは手を引いてやる。報酬が4分の1に下がるのは、だいぶしんどいが、今回に限っては、我慢できる取引だ」
「ほんとうは?」
「は?」
「ケチなバルディが、盗賊相手に2億も払うわけがないわ。その10分の1も怪しいわね。1500万がいいところかしら。どう? あたっているでしょう?」
「……くく……さすが、元婚約者だ。バルディのことを、よおく理解している。ただ、実際に提示された額は5000万だ。これは嘘じゃねぇ。あまりに破格の額だったから、俺も驚いた。バルディは、本気で、あんたを殺そうとしている」
「あのドケチのクソバカが、そこまでの額を出すなんて……本当に、とんでもない恨まれ方をしているわね。殺されかけたのはこっちなのに、逆恨みもいいところだわ」
ため息交じりにそうつぶやいたノコに、
レンドは、
「それで、どうする? 今回の仕事は5000万のシノギだ。一応、こっちにもプライドがあるんでねぇ。どんな理由があれ、それ以下の額に落とす気はねぇ……が……あんたに感謝しているのは事実だから、5000万を払うなら、見逃してやってもいい。これは、マジで破格の譲歩だぜ。ほかのやつが相手だったら、問答無用で寝首をかいてブっ殺し、さっさと、バルディから金をもらっているところ。……あんただから、こうして交渉してやっている」
「確かに、破格ね。リブレイの王族に逆らってまで、あたしを見逃そうとしてくれるなんて」
「5000万あれば、遊んで暮らせるからな。東大陸の大帝国にでも逃げこめば、リブレイの王族とはいえ手は出せねぇし。あと、バルディにイラついているのも事実だ。あいつは性格が悪すぎる。できれば相手にしたくねぇ」




