87話 外なる神の頂点をフルボッコにするセンエース。
87話 外なる神の頂点をフルボッコにするセンエース。
わずかな一瞬の中で、
センの声が確かに聞こえる。
「残念。質量を持った残像でしたぁ」
背後から、
「――月華一閃――」
センは、毘沙門天の剣翼の一本を手に取り、
ヨグの背中を切りつけた。
腹を境に、上と下、
真っ二つに割かれたヨグ。
『二つにさけたヨグの体』を、両手で掴むと、
センは、
「はい、ドーンッ!」
ヨグの上半身に、ヨグの下半身を、思いっきりたたきつける。
「ドーン、ドーン、ドォーンッ!!」
何度も、何度も、たたきつけるセン。
「がっあああああっ!! 離せぇええええええっ!!」
自分が何をされているのか、
ようやく理解したヨグは、
センの手から逃れようと、
オーラの出力を跳ね上げたが、
「おいおい、その程度の出力で、俺から逃げようって? そりゃ、もはや、悪手とか無謀とかですらなく、ただの世間知らずだぜ」
そう言いながら、センは、
さらに、ヨグの上半身と下半身をもてあそぶ。
「なっ……なんだ……どうして……っ」
理解ができず、困惑しているヨグに、
センは、
「ビビって損した。お前、数字が膨らんだだけで、戦闘力が、死ぬほど落ちているじゃねぇか。普通の『壊れたモンスター』とは『違う壊れ方』をするもんだとばかり思っていたが、何もかわらねぇ。ただ、『無様に壊れた』ってだけ。ヨグ様ともあろうものが、そんな無様をさらしてくれるなよ、みっともねぇ」
そう言いながら、
センは、
ヨグの上半身と下半身を、テキトーに放り投げて、
「神速閃拳」
上と下、平等に、過剰なスピードの拳を、無数に叩き込む。
悲鳴をあげるヒマもなく、
爆速で、ボコボコにされていくヨグ。
ある程度、ズタズタになったところで、
センは、ヨグの割かれた体を雑につかんで、地面にたたきつける。
そこからは、まるで、うどんの生地を足で踏むみたいに、
足裏で、グニャグニャと一つにまとめてから、
グチャグチャになったヨグの肉体に、
自身の両手を押し当てて、
「亜異次元砲」
ゼロ距離からのクリティカル異次元砲を放った。
「だぁああああああああああああああああああああああああっっ!」
えげつない火力が直撃したことで、
ヨグは、全力の悲鳴をあげた。
わかりやすいスーパーエネルギーの照射を受けて、
ヨグの意識が飛びかけた。
どうにか、精神力だけで気絶は耐えたが、
しかし、壊れたヨグの地獄は終わらない。
センエースに油断はカケラもない。
どこぞの慎重な勇者よりも徹底的に、
センは、ヨグに対して、容赦ない追撃を叩き込んでいく。
「げへぇえっ! がはぁああ! がぁああああ!」
死の悲鳴がこだまする。
世界の全てに響き渡る。
それでもセンは止まらない。
丁寧に、丁寧に、
ヨグを徹底的に殺しつくしていく。
時間をかけて、
ヨグをすりつぶしたセンは、
「――『レベル1の虫ケラ』に『ここまでケチョンケチョンにされる気分』はどうだ。え? 外なる神の頂点さんよぉ」
「……ぅ……ぐ……」
「ここに来る前までは――いや、もっと言えば、お前が変身した直後ぐらいまでは『これまでにない死闘になる』と思って色々と覚悟していたんだが……お前、ちょっと、弱すぎるぞ。どうした? 体調不良か? もしかして熱ある? それとも寝違えた?」




