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10話 自分に対する、長い言い訳。

 10話



 俺は、自分の欲望に対して、まあまあ忠実だったと思う。

 『強くなり続ける事』ができた間は、ずっと、それだけを追い求めていた。

 その結果として、色々な救済に繋がった。

 そんだけ。

 ……でもないか、やっぱり。

 まあ、頑張って世界に尽くしたのも事実ではあるって事で。



 『まだ強くなれた時期』からずっと、俺は、いつも誰かを守っていた。

 『限界を迎えて、強くなれなくなってから』は、

 人生の大半を、『救済』に費やした。



 多くの命を、ただ守った。

 守り続けた。


 なんでだろう。


 分からない。

 少なくとも、そんなの、『やりたい事』ではなかった。

 だって、俺は、『強くなりたかっただけ』なんだから。


 夢が死んだ絶望の中で、未来が潰えた空虚さの中で、

 俺は、多くの命をただ守った。


 『もうこれ以上には成れない』

 俺にとっては、それ以上の絶望はなかった。

 『それだけの力があれば、なんだって出来るだろ。今ある力で楽しめばいいじゃん。今の力でも、なんでもできるんだから、もっと色々やればいいじゃん。少なくとも10000年そこそこで飽きるような力じゃないだろ』

 かもな。

 正論だ。

 実際、やろうと思えば、もっと盛大かつ多角的に暇をつぶせた。

 たとえば、俺、ロックスターとかにはなった事がないんだよね。

 なろうと思えば、むりやり成ることもできたけど、俺はやらなかった。

 小さいところでいうと、スキューバダイビングとかも、俺やったことがない。

 別に世界中の全ての本を読んだわけでもないし、




 もう、ぶっちゃけちゃうと、俺、ドーテーだしね。




 やってない事は多く、できる事はいっぱいある。

 だから、正論だよ。

 『俺の力』があって、『人生』に飽きるのは、ハッキリ言って、はやすぎる。

 

 けど、それは、俺以外の誰かにとっての正論だ。

 俺は、そうじゃない。

 そうじゃねぇんだよ。







 限界を迎えてからは、正直言って、なにもかもが苦痛だった。

 戦闘力も存在値も『限界』に達してしまった俺の視界に映る世界は、白黒の箱庭だった。

 見慣れた世界で、見慣れた生き物が、見慣れた苦悩と闘っている。

 くだらないとしか思えなくなった。

 『だからなんだよ』としか思えなくなった。

 俺は正義の味方じゃない。

 ヒーローでもない。


 ヒーローを演じるのにも飽きてしまった、空っぽの神様。

 勇気を叫ぶ必要もなくなった、最強というからっぽ。

 『ヒーロー見参』を口にしなくなってどのぐらい経っただろう。

 どんな絶望を前にしても、一瞬で、頭の中に、『それに対する完璧な処理方法』が浮かぶようになってどれくらいたっただろう。

 呼吸するよりも容易く、世界を救えるようになって、どのくらい……



 リズムが変わらないルーティン。

 まるで内職。

 封筒にチラシを入れて糊づけするかのように、

 たんたんと無機質に世界を救いだした俺。


 くだらないとは流石に思わなかった。

 いや、本音を言えば、くだらないと思っていた。


 俺、なんで、こんな事をしてんだろう。

 何度か、マジでそう思った。


 だって、別に世界を救いたいって欲とかないんだもん。


 これまでだってずっとそう。

 やんなきゃいけないから、やってきただけ。

 嫌いなヤツの好きなようにされるのがイヤだっただけ。


 ――イヤだったから――

 結局、それだけなんだよ。

 やりたかった訳じゃない。




 あの200億年で、真に悟る事が出来ていれば、

 もっと違ったのかもしれないけれど、

 結局、悟った気になるのが限界で、

 真理には届かなかった。


 だから、ソウルゲートを出てからも、ずっと苦しんだ。

 俺は、結局、自由にはなれなかった。

 いつだって、自由になれた気がして終了だった。


 この両手両足は、いつも、責任って鎖に縛られていた。



 俺がやりたかったことは、最初から一貫していた。

 ただ、どこまでも強くなりたかっただけ。

 できることを増やして、

 膨らみ続ける夢を叶え続けたかった。


 けど、『できる事を増やし続けること』が俺の夢だったから、

 カンストを迎えて、当然のように絶望した。

 俺は、特別、『何か』がしたかったんじゃない。

 最初から、空っぽだったんじゃないかって?

 違う。

 それは断じて否。


 『できる事を増やし続ける事』のみを想う、

 その気持ちをからっぽだとは言わせねぇ。








 ずっと、ずっと、『強さ』を、ただ追及していたかった。





 秩序とか諸々を考え出すと、本当に大変というか……しんどい退屈と向き合わなければいけなかったから、本当にいやだった。


 そんなのは、神に成る前のゴタゴタで飽き飽きしていたんだ。


 好きに暴れて、好きに強くなって……


 ただそれだけの日々を過ごしたかったけれど、

 俺は、世界の秩序を守り続けた。


 カンストしてからは、より一層。

 『死んだ未来』を飲み込んで、白黒の箱庭を救済し続けた。


 俺にしか出来なかったから?

 それもある。

 けど、それだけじゃないような気もする。


 カンストして以降は、『何もしない』という手もあったはずだ。

 けど、俺はやった。

 暇だったからじゃない。

 それもなくはないが。





 いつだって、なにもかもが、表裏一体。

 一言では言えないよ。

 一概にはなりえない。

 俺にだって、感情はあるから。

 俺はゲームのキャラクターじゃない。

 ゲームのキャラクターにも感情はある?

 じゃあ、俺も、あるいは、ゲームのキャラクターなのかもね。









 ★



 で



 この、原初の世界でも、俺のスタンスは変わらない。

 俺は、秩序を守り、弱い命を守りながら生きる。

 もう、この生き方を変える事はできない。



 ただ、少しだけワガママを言わせてくれ。


 『種』は蒔いた。

 ゼノリカも貸してやる。


 もし俺が消えても、

 総合スペックなら俺を凌駕している究極の女神が上に立つ。


 俺は世界を守ってきた。

 それなりに役目は果たしてきた。

 大きな責任を取ってきた。






 だから、






 ここからは、

 ちょっとだけ、






 ――好きにやらせてくれ――





センは完全ドーテーなので、当然、子供もいません。

そういうことに興味がないわけではありません。

ただ、Bバージンなだけです。

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自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
[気になる点] もう、この行き方を変える事はできない これは生き方ですかね?それとも意味がある? [一言] 私がセンエースを読み始めていつのまにか1年経っていましたね。早いような。しかし1年にしては話…
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