後日談(5) アダムを追いかけてきた『雷神魔王の元副官』。
後日談(5) アダムを追いかけてきた『雷神魔王の元副官』。
アダムと酒神とアルブムとマリをつれたセンが、
意気揚々(いきようよう)と、『女神の天空城』をあとにしようとしていた、
まさに、その時、
「……んあ?」
瞬間移動で、センの前に、『美女』が現れた。
異様な気配をはなっている『長身の美女』。
『魔王級の実力』を持つと一目でわかった。
反射的に、
アルブムとマリが、センの盾になろうと前に出る。
そんな彼女たちをシカトして、
その、突如現れた長身の美女は、
アダムに対して、片膝をつき、
「アダム様、おむかえにあがりました」
などと、そんなことを口にする。
「え、だれ?」
と、センが、アダムに声をかけると、
「もうしわけありません、主上様。アレは、私のストーカーです」
アダムは、『龍の女神』と同じく、センを主上様と呼んでいる。
セン的には、その呼び方は恥ずかしいのでやめてほしいと思っているのだが、
しかし、『それ以外で呼ぶなど考えられない』と、
かたくなな態度をしめしてくるので、
泣く泣く受け入れている。
アダムは、絶対服従を誓っているくせに、
『ムチャクチャ頑固』というか『すげぇワガママ』で、
『供回りは交代制』というルールも、ガン無視して、
絶対に、センの側から離れない。
アダムを計算に入れた上で『護衛のリミットを3人』ということにすると、
弟子たちの不満が爆発してしまうので、
結果的に、『ともまわりの数は4人』ということになってしまった。
「私が倒した雷神魔王の『魔軍司令(右腕)』で、『私に魔王をやれ』としつこく言い寄ってくる変態なのです」
「変態のストーカー……マジでか。やっぱ、美人は、そっち系の問題で苦労するんだな。あー、よかった。ブザイクに生まれてきて。人生で、一度も、そんな苦労したことな……」
と、そこで、センは、自分のまわりにいる四人の美女をチラ見して、
「……そういえば、今、まさに被害にあっているところだった」
と、ボソっとそうつぶやく。
そんなセンに対し、
『アダムのストーカー』は、
ギラリと、強い目でにらみ、
「そこの下男……アダム様に対して、なんという無礼な口のきき方だ」
と、ブチ切れてきた。
「アダム様は、かつての我が主『雷神ガーオンジ』を一対一で殺してみせた最強の魔王。いずれ、すべての魔王をくだし、世界の頂点に立たれる御方。そのいと高き御方に対して、貴様のようなカスが、ナメた口をきくんじゃない!」
と言われたセンは、
アダムに視線を向けて、
「ごめんなさい、アダム様。どうやら、俺みたいなカスは、あなた様にタメ口で話しちゃいけないようです。いままで、ごめんなさい。あなた様を配下にするとか、そんな不敬なことはダメダメだと思いますので、今、この瞬間をもって、『俺の配下』という任をとこうとおもいます。いままで、ほんとごめんなさい」
「おたわむれはおやめください、主上様。私は、今後も、永遠に、あなた様の一番近くにおります。あんなストーカーのいうことなど気になさらないでいただきたい。ストーカーなんて、ただのクズなんですから」
そう言われたセンは、
アダムのことをジっと見つめて、
「うん……そうだね……ほんと、そうだよね……『人の話を聞かないストーカー』って、ほんとダメだよね」
などと話していると、
アダムのストーカーが、
「アダム様。さあ、城へ帰りましょう。あなた様の強さに心打たれた『敬虔な臣下の面々』が、あなた様の帰りをまっております」
話を聞くに、どうやら、
彼女――『ダクラ・ゴスリーナ』は、
雷神を倒したアダムに、『魔王の後釜』を任せようとしているということ。
六大魔王の国ともなれば、
そこらの小国とは違い、かなりの大国で、
『魔王が死ぬ』というのは一大事。
一般的に、魔王を倒した者が、次の魔王になる。
強い者が正義の戦国時代。
だが、アダムは、王になることを拒んだ。
彼女の目的は王になることではなく、強くなることだったから。
「アダム様。あなた様は、上に立つべき御方。『六大魔王の一角』として、『我らの王』として、『頂点』にたっていただきたく存じます」
「死ぬほど興味がない。それに、私は、主上様から離れられない。そういう『魂の契約』を結んでしまったから」
アダムがそう言うと、
ダクラは、キっと、センをにらみつけ、
「貴様、アダム様を洗脳したな……」
「しているつもりはないんだけど、まあ、でも、洗脳されているとしか思えないよなぁ。俺も思うもん。『あ、この女、ちょっと頭バグっちゃってる』って」
「アダム様を解放しろ。さもなくば殺す」
ギラギラと殺気を放ってくるダクラ。
「え、俺、殺されんの? なんにも悪いことしてないのに? どっちかっていうと、むしろ被害者なのに? たまんねぇな、おい」
「ゴチャゴチャぬかすな、死ねぇええ!」
しびれをきらしたダクラが、
センに向かって殴りかかった。




