102話 ワケの分からない感情論。
102話 ワケの分からない感情論。
「なんで、止める?」
「なぜ……なぜって……そりゃあ……」
ナイアの問いを受けて、
ソウル・フォースの中で、無数の記憶があふれてはじける。
『お父さんがこんなにすごいのは、毎日、たくさんご飯を食べているからだ。というわけで、ほら……』
自分の袖でゲンの汗を拭きながら、
『一緒に、お母さんが作ってくれたごはんを食べよう』
覚えている。
全部。
どうしても消えてくれない記憶。
――茶番だ。
全部。
茶番のはずなのに。
どうして、消えてくれない。
なぜ、心にずっと刻まれている?
気持ちが悪い。
こんなものは虚像に過ぎない。
わかっている。
知っている。
けど、
――知っているから、なんだというのか――
自問自答をすると、
いつだって、答えが出そうなときに、
よく分からない感情論が火を噴いて、
お行儀だけは自由な『最終結論』を、
イタズラな優雅さで奪い取っていく。
一緒にご飯を食べたこと、
一緒にフロに入ったこと。
……そういった全てが、ソウル・フォースの中で、
心が押しつぶされそうになるほどキラキラと輝いている。
そんな『わけの分からない感情論』を心に抱えながら、
ソウル・フォースは、ギュっと奥歯をかみしめて、
「……『P2』のように、『思念の鎖』を残されたら厄介だろう。『センエースの因子』は、下手に壊さず、囲っておいた方が安全だ」
自分だけの感情論で語るのではなく、
誰にでも理解ができる論理をナイアにぶつける。
ナイアは、ソウル・フォースの言葉に対して、
わずかも考える時間をとらずに、
「確かに、計算外の邪魔は鬱陶しい。しかし、『それを乗り越える』という道程に価値があるのも事実だ。楽ばかりしていては置き去りにされる。俺たちの敵はセンエースだ。『すべて』を積まなければ勝ち目はない」
「無駄な労力だし、ラスボス・プロジェクトに支障をきたす可能性の方が高い。『準備段階での苦労』は買ってでもするべきだろうが、わざわざ『最終決戦で邪魔される可能性』を残すのは、ただの愚行」
ほかにも無数の言葉を使って、
ソウル・フォースは、
ナイアに対して、思いとどまるよう説得した。
数分という時間をかけたことで、
「……まあ、一理なくもない……かな」
なんとか、『ゲン』を残しておくことを納得させたソウル・フォース。
ナイアを納得させたあと、
ゲンを抱えるソウル・フォースに対して、
ナイアが、ボソっと、
「生かしておくのはいいが、ソレをどうするつもりだ?」
「家に連れて帰る。親として、こいつを監視しておく。そうすれば、こいつが、余計な邪魔をすることはないだろう」
「……」
ソウル・フォースを見ながら、
ナイアは、心の中で、
(危険だ……感情で動くコマは使い物にならない……消しておくか? プライマルコスモゾーンレリックを手に入れた今の俺なら、問題なく処理できる……)
無数の計算が、頭の中をうめつくす。
これからのことを、延々に思考する。
すると、
その途中で、
バンプティが、思考に介入してきた。
(私は反対じゃな)
(……理由は?)
(――ああいう感情論を消していけば、確かに身軽になれる。けれど、それは『自由になる』という意味ではなく、ただ薄っぺらになるだけ。『豊かさ』と『深み』を失う。身軽になった分だけ、拳も軽くなる)
1000回やってダメだったその時は、
当たり前のように、
1001回目のチャレンジに立ち向かう!
そんだけぇええ!!
――というわけで、明日の朝から、イベントを開始します!
応援をいただけたら幸いです!!
・「タイトル」
愛する侯爵令嬢が、クソ王子に婚約破棄された上、冤罪で殺された。その怒りを原動力に『人生を100回やりなおし、神代の力を得た俺』は、彼女をよみがえらせて、絶対に揺るがない永遠の愛を誓う」
・「あらすじ」
リブレイ王国の侯爵令嬢『ノコ』は、『流行り病を治せる魔法』が使える。素晴らしい魔法だが、その魔法を使うたび、ノコは年をとってしまう。ノコは、自分の身をかえりみず、多くの人を救い、そして、老婆になっていった。国を救うために若さを犠牲にした彼女を、婚約者である王子は、『醜い老婆など、誰が相手にするものか』と罵った上で、濡れ衣を着せて殺してしまう。
ノコに救われ、ノコを愛していた騎士の『セン』は思う。愛する彼女を救う力が欲しい。その瞬間、彼の頭に『未来の記憶』が流れ込んできた。
実は、センは、『この日から死ぬまでの100年間』を100回繰り返していた。
10000年間の中で、ありとあらゆる英知と力を身に着けたセンは、ノコを蘇生させ、クソ王子から『若さ』を奪いとり、ノコに注ぎ込んで元の姿に戻すと、そのまま、彼女を連れて国外逃亡する。
『センの怒り』を買ったクソ王子は、決して抗えない破滅の道を進む。
一方、ノコを連れて逃げたセンは、彼女から受けた恩を返そうと、
『彼女が望む全てを叶える』と約束した。
ノコは「センと一緒になること」を望むが、しかし、それだけは叶えることが出来ない。
実は、ノコは、クソ王子に殺された時に「死の呪い」をかけられてしまっていた。
それを解くためには、センが呪いをかぶり、命を奉げる必要がある。
10000年間、ノコを『完璧に救うため』に、必死で闘い続けてきたセンが出した答えは……
これは、『世界一心優しい侯爵令嬢』と、
『そんな彼女を心から愛している優しいナイト』の、
完全なるハッピーエンドの物語。
――今回は、最初からネタバラシしますが、
このセンは、『A型センエース・オメガ』
オメガの因子を色濃く引き継いだセンが、
「婚約破棄モノ」に真っ向から挑む!!
そういう物語です!!
「――意気込んでいるけど、どうせ、今回もダメなんじゃない?」
「もし1001回目の挑戦である今回もダメだったら、その時は、当たり前のように、1002回目に挑戦する! そんだけぇ!!」




