96話 思考の交錯。
96話 思考の交錯。
自身を調節するため、プラチナスペシャル『シャットアウト・ゾーン』を乱用し、自身に内包された『三重の魂魄』に号令をかける。
深淵の集中。
自分の核へ、自分の全てを集めていく。
これでもかと、自分の中へと、深く深く潜っていく。
そして、だから、結果、
『センキー』は、
「最適化完了。ほぼ完全な統一化。融合による歪みは、ほとんど消えている。これなら飛べる……もっと高く、もっと遠く」
スゥと、深く息を吸ってから、
まっすぐに、ヨグを睨みつける。
「……いくぞ、ヨグ=ソトース。殺してやる」
その宣言を受けたヨグは、
達観した顔で、
「プライマルプラチナスペシャル『共鳴融合』……美しい」
そうつぶやいてから、
正式に武を構えた。
向かい合った二つの修羅。
互いに、オーラと魔力を限界まで沸騰させてにらみ合う。
時空と向き合う覚悟。
距離も速度も全てが幻想になる。
一瞬を切り裂くように、
両者、互いに、同じタイミングで時空を駆け抜けた。
神速が加速する。
まるで神の絵画。
かがやくように、
またたくように。
(センキーの閃拳のキレが想像を超えている……削り取られる……っ)
(ヨグの意識に閃拳を刻み込めた。ここからはミスリードに使える)
(このムーブ……まさか、閃拳をブラッシュボール扱いする気か)
(ギルティチェインを置いて、ヘブンズキャノンで風穴を開けてやる)
(この期に及んでヘブンズに頼る気か……むしろ、ぬるいムーブ)
(ヘブンズキャノンの通りが悪い。もう一本欲しいが、出てこねぇ。ほんと、使えねぇ)
(領域系の魔法を展開させるべきか……否。そのワンターンをかすめとられる)
(ダメだ、閃拳じゃないと、結局、突破力にかける)
(零神砲で神輝の耐性に削りを入れれば……)
(零神砲の波動っ……アホだ! それは甘えだろぉ!)
互いが、戦闘の中で、思考を暴走させる。
コンマ数秒の中で、無数に先を読む。
コンマ数秒を飲み込んで、無数に計画をたてる。
計画をたてては廃棄して、
また新たな計画をたてる。
とんでもなく短い時間の中で、そんなことを、何度も何度も繰り返す。
命の奪い合い。
その最高峰で行われる駆け引き。
(無詠唱では突破力にかける。さすがに叫ばないとヨグは殺しきれない)
(無詠唱のままなら、耐えきれる。時間を殺す。決して届かせはしないっ!)
(ソードスコールの属性を英雄に変換。センエースの核を使えば楽勝)
(あ、ヤバい……展開力の高いソードスコールの基盤を英雄に変換されたら――)
(ノヴァの広い暴れを突破口にする。終焉加速を混ぜて翻弄。コンボダメージはいらねぇ)
(ヤバい。突破される。龍閃がくる……対処を――何か――)
(整えたぞっ……もう、切り返しは不可能だ――)
(まずい――回避を――だが、どうやって――)
(これが、今の俺の全部――)
(やばい――無理――)
「――龍閃崩拳っっ!!!」
膨大な一撃をその身に浴びて、
「ぶっはぁあああああっっ!!」
白目をむいて、噴水のように吐血するヨグ。
全身を駆け抜ける電撃のような激痛。
ビリビリと余韻が強く残った。
生命の中核が削り取られたのを感じる。
ダメージが限界を超えた。
もう、形式を保てない。




