52話 実は、お互いが、お互いにとって最高のエサ。
52話 実は、お互いが、お互いにとって最高のエサ。
ウムルという敵との闘い方にも慣れてきて、
ゾメガも、『オルゴレアム・オーバーロード』という変身に適応してくる。
ゾメガがオルゴレアム・オーバーロードに適応するたび、
配下の面々も、自身にかかっている強烈なバフに適応していく。
時間を重ねるごとに、ゼノリカは、どんどん強くなる。
3号を殺す時間は、さらに短くなった。
被ダメージ量も減少している。
ゼノリカはさらに強くなる。
4号、5号、6号と、問題なく殺すことができた。
ウムルを殺すたびに、ゼノリカの面々はハイになっていく。
オルゴレアム・オーバーロードのバフがなじんでくる。
10号を倒した段階だと、
ゼノリカの面々は、ほぼトリップ状態。
ウムルほどの化け物を、10体も連続で討伐できている。
その事実に高揚する。
命が輝く。
――そんな、ノリに乗っているゼノリカに、
『890000号』が、冷や水を浴びせる。
「おお、すごい、すごい。こんなにはやく、10号が、倒されるとは。正直、完全にナメていた。貴様らは、思った以上に優れているな。……ただ、何人か息切れしていないか? 大丈夫か? まだ、私たちは『999990体』以上いるんだが、倒しきれるか?」
ニタニタと笑いながら、
遠すぎる絶望を、わざわざ口に出して、
未来の輪郭をぼやけさせる。
『890000号』の言葉に折れかけたが、
しかし、ゼノリカの面々は、歯を食いしばって、
『11号』との闘いにいどんだ。
休憩もなく、ひたすらに、がむしゃらに、
ずっと、全力全開状態を維持して、
目の前の化け物と向き合い続ける。
頭がおかしくなりそうだったが、
しかし、未来のことを頭の中から消して、
純粋な今とだけ、必死になって向き合い続ける。
そうやって、11号を殺した。
12号も同じように殺す。
――息が切れてくる。
疲れが、如実に、全身を蝕んでくる。
ゾメガが傷つくたびに、上昇率は上がっていくが、
上昇率の増加率よりも、疲弊する度合いの方が上。
20号を倒した段階で、
すでに、天下の面々はフラフラだった。
MPは一時的無限になっているが、
体力と精神力の方は普通に減っていく。
ウムルは、本当に、何号だろうと、関係なく、
全体、同じ存在値&戦闘力で、はてしなく強い。
さらには、『ゼノリカがウムルに慣れてくる』のと同様に、
ウムルだって、ゼノリカの連携に慣れてくる。
『100万の目』で『両者の闘い』を真剣に観察しており、
かつ、死に際に、闘いの経験を、
『中心』にアップロードしているから。
どんどん、『濃厚な経験値』がたまっていく。
『センエースとの闘い』には慣れているウムルだが、
『集団戦』の経験値は微妙だった。
だから、ここまでは、『VSゼノリカ戦』で苦戦を強いられた。
しかし、ウムルもまた闘いの天才。
ゼノリカとの闘いの中で、
複数戦の真髄を掴んでいく。
ヌケガラのシャドーとは思えないほどの天才性。
ウムルの中心で、『複数戦の器』が、どんどん磨かれていく。
『軍』という単位で見た時、ゼノリカは間違いなく世界最高。
つまりは、世界最高のエサ。
この上ない経験値。
ウムルは、どんどん強化されている。
――現時点で、すでに、だいぶ強化されている……はずなのに、
ゼノリカは、まだ、ウムルを殺し続けている。
「さ、30号も殺されたか……いや、すごいな。私を一体殺すだけでも大変だというのに、本当に、よく頑張る」




