76話 『ハイオグー=ヤイ』&『ザリガー』。
76話 『ハイオグー=ヤイ』&『ザリガー』。
センの視線の先にいる二体の化け物。
どちらも人型ではあるが、
どちらも『人の感情を軋ませる奇怪さ』であふれている。
――その二体に対し、
センは、
「……どうも。はじめまして。俺は、お前らの敵をやらせてもらっている一般人。名前はセンエース。あんたらは?」
その問いかけに対し、
まず、深い暗闇の方が、
「神話生物の最上位。外なる神の一柱。超えられない次元の中枢。領域外の特異点が一つ。ハイオグー=ヤイ」
続いて美形の化け物が、
「……神話生物の最上位。外なる神の一柱。神聖なる不協和音の中枢。ねじれた音の主。ザリガー」
両者の名乗りを受けて、
センは、
「……アウターゴッド三体を同時討伐……えぐいミッションだ。ムチャクチャすぎる……」
天を仰いで、心底しんどそうに溜息をついてから、
「……だが、絶対に無理な難易度じゃねぇ……スーパーセンエースと戦った時と比べれば、はるかに余裕。まあ、アレと比べれば、たいていの相手がゴミになってしまうってだけの話なんだが。――太陽と比べれば木星は小さい。それは事実だが、しかし、木星が、地球の10倍以上あるバカでかい星であるというのも、また当然の事実」
などとつぶやきながら、
ゆるやかに武を構える。
その様を見て、
ヤイが、
「狂気的な話だ。あの人間、私たち三体を前にして、戦意を失うどころか、むしろ活力が増している」
続けて、ザリガーが、
「……頭おかしい。命の突然変異種。謎の神気をもっているようだけれど、それ以上に複雑な、歪んだ魂魄の持ち主。奇妙。異常」
そんな二人の感想に、
ギが、意見を添える。
「あの人間は何もかもが異質だ。信じられない戦闘力を持つ。だが、存在値は我々よりも下だ。数で押し切る。圧殺する。手助けしてくれ」
「いいだろう。何が何だか分からないが、友のピンチとあらば、命がけで力をふるう。それが我々の在り方だ」
「……私たちにあだなす者には死を。制裁を。絶望を」
強い意志を示すと、
三体のアウターゴッドは同時に地面を蹴った。
すさまじい練度の瞬間移動で、
センとの距離を溶かすと、
見事なコンビネーションで、
センを圧殺しようと詰め寄ってくる。
(丁寧な連携……信頼感が伝わってくる……三体相手にするだけでもしんどいってのに……こいつらの連携は、足し算ではなく、掛け算……ふざけやがって……)
様子見の回避と防御に専念することで、
どうにか、ヤイたちの猛攻をしのいでいるが、
しかし、極限の集中を求められるので、
時間と共に、どんどん疲弊していく。
(まずいな……スキがない……個々には付け入るスキもあるが、カバーされるから詰め切れねぇ……)
戦闘力で言えば、センがこの中で最強。
だが、存在値は、もちろん、センが最弱。
戦闘力の優位性は、
数の暴力で押し戻される。
(スキが少ねぇ……だが、ゼロじゃねぇ)
目をギラつかせて、
集中力を加速させる。
疲労がたまり、絶望感が募り、狂気に押しつぶされそうに……
――なればなるほど、センエースの魂魄は強く輝く。




