62話 命がけのテンプレ。
今日は遅くなるので、朝に2話投稿します。
本日の1話目です。
――たくさんの熱量のすごい感想、感謝!
朝返す時間がないので、夜に返信します!
――今日は、帰ってくるのが遅くなるので、
19時ごろの返信になるかと……
62話 命がけのテンプレ。
「損得を言い出したら、誰かに感情を向けるということが、そもそも、とんでもなく損な行為だと、俺は思っている」
自分の事だけ考えていれば、基本的には得ができる。
――けど、その生き方だと胸を張れねぇ。
中確率で小金持ちにはなれるかもしれないが、
間違いなく、『豊か』にはなれねぇ。
「俺は、そこそこプライドが高いんでね。どうせ死ぬなら、自分に対する遺恨はゼロで逝きたい。『精一杯頑張った』と……『自分が望む通りに命を全うした』と、そう思いながら死にたい」
「……ま、好きにすればいいけどね。『ニャルラトホテプのアリア・ギアス』の重みを、ちゃんと理解しているのであれば、こっちとしては他に何も言う気はない」
そう言うと、そのままニャルはその場から消えた。
言いたいことだけを喋り散らかして、
場をグッチャグチャにしてから帰っていった。
その『イカれた奔放さ』を面白く感じて、
センは普通に笑ってしまった。
そんなセンに、
それまで空気を読んで黙っていてくれたオメガが、
「長話は終わったのか?」
そう声をかけてきた。
センは、オメガに視線を向けて、
「悪かったな、時間をとって。けど、もう、あいつとしゃべることは何もない。俺の中で、あいつの役目は終わった。……俺自身も、俺にとっては、もう役目を終えたみたいなもの」
そう言いながら、
センは、自分に没頭する。
「これが最後の出撃だ」
と、感慨深く、
言葉を並べてから、
センは、魔力とオーラを全開にしていく。
テンプレという名の『概念の鎧』を身に纏う。
それは、ギャグでも冗談でもない。
本気の虚勢。
命がけの伊達。
血肉化されたハッタリ。
後先を一切考えない全力。
ドクドクと強くまたたく。
赤く、黒く、強く、輝く。
「クトゥルフ・オメガバスティオン。お前と一緒に消えてやるよ。俺とお前だけが、綺麗に消えて……それで、全部を、終わらせる……」
「はっ、てめぇだけ消えてろ」
そう言い捨てると同時、
オメガは、センの目の前まで瞬間移動。
わざわざ死角に潜んだりはしない。
まっすぐいってぶっ飛ばす。
右ストレートでぶっとばす。
「センエース! てめぇに、トコが救えるか!」
踏み込んできた拳がセンの顔面を捉えた。
メリメリとめり込んで脳を揺さぶる。
重たい一撃だった。
「げはっ……っ」
鼻血が噴き出る。
視界がグラつく。
けれど、まだ舞える。
そう認識できたと同時、
センは強く奥歯をかみしめて、
「閃拳!」
純粋な拳で応戦。
そこから先は殴り合い。
約束を交わしたわけでもないのに、
まるでターン制のRPGみたいに、
お互いが、一発ずつ殴り合う。
重たい拳が互いの肉を削いでいく。
これは、命ではなく心を摘む闘い。
「センエース。お前の命が終わっていくのを感じるぞ。お前も感じているだろう?」
「ああ。感じている。これから、俺は地獄に堕ちる」
「センエースよぉ! いいザマじゃないか! 散々、頑張ってきて、その結果が、無間地獄行き! ほんと、最高の人生じゃないか、なあ、センエースっ!」




