23話 蝉原くーん、ちょっと、こっち来てー。
23話 蝉原くーん、ちょっと、こっち来てー。
俺の名前はセンエース。
ただの陰キャです、こんにちは。
ヘブンズキャノンという、どうしようもないゴミ能力を手に入れた俺が、
『玉座の間』に帰ると、
そこには、いつものメンツのほかに、
『3人ほど』の『知らんヤツ』がいた。
話を聞いてみると、
「――というわけで、この三人を連れてきました!」
デビナがニコニコと、自分が主犯の『拉致事件』について報告してきた。
『邪教の使途っぽいヤツ』と、
『高身長のオッサン』と、
『5歳ぐらいの幼女』の三人が、
それぞれ、不安そうな顔で俺を見ている。
さて、どうしたもんかなぁ……
と悩んだのだが、
『天真爛漫な笑顔を浮かべているデビナ』を見ると、
「あ、うん……ご苦労さん。よく、がんばったね」
と、言うしかなかった。
一応、『結果的』には、『悪の組織から、あの幼女を守ることになった』んだから、
『良い事をした』とも言えなくは……ないんだけど……
なんだかなぁ……
「お褒めいただき、恐悦至極! これからも、セン様のためにがんばります!」
ニコニコが止まらないデビナ。
その後ろでは、アズライルが、みけんにシワを寄せて『ヤバいヤツを見る目』でデビナを見ていた。
……いろいろと言いたいことはあったが、俺はグっと飲み込んだ。
俺は『人を使う』のが得意じゃない。
『弟子たちのコントロール』は、全部、蝉原に丸投げしよう。
あいつなら、『理想の王』だけではなく、いい『管理職』にもなれるだろう。
というか、なってもらわないと困る。
なれないようなら、死んでいただこう。
言っておくけど、お前が母さんの財布を踏んだこと、
俺、まだ忘れたわけじゃねぇから。
俺は、とりあえず、
「蝉原くーん、ちょっといいかなー」
ほかの連中を待たせて、
蝉原と二人で別室にこもると、
俺は、すぐさま、
蝉原の頭を掴んで、壁にたたきつける。
「蝉原くーん、一般人を傷つけるのはNGだって、俺、いったよねぇ?」
「も……もうしわけない、センくん。おれの『監督不行き届き』だった……まさか、誰の許可もとらずに、勝手に地上に降りるとは思っていなくて――」
俺は、蝉原の頭から手を離して、
「別に報告する必要も、許可をとる必要もねぇ。俺の嫌いな『胸糞』さえやらなければ、何をしてもいい。俺は、お前らの王じゃねぇから、ごちゃごちゃと、ひとつひとつの行動に対してあれこれ言う気はねぇ。俺が言っているのは、『一般人の家に襲撃して、殴って、許可なくむりやり、ここまで連れてきている』ということだ」
さすがに、それはやりすぎ。
相手が『最低のクソ野郎』なら別にいいけど、
『普通の親子を拉致ってくる』のは完全に『ライン越え』だ。
「デビナをそういうキャラクターに育てたのはお前だろ。つまり、諸悪の根源はお前だ。あいつの性格そのものに対して文句をいうのは、あまりに、『エゴ』がすぎるから、やめておくが、子供の責任は親の責任。今後、『性格が悪』に寄っている弟子は、お前の下で完全に管理しろ」
「あ、ああ、了解だ。任せてくれ」
「言うまでもないことだが、一応言っておく。あいつらに対してパワハラとかするな。そういう種類の『胸糞』も大嫌いなんだ。中間管理職のお前だけが苦しむホワイト企業を目指しやがれ」
「ああ……わかったよ。おれ的には完全ブラック会社だけど、きみに逆らう気はない。クロートと、デビナは、おれが責任をもって管理する。もちろん、威圧的にコントロールするのではなく、『まともな言葉』でさとすタイプの管理を徹底する」
「パワハラは厳禁だが……『ほんとうにヤバい時』に『殴って分からせる』のは許してやる。『どんなときでも暴力は絶対にダメ』とか、そんな、画一的なことを言う気はない」
「ありがとう、そう言ってくれると助かるよ。……ああ、それと、みんなで話し合って決定したんだが、今後は、デビナとクロートだけではなく、『ボウ(渋オジ)』と『超苺(喪服無口)』も俺の配下として運用していくつもりだ。他の女性陣は、君の護衛として使ってくれ。特定の三人だけ護衛にするとなると、いらない軋轢をうむだろうから、今後は、彼女たち全員が君の護衛ということになった」
「いや、なに勝手なこと言ってんだ。俺、3人までって言ったよね?」
「だから、日替わりローテーションで3人を選抜していくスタイルということになったんだけど、それでいいかい?」
「……ん……ま、それなら、それでも、別にいいけど……ちなみに、なんで、男はお前で、女はこっちみたいな感じ?」
「悪いけど、おれ、女が苦手でね。センくんに、対応を任せたいんだ」
「……女が苦手って……お前、確か、美人ばっかりを集めたチームをもってなかったか?」
蝉原が、『蝉原ファ〇ク隊』と言う、最低な名前の『美少女ばかりを集めたチーム』を囲っているというのは、ウチの中学の男子は全員が知っているウワサ。
中学生男子というのは、俺を筆頭に、みんな童貞ばかり。
そんな中、蝉原は、みんながうらやむような『美少女(ティーン雑誌のモデルやアイドルの卵など)』と、毎日、乱〇パーティをしているという。
『蝉原の場合、ただのウワサではなく、たぶん事実だろう』ということで、誰もが、蝉原に、羨望のまなざしを向けていた。
ちなみに、あの『ユズ』も『蝉原フ〇ック』の一人だというウワサ。
「見た目のいい女は、いくらでも使い道があるからね。というか、うまく女を使わないと、人の上には立てない。だから、仕方なく、利用していただけさ」
「……仕方なくで、毎日、美少女をとっかえひっかえか……さすが、カリスマは言うことが違うな……」
別に俺は、『乱〇したい』なんて思っていないが、
俺も男なので、蝉原が美少女と毎日アレコレしているという話を聞くたび、
普通に『すげぇな、あいつ』とは思っていた。
蝉原は、ヤンキーの王様だから、みんなにビビられていたが、
ウワサの内容がつねにケタ違いなので、
絶対的カリスマとして、各方位から妙な人気を集めていたところもある。
――なんて、そんなことを思っていると、
蝉原が、
「カリスマか……おれも、自分のことを、そういう存在だと思っていたけれど……君という『アイドル(崇拝される存在)』と比べたら、おれなんか、ゴミみたいなものだよ」
うわぁ、ものすごい嫌味を言われたぁ。
めっちゃ、腹たつぅ。
『死ね』って命令してやろうかな……
言っておくけど、俺、その気になったら、お前をいつでも殺せるんだからな。
あまり、ナメたこと言うんじゃねぇぞ、ボケが。




