20話 ワシより強いという程度の雑魚に、ワシは負けん。
20話 ワシより強いという程度の雑魚に、ワシは負けん。
「センエースという概念の中核――『絶望の底で勇気を叫び続ける覚悟』は、栄えあるゼノリカに属する者として、絶対に備えておかなければいけない根本の基盤!」
「……」
「どれほど追い込まれようと、ワシは勇気を叫び続けるぞ! 栄えあるゼノリカの天上、九華十傑の第十席序列14位! その看板は、伊達でも酔狂でもなく、ワシが背負った覚悟の証! ワシの覚悟をナメるなよ、三下ぁ! ワシより強いという程度の雑魚に、ワシは負けんっっ!!」
カンツの覚悟を受けて、
『天下の面々』の士気がさらに爆上がりする。
センエースを知る者は、カンツの背中に強くセンエースを感じる。
センエースを知らない者も、カンツの背中にセンエースを感じた。
だから、潤沢な闘志がみなぎってくる。
アルテマウムル・シャドーという絶望を前にしても、
ヘシ折れることなく舞うことができる。
「閃拳!!」
あえて、その技を使ったカンツ。
この一撃に関しては『ダメージを与えること』が目的ではなかった。
自身の覚悟を世界に刻みこむための一手。
『最後まで抗い続ける』という想いだけを込めた狂気の宣戦布告。
「センエースを信じていない者の閃拳……極めて歪な拳だ」
ウムルの感想に対し、
カンツは、
「ワシがセンエースを信じているか信じていないか、そんなことは、大した問題ではない! ワシにとって重要なことは、『センエースという概念の中枢』を『ワシの背中』で示せるか否か! それだけ!」
カンツは聖典に『すがったり』はしない。
センエースという偶像に『依存すること』もない。
カンツが、ゼノリカでやろうとしていることは、いつだって一つ。
――自身がセンエースの役割を果たすこと。
「ワシは絶対に折れん! 最後の最後まで、最前線に立ち続ける! だから、安心して道標にするがいい!」
天下の面々に背中を魅せつけた上で、
徹底的に暴れていくカンツ。
ウムルが強すぎるので、
ほとんどダメージは与えられていない。
だが、カンツの背中に『敗北の色』を感じる者は皆無だった。
カンツの背中が、天下の面々を、より高みへと導く。
「狂気的だな、カンツ。私が、普通の敵だったら、ここで倒されて、貴様ら側のハッピーエンドで終わっていただろう」
そう言ってから、
ウムルは、ニィと笑い、
「だが、私は普通の敵ではないのでね。そう簡単に、望みの結末には届かない」
そこで、ウムルの存在感が増していく。
圧力が膨れ上がっていく。
「センエースの役割を果たそうとする覚悟は見事だ、カンツ・ソーヨーシ。貴様は、稀に見る逸材。ヒーローの器を持つ超人。しかし、『そこ』が『自分だけの特等席』だとは思わないことだ。――この私にもぉ! 特別な席は用意されているっ!」
ウムルの中心が強固になっていく。
すべてが加速していく。
覚悟を叫んだことで、
ウムルの中で革命が起こる。
「――今、この瞬間、私の中核には『センエースエンジン』が搭載された。わかるか、カンツ。貴様は、信念のみでセンエースを投影しているが、私は、事実としてセンエースのエンジンが搭載されたのだ。どちらも『疑似』ではあるが、どちらの方がより精度の高いパチモノであるか、そんなことは言うまでもないだろう」




