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30話 お前は、あたしを、本気で怒らせた

 30話



 全速でアダムの殺し方を演算しているシューリ。



 そんなシューリに、アダムは、






「もう二度と言わないぞ。座れ」






 質量のある言葉で威圧する。

 ビリビリと空気を震わせる声音。



 アダム如きに怯えたりなどはしない――が、

 シューリは、


「そうでちゅねぇ、まずは座って、お話をしまちょうか」


 言いながら、シューリは、

 いつもどおり、イスではなく、円卓の上に腰を下ろした。

 そして、


「ふぁああーあ」


 などと、呑気にアクビをしているていを装いながら、こっそりと神気を練り上げていく。

 究極超神化5を使用するための準備。

 呼び出しを受けた瞬間から、準備は開始していた。

 つまりは、既に、五分以上練りあげている。

 それなのに、まだ究極超神化5が使えない。


(まだ溜まらないのか……ちっ……昔なら、とっくに変身できている時間だというのに……)


 想定外に時間がかかっているため、時間稼ぎと、周囲警戒を兼ねて、いったん、プレートを外すように『間』をとった。

 それがシューリの現状。


 シューリは、必死に神気を練り上げつつ、周囲をうかがい、


(ワナ等はなし……次元気糸の設置はおろか、空間系の機雷すら……バカが。神闘を知らぬザコが、膨れ上がった存在値に増長し、ノコノコと殺されにやってきた)


 ガチンコでやれば百%勝てる。

 負ける要素がない。


(もう少し……もう少しで、究極超神化5が使える……殺してやる……次、いつ、チャンスがくるか分からない。ここで確実に殺す)


 少し高いところから、アダムを見下ろしつつ、なにか不可知系のワナはないかと慎重に周囲を観察しつつ、


「で? オイちゃんになんの話があるんでちゅかね?」


「主上様は仰った。貴様を殺せば、私を伴侶にしてくださると」


「……へー」


 軽い返事をしながら、その心は穏やかではない。

 というか、荒れている。


 シューリは理解している。

 ――もちろん、センがそんな事を言うはずはない。

 キチンと分かっている。

 あの男は、自分に惚れている。

 というか、全力でホレさせた。


 おかしな手を使ったのではない。

 むしろ、非常に迂遠な方法で、ゆっくりと愛を育んできたのだ。


 恋の迷路にはまりながら、

 しかし、必死に、この『想い』を、聖なる愛の光に、

 互いが繋がるための音色――心の道標にしてみせた。


 ゆえに『センがそんな事を言うはずがない』と確信できる。

 強固な自覚が、シューリを、ギリギリのところで抑え込んでいる。


 先の戯言。

 ただの嘘か、そうでなかったとしたら、アダムの曲解。

 間違いなく、どちらか。

 シューリは、バカじゃない。

 だから、わかる、そのくらい。


 だが、それでも、イラつく事に変わりはない。

 ただ、それを表情には出さない。

 圧巻のポーカーフェイス。

 狂気のプライド。



「私と主上様のために、死ね。ふるき神シューリ・スピリット・アースよ」



「イヤだと言ったらどうしまちゅ?」


 たんたんと答えるシューリ。

 静かな声で答えながらも、頭の中では、どうやって、目の前のメスブタを殺すか、その『精神・意識・思惟活動』だけを全開でフル加速させている。

 すでにプランはある程度固まった。


 ――瞬殺してやる。

 ――灰にしてやる。

 ――このクソ虫に恵んでやる慈悲は僅かもない。


「貴様の意見など聞いていない。貴様は私の手によって殺されて死ぬ」


「本当にできると思いまちゅか?」


「できるかどうかは関係ない。貴様を殺し、主上様を、私の男にする」


「ふーん、そうでちゅかー、へー」


 興味なさげな気だるさを演出しつつ、ペロっと上唇をナメた。

 計画的な挑発。

 すなわち、明確な敵意。



 満を持して、アダムが、スっと腰をあげた。

 応じるように、シューリも立つ。


 互いに、音もなく、

 ギラっとした殺意だけが対流して、歪んだ渦を巻く。


(もう少し……もう少し……まだか……くそ、こんな事になると分かっていれば……ちっ、何が全知全能だ……)


 心の焦りは決して表に出さないように、

 ニタニタと、いつも通りに嗤いながら、しかし、シューリは、

 心の中で、ガッツリと焦り、そして、しっかりと反省していた。


(……サボるんじゃなかった……なまりすぎだ……たかが全力を出すだけに、まさか、ここまで時間がかかってしまうとは……)


 かつては、もっと早く変身できた。

 しかし、究極超邪神が倒れてからは、本気を出す必要が一切なくなったので、当然のように訓練も怠るようになり、結果、当たり前のように体がなまった。

 当時でさえ、3分は必要だった究極超神化5への変身。

 今では、神気の練り上げに、最低でも7分は必要となった。



(さすがに5分もあれば変身できるとふんでいたが……ちっ……)



 並列で『完全集中状態』を保てるという特異スキルを有しているので(もちろん、他の事をしていると、通常よりも少し長くかかるが)、話しながらでも、なんとか変身するための集中時間を稼ぐことができる。


 ただ、会話等による減速分も含めて、

 『まあ5分以内には変身できるだろう。どんなに遅くても7分は超えないはず』と甘く予想し、その計算を元にして行動していたのだが、

 想像をこえて体も魂魄もなまっていたらしく、

 結局、7分以上かかっている。



(もう少し……もう少し……無……無――)



 九割近い完全集中モードに移行すること(ニタニタ顔と、目力だけはキープさせているため完全ではない)で、神気の練り上げ速度を加速させる。





 表面上は、『戦闘態勢をとっている』ようにしか見えないシューリ。

 心が、ほぼ空っぽの状態でも、維持できる脅威のポーカーフェイス。

 絶対に、死んでも、『素』は見せないという、狂ったような底意地。




 無意識の中で、シューリの殺意が加速していく。



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