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52話 神帝陛下って誰ですか?

 52話



 普段は、自分たちの世界で『最上位者』としてふるまっているライラ達。

 配下の前では見せる訳にはいかない『素』を、この場では、少しだけだせるので、みな、一様に声が少しだけ弾んでいる。

 『ナメられる訳にはいかない』という責はあるが、ここには、簡単に他者を見下すような愚者はいない。

 互いが互いを認めている。

 ゆえに、少しだけ緩む。

 とはいえ、緩み切る事はない。


 そんな、むしろ、ちょうどいい関係性。

 とはいえ、派閥的なものも多少はあって、


「モンスターの災害だけではなく、未だに、バカ共が、たまに沸いて結束しおる」

「どれだけ統制しても、アホどもが決死の覚悟で起こすテロ行為だけは減らんよなぁ。何かしら対策できんもんかのう」

「何しても無理じゃろう。やつらは言い分が狂っておる。権利を勘違いしたバカの暴走なら、正論や事実を並べる事での対処も不可能ではないが、ただ暴れる理由が欲しいだけのカス共相手では何もできん」

「わかるわー、あいつら会話にならんのじゃよなぁ。前に、ウチの世界の首都で暴れたアホ共のトップは、こう叫んでおったよ。『全ての世界はゼノリカに支配されている! この支配構造は改革せねばならない!』と」

「いや、うん、世界はゼノリカに支配されておるよ? で、それの何が悪いんじゃ?」

「わしも同じことを聞いた」

「で? やつらは、なんと答えたんじゃ?」

「何が悪いかなど問題ではない。とにかく改革せねばならぬのだ!」

「ぶははっ、わけがわからん!」

「ガチガチのガチで、そのわけのわからん事を言ってくるからのう。アホには驚かされるわい」

「おるよなぁ、ほんとうに……理屈はどうでもいいとか、本気でのたまうバカ。自分の理解できないこと、理解したくないことは、屁理屈の一言ですますバカ」

「そして、そんなバカの方が行動力はあるという」

「厄介、厄介」


 沙良想衆の面々は、みな、和気あいあいという訳でもないが、それなりに『近い』のだが、


長強(そんなバカ共は殺して終わり……議題にあげるほどの価値もない。というか、お前ら、けっきょく、最終的には、ウチ(楽連・愚連)に丸投げだろうが)


UV1「……」


 楽連と百済は、やはり別枠という感じなのか、少し距離感が違う。


 長強は、ほとんど会話には加わらず、

 時折、微笑んで(決して筋肉バカじゃない。空気は読む)うなずくくらい。


 ウルトラバイオレット001は、

 『監査機関の頂点』という『非常に重たい立場』であり、

 自分は司法の側に立っているという自覚があり、

 単純に責任感も強いため、

 常に、ピンと張り詰めた表情で、静かにたたずんでいる。



 楽連は軍事(抑止力と治安維持)で、

 百済は司法(ゼノリカ神法に基づき、『神の裁き』を執行する)。


 沙良想衆は、行政(楽連と百済がやらない仕事の大半。つまり、山ほど仕事がある訳だが、沙良想衆の下部組織には、あらゆる部門の頂点が集まっているので、何を任されたとしても、なんら問題なく遂行できる)。


 そして、天上は、立法(あくまでもゼノリカ神法の補強。改革など、とんでもないっ)を担う。






 ふと、ライラたちの会話を黙って聞いていたアクエリアスが、アンドロメダに向けて、


「こたびの招集……なにやら、今までとはワケが違いそうじゃのう。なんでも、バロール猊下が直接、ここまで、上の命令を伝えにこられるとか?」

「ふむ」

「……『十席の御方々』以外の九華が、大災害でもないのに降りてくるとは……」

「ただ命令を伝えるというだけで、下界まで降りてくるのは……もしかして、初めてではないか?」

「初めてじゃな。物語っておるよ……何やら、大きな事が起こると」

「ふふ……楽しみじゃわい。事と次第によっては、何人か上に上がれるチャンスやもしれん」


「かもしれんのう…………ん、そろそろじゃな」


 会談の途中で、『アンドロメダ』がチラと時計を確認した。

 その直後、


「みな」


 ボソっとそう声を発すると、それまで朗らかな顔でお喋りをしていた老人たちが、一斉に、キっと、その顔つきを最上位者のソレに変えて黙った。


 時計の針が、てっぺんに届く前に、みな、席から立ち上がり、この空間の最奥にある扉――唯一、『上の層へと繋がっている扉』に視線を向ける。


 そして、時計の針がてっぺんに到着するコンマ数秒前、


 ババっと、

 右手を左胸にあてて、スっと頭を30度ほど下げる。


 ゆっくりと、扉が開く音が響いた。






「そろっているな」






 聞かれて、アンドロメダが、頭を下げたまま、


「はっ。ブナッティ・バロール星典魔皇猊下。十人蒼天、ここに」



「うむ」



 威厳たっぷりに頷くと、バロールは、上座に腰かけ、


「座りなさい」


 低く、通る声でそう言った。


 十人蒼天は、軍隊よりも揃った動きで頭をあげて、アンドロメダから順番に腰をおろしていく。


 全員が座ったのを確認してから、バロールは、






「これより、神帝陛下の命を伝える」







 穏やかに、しかしハッキリとそう言った。



 バロールの発言に、その場にいた誰もが、ピクっと耳を動かした。


 そして、つい、視線を彷徨わせてしまう。


 アンドロメダが、全員を代表して、


「もうしわけございません、猊下……今、なんとおっしゃったのでしょうか?」






「これより、神帝陛下の命を伝えると言っている。気持ちは分かるゆえ、一度目は許すが、これ以降、二度と聞き返す事は許さない」






「「「「「「「「……」」」」」」」」






 バロール以外の、この場にいる全員の顔に、汗が浮かんだ。


 みな、心の中で、



(猊下は……頭がおかしくなったのか?)

(神帝陛下? ……神帝陛下って……神帝陛下のことか? 聖典の? 神帝陛下から命令? いやいや、そんなバカな……)

(しんていへいか……誰のことじゃ? まさか、神帝……いや、それはない。しかし、となると……いったい、誰の……)

(な、なにかの隠語か?)

(神の御言葉……神法の一文を述べるということか? それとも、他の……)






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