65話 ?????エンジン。
65話 ?????エンジン。
「十分ではないが、あした稼働できる程度の、最低限の休息は確保した。あとは、必要な処理をする。茶柱、エイボンの書は持っているな?」
「もってくるように言われていたからにゃぁ。ほい」
そう言いながら、
亜空間倉庫から、エイボンの書を取り出して、
ソンキーに渡す茶柱。
エイボンの書を受け取ると、
そのまま、サクっと、
『ウムル=ラト』の召喚を行うソンキー。
ソンキーの魔力があれば、わざわざ、ムーンビーストを生贄にささげる必要すらない。
速攻で召喚されたウムルは、
「――異次元砲」
ソンキーの異次元砲で瞬殺された。
とんでもなくあっけない瞬殺劇を目の当たりにした黒木は、
「……ほ、本当に、狂ったような強さですね……ものすごい魔力を持ったGOOだったと思うのですが……」
「素のウムルなど、ゴミに等しい」
そう言いながら、ゆったりと肩を回すソンキー。
彼が、戦闘態勢を継続したまま、世界を睨みつけていると、
『――【ウムル=ラト】のノーダメージ撃破を確認。【壊れたウムル=ラト】を召喚します』
謎の声のアナウンスが流れて、
奇怪なジオメトリが空中に描かれる。
――そのジオメトリの向こうから、
「……プハァ」
禍々しいオーラに包まれたウムル=ラトが出現した。
「クシュー、コホー」
完全に飛んでいる目。
異様な雰囲気。
明らかに壊れている。
壊れたロイガーと違い、知性の補正は受けていないもよう。
「ギャガヤガヤガ――」
「うるさい」
サラっとそう言いながら、
ソンキーは、壊れたウムルの頭を掴んで、地面にたたきつけた。
「っっ――」
悲鳴をあげる余裕すらなく、
頭をつぶされたウムル。
その様を見て、
紅院が、
「……強化されようと、関係ないみたいね」
ボソっとそうつぶやいた。
そんな彼女に、
ソンキーは、
「まだだ。というか、ここからが本番だ。ここからが鬱陶しい」
フゥと、息を吐いて、精神統一するソンキー。
一切の油断がない目で、『壊れたウムルの死体』の様子をうかがっていると、
『――【壊れたウムル=ラト】の瞬殺を確認。【?????エンジン搭載型ウムル=ラト】を召喚します』
そんな奇妙なアナウンスが流れた。
数秒後、ウムルの死体がグニュグニュと蠢きだし、
「……ぷはぁ」
完全人型に落ち着くと、
そこで、天を仰いで、
「……ついに、私は完全体となった。私の中で、大いなる私が脈動している」
吐息をもらし、
自分自身に酔いながら、
スっと、視線を、ソンキーに落として、
「闘いの神ソンキー・ウルギ・アースよ。貴様は間違いなく強いが、不完全な今の貴様では、私に勝つことは出来ない」
「不完全ねぇ……くくっ」
ウムルの言葉を、ソンキーは、鼻で笑って、
「俺はいつだって不完全さ。完全だった頃など一度もない。俺は永遠に、今の俺を置き去りにした『明日の俺』を追い続ける。そうやって、命を繋いできた。そんな俺を、貴様ごときが殺せると思うな」
気概をぶつけあってから、
両者は殺し合いを開始した。
豪快な火花は飛び散って、
世界に傷が刻まれる。




