3話 完全院リライト。
3話 完全院リライト。
「けど、折れてやらない……私にも積み重ねてきたものはある……ゼノ・セレナーデの世界で『痛みを積み重ねてきた』のは貴様らだけじゃない。何度も、何度も、何度も、『100万単位で貴様に殺されてきた』という道程は、間違いなく私の器になっている」
ドクン、ドクンと、
アルテマ・ウムルの中のエンジンが燃える。
「私の核には、センエースエンジンが積まれている! 単なるパチモンではなく、貴様と共に磨き上げてきた、本物の輝きを持つセンエースエンジン! 私という壁を、簡単に超えられると思うなよ!」
「……てめぇと長時間遊んでいる余裕なんざねぇってのに……良質な覚悟を見せるんじゃねぇよ、鬱陶しい……」
「行くぞぉおおおおっっ!!」
★
――ここで『センエースが、ゼノ・セレナーデの世界に旅立った直後』まで、時間をさかのぼる。
センが、記憶を奪われ、あっちの世界に閉じ込められている間、
真・第一アルファで何が行われていたかを語っていく。
――場所は、全宮学園敷地内。
格式高き第ゼロ校舎の最上階にある貴賓室、通称、全宮室。
全宮家の関係者しか利用することが許されていない特別なフロア。
そこでは、現在、10名ほどの学生が、
部屋の中央に設置されている円卓についていた。
この学園でも最高峰の実力を持つ者たち。
ロコ派閥のメンバー。
ただ、ゼノリカから派遣されている『アモン』と『IR3』の姿は見当たらない。
アモンとIR3は、現在、『のっぴきならない事情』により里帰り中。
「……アギトが本気になった以上、こっちも腹をくくる必要があるわ」
兄であるアギトから『必ず殺す』という宣戦布告を受けた全宮ロコは、
すでにくくっていた腹を、さらに、硬結びでがんじがらめにする覚悟を示すと、
「戦力の増加はもちろんだけれど、こちらから、いくつか動いていこうと思う。そこで――」
と、今後の『奇襲作戦』や『削り運動』についての流れを語ろうとするロコ。
だが、そこで、
「――失礼」
許可もなく、勝手に、全宮室の中に入ってくる者がいた。
当然、ロコは怒りをあらわにして、
「誰だ! 勝手に入るな! ここをどこだと――」
と、叫んだのだが、
その叫びは途中で途切れた。
全宮室に入ってきたのは、
「ん? 私の顔を忘れたのか、全宮ロコ」
威厳のある声でそういう男。
若々しさを感じる力強い肌艶だが、
決して若造ではない。
見事な風格を携えた清廉なダンディズム。
彼の名は、
――完全院リライト。
真・第一アルファ全体を統べている王。
エリアAのトップ。
世界最強の実力者であり、
最強格である『クツグアのコスモゾーンレリック』を所有する者。
間違いなく、この世界の頂点。
誰も逆らえない王の中の王。
「……な、なぜ……ここに……」
普通に震えてしまうロコ。
相手の威風にビビることなどめったにない彼女だが、
さすがに、リライトが相手だと平常心は保てない。
「全宮ルルと話したいことがあって立ち寄らせてもらった」
そう言いながら、
リライトは、チラと、『ヤマト』の方に視線を向けた。




