21話 無敵のコンボ。
21話 無敵のコンボ。
「――今、この瞬間、私の中核には『センエースエンジン』が搭載された。わかるか、カンツ。貴様は、信念のみでセンエースを投影しているが、私は、事実としてセンエースのエンジンが搭載されたのだ。どちらも『疑似』ではあるが、どちらの方がより精度の高いパチモノであるか、そんなことは言うまでもないだろう」
そう言い切ってから、
ウムルは、拳を硬く握りしめて、
「――閃拳」
重たい一撃を放った。
センエースエンジンによって補強された拳は、
カンツの奥深くまで届く。
「ぐふぅっ……っ!!」
すさまじく重たい一撃だった。
かつて、マリスに叩き込まれた『閃拳』を超えていた。
「……ど、どういうことだ……ゼノリカに所属しているわけでもない『一介の化け物』風情が……なぜ……マリス以上の閃拳を……」
「――『センエースという概念を強く求めている』のが『ゼノリカに所属している者だけだ』と、いつから錯覚していた?」
「……っ……」
つい意識を失いそうになったカンツだが、
根性だけで、どうにか体を支えて、
「……笑えない一撃だ……しかし、ワシが、この一発で終わるなどと思うなよ」
「そんなことは思っていない」
そう言いながら、
ウムルは気を整えていく。
「閃拳は、ザコを相手にするときは一撃必殺技的な役目を持つが、高耐久の同格を相手にするときは、質の高いコンボ始動技として運用される。『研ぎ澄まされた正拳突き』が、相手の心に深く突き刺さる。ようするには、確反を強制する一手。短フレームでスキが少なく、防御された時の硬直も少ない。非常に優秀な出し得技」
『習得するためにはエゲつない時間を積む必要がある』という点が非常に厄介だが、それ以外には、まったくといっていいほど弱点がない、とんでもなくスペックが高いグリムアーツ。
「センエースはバカに見えるが、実は、色々と考えてビルドを組んでいる。その証拠を少し体現してやろう。――深淵閃風」
水面蹴りでカンツの足をさらっていく。
宙に浮かされたカンツの全急所に対し、
「――百華・神速閃拳――」
膨大な数の拳を叩き込む。
一発一発が死の気配を纏う狂気の拳。
無数の拳で削りを入れてから、
最後に、
「――龍閃崩拳――」
とびきり重たい一撃を叩き込む。
センエースの流儀。
数多の化け物を葬り去ってきた至高の一手。
そんな、最強のコンボをくらったカンツは、
「が……ごほっ……」
白目をむいて、盛大に吐血して、
その場に、ズシンと倒れこんだ。
『カンツが倒れた』という絶望を目の当たりにした、
『天下の面々』は、手に汗を握って、
「ま……まだだ……カンツ猊下は……まだ……」
『信じたくない』という想いから、奥歯をかみしめて、
「カンツ猊下は、無敵のスペシャルを持つ超人! 何度倒されても、何度でも蘇る!!」
そんな天下の願望を耳にしたウムルは、
「――『中心』をボコボコにしたから、そう簡単には復活できないさ」
くつくつと薄く笑いながら、
「例えるなら、こいつの『ギャグ漫画補正』は『鎧』だ。どれだけ傷ついても、すぐに自然修復する鎧。素晴らしいチートだ。認めるよ。――だから、私は、カンツの鎧を無視して、中身を壊すことだけを考えた」




