52話 資格を持つ者。
今日は確定で遅くなるので。
朝に2話、投稿します。
本日の1話目です。
52話 資格を持つ者。
「こっちも、普通に同期できたな……よかった、よかった、安心、安心」
「……えっと……あの……なんか……めちゃくちゃ……強くなってません?」
つい、反射的に及び腰になるセン。
そんなセンに、
管理人は、ニタァと黒い笑みを浮かべ、
「お察しの通り、めちゃくちゃ強くなったぜ。今の俺がどういう状態かは、俺自身、いまいちわかってねぇが……さっきまでとは『別次元の出力』が出せるようになったことだけは理解できる」
「……別次元の出力……マジでか……」
「魅せようか?」
そう言ってから、
管理人は、右手を天に掲げ、
「創世・不浄聖域ランク3900」
狂ったランクの魔法を使う。
すると、
異空間が弾けて、
まるで、宇宙のように、
無数の光の粒に包まれた領域へと変貌した。
「ぃ……ぃいいいいっ……っ」
センが、ただただ圧倒されていると、
管理人が、続けて、
「煉獄・不滅彗星ランク3800」
またもや、凶悪なランクの魔法を使った。
ほとばしる魔力量は、
センの理解を超えている。
大きいとか小さいとかではなかった。
――ただ、まぶしかった。
管理人の魔法は、まるで世界を終わらせる息吹。
虚空を切り取ったような異空間のあちこちで、
灼熱を着飾った盲愛の瞬きが、
いき場を失った烈日のごとく、
無数に膨らんでは、盛大に弾けて飛んでいく。
唐紅の堂々たるテイルを残しながら、
黒檀を瑠璃に、
瑠璃を紫銀にと鮮やかに、
雅な七色へと変化していく様は、
まるで高密度のビロードみたいで、
不愛想な無を強引に包み込み、
すべての天を、
神様の絵画にしていく。
「……世界が……終わる……」
素直な感想を抱いたセンに、
管理人は、
「違うね。終焉を演出しただけさ」
「……」
「所詮は飾りだ。誕生日会で猛威を振るう『色紙の輪っか』みたいなもんさ」
「……誕生日会という概念が、俺の中にはないから、ちょっと何言っているかわからねぇな……」
時間の経過とともに、少しだけ冷静になったセンは、
自分を慰める意味もこめて、軽くおどけてみせた。
「センエース。この世でただ一人、俺の前に立つ資格を持つ者よ……さあ、やろう。命を燃やし、運命と向き合おう。お前と俺がぶつかり合った先に……きっと、本当の自由がある。――俺は『クトゥルフ・オメガバスティオン・ニャルカスタム』。貴様よりも強い者だ」
「……えっと……」
大量の冷や汗に包まれながら、
センは、ボソっと、
「俺は……俺より強い程度のザコには……負けないんだけど……」
弱弱しく力なく、普通にうろたえながら、
「……お前をザコとは……流石に呼べない気がする……」
最初に心を砕かれた。
まだ、心の最深部は形を保っているのだけれど、
しかし、表層の脆い部分はバッキバキに砕かれた。
――『クトゥルフ・オメガバスティオン・ニャルカスタム』は、あまりにも別格すぎた。
これまで、多くの時間と地獄を積んできたセンだが、
まったく歯が立ちそうにない数字の持ち主。
理不尽の権化とも言うべき、膨大なエネルギー量。
「ちょっと、これは……厳しすぎる気がするんだが……」
後じさりをするセン。
魂魄の大半がプルプルと震えている。




