表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

263/5863

59話 メリット

 59話



 その『かわいい』には、女性特有の、様々な意味がこめられていた。

 みっともなくてかわいい。

 無様すぎてかわいい。

 ダサくてかわいい。

 キモかわいい。

 ブサかわいい。

 純粋に、かわいらしい。


 プラスもマイナスもないまぜになった、かわいいという感情がフツフツと湧き上がってくる。


 すると、不思議なもので、

 それまでとはまったく違う思考形態に切り替わったように、


(アダムを殺す事に……メリットがない……)


 心の底からそう思うようになる。

 そして、それは事実で、


(どうにか苦労して、アダムを殺せたとして……何が変わる? アダムが現れる前と何か変化が生じるか? アダムの無限蘇生を削り切れるほどの力を得る労力と引き換えに、あたしは何を得る? 何も得ない。何も変わらない。むしろ、ただのマイナスにもなりえる)


 実際そうだ。


 このままいけば、いつか、焦って、『アダムを殺すためだけ』のアリア・ギアスを積んでしまう可能性だってある。

 アダムが死んだあとは、ただのマイナスにしかならない借金を背負う可能性。

 地獄。


 そして、それだけの負債や時間を積んで、

 どうにかこうにかアダムを殺せても、

 特にメリットなどない。


 アダムが死んだからといって、センがシューリにプロポーズをするわけではない。


 確かに、センの周囲から、鬱陶しいハエが一匹消える。

 だが、それだけだ。

 自分とセンの関係には何の変化も生じない。

 プラマイゼロ。

 『センのバカさ加減』と『自分の面倒臭さ』に対してイライラするだけの、まったくもって無意味かつ非生産的な停滞が延長されるだけ。

 正直なところ、もうウンザリしていた『あの低空飛行』が、その先も続く。

 それだけ。


(だが……)


 シューリは考える。

 優秀な頭脳などなくとも簡単に導き出せる答え。

 この状況、見方を変えれば、チャンスともとらえられる。


(殺す事を考えれば、デメリットばかり……しかし、利用する事を考えれば……)


 アダムを利用すれば、メリットばかり。

 まず、センの盾が増える。

 この先、センは、原初の深層に挑む。

 あのバカの性格は熟知している。

 やると言ったら絶対にやる。

 そして、それは、そこにどんな危険があろうと関係ない。

 ならば、センを守る盾はいくらあっても足りない。

 その点で言うとアダムは満点合格。

 なんせ、シューリがその気になっても殺しきれないほどの存在値と、ほぼ完全不死身のウルトラプラチナスペシャルを持つのだ。


 とにかく有能で、そして、何より、センに惚れているから絶対に裏切らない。


 アダムは確実にセンに惚れている。

 これが、他の何よりも大きい。

 どんなピンチを前にしても、アダムは決して逃げないだろう。

 忠誠の中で最も信頼できるのは愛。

 絶対に裏切らない、約束の鎖。

 その辺に転がっている『安い愛』ならば、『それ』が『憎悪』に変わる可能性を考慮しなければいけないが、『その愛が向かう対象(あるいは矛先)』がセンである場合に限り、その心配は不要。

 『センに対する愛情』だけは、各所で頻繁に起こっているような『愛情が憎悪にひっくり返る凄惨な感情の逆転劇』は絶対にないと、シューリは確信している。


 『センほどの男に対する感情が冷める事などありえない』

 『センという究極の男を知っていながら、他の男に目移りするなどありえない』

 ――という、シューリからすれば極めて常識的な認知。


 つまりは、

 シューリはシューリで、だいぶセンにイカれているってこと。

 それがゆえに起こる、論理を欠いた謎判断。

 感性に頼りまくって導き出した結論でありながら、

 これは認知だと言ってはばからない。

 恋は盲目。



(何より)



 そう、実際、シューリが何より注視している点は、ここ。

 何よりも、


 アダムは、『権利』を持っている。

 『センになんでも命令できる』という至高の権利。


 それを有しているのが『自分ではない』という点がミソだ。

 その権利を『アダムが有している』というのが大事なのだ。

 仮に、シューリがその権利を持っていたとしても、使い道がない。

 シューリがセンに『何かおねだりをする』など、ありえないから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ