47話 あ、いや、それはない。
47話 あ、いや、それはない。
「約束する! あんたに、この世界の全部を献上する! あたしには、神様を殺すことは出来んけど、金と権力の世界で暴れることぐらいならできる! 命がけで誓う! 死力を尽くして、あんたに、正統な報酬を払うと! せやから! どうか! 頼むぅうう!」
「……うっさいのう……ぴーぴー、ぴーぴー……」
鬱陶しそうに、深いため息をついてから、
トウシは、
「……抵抗せんかったら、楽に殺してもらえるらしいのに……なんで、わざわざ、無意味な抵抗して、苦しまなあかんねん……ワケわからへんわぁ……」
ため息が止まらない。
溜息をつくと幸せが逃げていくらしいが、
もはや、知った事ではなかった。
現状は不幸がカンストしている状態。
幸せの一つや二つが逃げ出したところで大差ない。
「……はぁあ」
あらためて、深いため息をついてから、
トウシは、目の前に、エアウインドウを表示させる。
その様子を見たロイガーが、
「おい、まさか、抵抗する気か? 無意味だと理解できているはずなのに?」
「……そうなんやけどなぁ……」
「なぜだ? 理由が分からない。まさか、あの女の訴えを聞いて、情にほだされたとか?」
「あ、いや、それはない。ワシ、そういう系の男の子やないから」
ハッキリと断言してから、
「ただ、あのバカ女がピーピーわめいとる時間って、まあまあ長かったやろ? せやから、その間に、三つぐらい、策が思いついてなぁ。別に、思いついた策が、あんたに通用するとは思ってないんやけど……思いついてしまった以上は、試しておかんと気持ちが悪いのも事実。……どっちみち死ぬんやったら、とりあえず、全部ためしてからにしようかなぁ、と思って。気持ち悪さを残したまま楽に死ぬんと、とりあえず、全部試した上で、多少苦しんで死ぬんと、どっちがええか考えて、後者をとった。それだけの話や。合理的ではないかもしれんけど、ワシ的には、筋が通っとる」
「理解ができない」
「他者の理解を求めたことは一度もない。ワシはワシの中で完結しとる。生きとる間は、自分がやりたいことを、全力で貫く。人生って、基本的には、そういうもんやろ?」
そう言い切ってから、
トウシは、エアウインドウに向かって、
豪速で指を走らせる。
手首から先のすべてが蒸発してしまうんじゃないかと思うほど、
トウシは、異次元の速度でシステムを構築していく。
「素体融合、開始」
思いつく限りの全てを、
トウシは、携帯ドラゴンのシステムに組み込んでいく。
「殺神回路外骨格、構築完了」
トウシの全身を覆っていた、携帯ドラゴンの鎧が変形していく。
より奇怪に、より凶暴性を重視したスタイルへと変貌していく。
「裏コードを使用して、GISボックスからマテリアルを拝借。AEG最適化中……SSPSE変換中……アーティキルビット・プログラム、P011987を登録。オルタナエディタ起動。アンリミテッドブラッドを登録。転送開始。AEGスキル検索。すべてのスペシャルとキルビットを接続。伏素カイゾロイド魔動アクチュエーター、融合完了……ココロネット・オルタネーター統制、アルモニーモンド・ピット、コンパクト化完了。ゼオ・コクーロイオン循環開始――」
いつだって、トウシの指はせわしなく躍動している。
音声入力も併用して、携帯ドラゴンを改造していく。
そして、宣言。
「思いついた策その一、神殺しの着ぐるみ……エグゾギアッ!!」




