15話 絶望を知るアモン。
15話 絶望を知るアモン。
「が、はっ……」
ウムルシャドーのお遊びでボロボロになっているアモン。
そんなアモンから、IR3は、情け容赦なく距離をとる。
(アモンはもうダメか……ほかの楽連の面々も、もう持たない……)
百済の闇人形は、ゼノリカの面々に対して、
あえて、『仲間意識』というものを薄くして生きている。
ゆえに、こういう場面で、アモンを助けようとはしない。
百済の闇人形が守るべきは『ゼノリカ』という組織全体であって、
特定の個人ではないのである。
見捨てられたアモンは、吐血しながら、
「がっ、ハッ……くそ……死ぬ……僕が……この僕が……ジャミ・ラストローズ・B・アトラーに匹敵する天才である……この僕が……うそだ……絶対に嘘だ……夢だ……」
目の前の絶望が受け入れられない。
アモンは、あまりにも絶望を知らなすぎた。
ボロボロと、年相応の涙を流しながら、
「いやだ……死にたくない……僕は……神になるんだ……だから……いやだ……」
そんなアモンに、
ウムルシャドーは、
「周りを見てみろよ、クソガキ。みんな、死んでいるだろう? 今、ギリギリ生きのこっている者も、これから、シッカリと殺戮していく。お前だけが生き残る道理はない」
「……う……うぅ……いやだ……助けて……」
「おいおい、お前も楽連の武士だろ? ゼノリカが誇る暴力装置の一つだろ? 救いを求められる側の最高峰。それが、救いを求める側になっちゃダメだろ、常識的に考えて」
「こわい……死にたくない……いやだ……」
目がかすんでくる。
意識が遠のいてくる。
絶望を前にして動かなくなる体。
恐怖に包み込まれてまともに働かなくなる頭。
――それらを経験して、アモンは思った。
「……センエース……もし、本当に存在するなら……助けて……」
聖典の主人公センエースを思い出すアモン。
どんな絶望も切り裂いてくれるヒーロー。
ただの物語でしかないとバカにしていたが、
「……助けて……神様……」
極限まで追い込まれたことで、
アモンは、神に救いを求めた。
こんなことは初めてだった。
これまでは、『圧倒的才能だけ』を頼りに生きてきた。
だが、今のアモンは、『神だけ』に救いを求める。
本物の絶望とはそういうもの。
すがるもの全部を失って、
最後に残るのは形而上の存在のみ。
「……神……様……」
「おいおい、みっともないな、アモン。まるで、子供みたいに、無様に泣きじゃくって……って、そういえば、お前、年齢的には普通に子供だったな。10歳ぐらいだっけ? ははは」
ウムルシャドーは、快活に笑ってから、
「ガキに『本物の戦場』は、まだ早すぎたな」
そう言いつつ、
アモンに向かって、右手を向けて、
「異次元砲」
掃除の一発を放った。
深い輝きが、アモンの視界を埋め尽くした。
死の輪郭がハッキリした。
涙が蒸発した。
――その時だった。
「がはははははは!」
豪快な笑い声が、アモンの耳に届いた。
目の前で起きた出来事なので、当然、すぐに理解できた。
自分の盾になってくれた超人。
『彼』は、『20人以上の超天才が在籍している九華十席』の中でも、
最高峰のスペックを誇る化け物。




