22話 センエースとは……
22話 センエースとは……
「例えるなら、こいつの『ギャグ漫画補正』は『鎧』だ。どれだけ傷ついても、すぐに自然修復する鎧。素晴らしいチートだ。認めるよ。だから、私は、カンツの鎧を無視して、中身を壊すことだけを考えた」
ウムルは、たんたんと、
「――『センエース』は『耐久力の高い化け物』を相手にする機会も多かったし、『壊れたモンスター』や『高次の神々』は、『ギャグ漫画補正』ほどではないが、似たような再生系・防御系・復活系のスペシャルをもっていることが多かった。だから、センエースは、常に、『中心』を殺す能力を求め続けた。『ただの火力』を求めるのではなく、『本質的な強さ』を求めて鍛錬を積み続けた。その期間は、常人に想定できる範囲を大幅に超えている」
センエースを説明する。
丁寧に、真摯に、実直に、
「センエースの背中を魅せつけようとした気概だけは大変結構。しかし、センエースのマネは誰にもできない」
そんなウムルの言葉など、
カンツは聞いていなかった。
『ギャグ漫画補正』による修復は届いていなくとも、
カンツが必死になって磨いてきた『自分自身の回復力』も相当なもの。
死にかけの体を引きずって、
ウムルの足を掴み、
狂気的な目で、ウムルをにらみつけるカンツ。
「普通に死にかけていながら、しかし、それでも、天下の連中を守ろうと命を張る姿は、確かに、センエースを彷彿とさせる。これだけの力量差を体感していながら、目の奥の光に、一切の揺らぎが見られないのも素晴らしい。けど、それ以上は、もう出せないだろ? いや、わかっているよ。『そこまでの気概』を『見せられるだけ』でも大したモノなんだ。お前はすごい。群を抜いている。カンツ・ソーヨーシ。お前の根性は、ゼノリカの中でも最高峰」
しっかりと、本音でほめたたえてから、
「でも、大事なのはそこから先だ。根性を見せるだけなら、最悪、誰にでも出来る。いや、もちろん、誰にでも出来ることじゃないが、『根性を見せる』という局所的な覚悟だけに限定した場合、誰にだってできる『可能性』はあるんだ。けど、そこから『先』に辿り着こうと思うと、深淵の努力が必須になってくる。……この努力が、なかなか積めるものではなくてね。可能性を持つ者すら少ない……というか、ほぼいない」
言いながら、
ウムルは、自分の足を掴んでいるカンツの手を雑に引き離して、
その手を踏みつけながら、
「カンツ・ソーヨーシ。お前はセンエースのことを、所詮は、概念の擬人化に過ぎないと判断した。それが敗因だ。もし、お前ほどの器の中心に、正しくセンエースが刻まれていたならば、おそらく、私程度は、簡単に対処できていただろう」
「……フー……フー……」
腹をすかせた猛獣のような顔でウムルをにらみつけているカンツ。
その『視線の強度』は間違いなく最高峰。
この世のどんな化け物であれ『ビビること間違いなし』の威圧感。
――けれど、ウムルには届かない。
正式に言うと、ウムルの中に刻まれたセンエースエンジンには届かない。




