25話 どっちも過剰に高潔な変態カップル。
25話 どっちも過剰に高潔な変態カップル。
――センも『レベル10の疫病』にかかっていた、
その話を聞いて、エキドナもヒキーレも、目を丸くした。
(レベル6でも私は動くことが出来なかった……)
あの疫病の最も怖いところは、『心を殺しにくる』という点だった。
普通の風邪でも、精神は弱ってしまうが、
ソレが、より強く、のしかかってくるタイプの病気だった。
「さっきも言ったけど、レベル10は、本当に、とんでもない状態よ。でも、センは、それだけの病気になっていたにも関わらず、それでも、必死になって、大勢の人を救おうとしていた。死にかけのボロボロの状態で、それでも、彼は、たくさんの人を救おうとしていた。ただガムシャラにやっていたのではなく、どうすれば、本気で、人々を救えるだろうかと、ちゃんと必死に考えて行動していた。その姿を見て、私は一目ぼれした。カスみたいな男ばかり見てきたから、よけいに眩しく思えた」
「……」
「……」
「本音を言うけど、あたし、バルディと結婚する気なんて微塵もなかったわ。あの好色バカ王子なら、普通に婚約破棄するだろうと思っていたから、裏工作とかしていなかったけど、もし、あのバカにあたしと結婚する気があったとしたら、あたし、たぶん、あのバカを暗殺していたんじゃないからしら」
「……」
「あたし、セン以外と一緒になる気なんて一ミリもないの。『あれだけの男』を知っていながら、なんで、他のカスみたいな男を選ぶ必要があるのよ」
本音をならべてから、
「……なのに、センはそれを理解していない。それが腹だたしいのよ。『バルディに殺された私』を救ってくれたあの日、あろうことか、センは、あたしに、他国の王子を薦めてきたのよ? どう思う?」
そこで、エキドナが、
「そこは、プロポーズ以外、ありえない状況ですね」
と、軽く憤慨しながら、そう言った。
「でしょ! 絶対、そうでしょ?!」
はげしい盛り上がりをみせる女性陣を尻目に、
ヒキーレが、おずおずと、
「け、けれど、身分の差、というものを考えたら……侯爵令嬢であるノコ様に、ナイトが求婚するというのは……」
と、常識的なことをいうと、
「そういうことじゃないの! というか、今のセンなら、皇帝にだってなれるわ!」
「仮に、身分の差があったとしても、そこまでいってしまえば、もはや、後先考えず、衝動的に行動してしまうものでしょう! というか、すべきでしょう!」
と、二人の『強い女性』に詰め寄られたヒキーレは、
普通に、泡を吹いて倒れそうだった。
(う、ウチの嫁も、だいぶ我の強い女性だが……さすがに、この二人と比べたら、カワイイものだな……)
――なんてことを考えていると、
そこで、エキドナの体が、ピクっと反応をしめした。
ノコが、
「どうかしたの?」
と、尋ねると、エキドナが、
「囲まれています。人数は……100前後といったところでしょうか」
その発言に補足するように、
ヒキーレが、
「この、ゆがみが強いオーラ……おそらく、『レンド団』ですね」
レンド団は、『リブレイの南方にある山』を拠点にしている野盗の集団。
この周辺では、最強格の実力を持つ武闘派の『ならず者』組織。




