71話 安心しろ、センエース。
71話 安心しろ、センエース。
「案ずる必要はない。『原初の愛』は、貴様だけを蝕むものではない。あの女どもの記憶にも影響を与える広範囲にわたる強い呪い。あの女どもは、おぼろげにだが、しかし『貴様に救われたこと』を思い出しはじめている」
根源的な命の業。
いつか、『ヒーローがたどり着く』までは、
決して許されない『ヒロインの原罪』である。
「――『私の本体』の視点で言えば、貴様は今でも雑魚だが……現時点よりもはるかに脆弱だったころから、貴様が命をかけて、あの女どもの盾として歯を食いしばり続けたことを……『尊きヒーローがヒロインを救い続けてきたこと』を、あの女どもの『中心』は取り戻し始めている。もちろん、完全に思い出すことは不可能。だが、『大事な部分だけ』なら、奪い返せる可能性はある。ゆえに、あとは、貴様がその気になるだけで楽勝――」
「だらだら、うるせぇ! 一つだけ答えろ! 肉体関係どうこうって戯言は、マジで言ってんのか? それとも、小粋なギャグか?! どっちだ!」
「私は、貴様ごときに嘘などつかない」
バッサリと言い捨てられるセン。
「ちょっと待ってぇええええ! いやぁああああああっっ!」
つい、頭を抱えて、ヒロインのような悲鳴を上げてしまうヒーロー。
『心が引き裂かれた』かのような盛大な悲鳴を上げたのちに、
センは、宇宙的恐怖によって『魂魄の中心』を大幅に歪まされたような顔で、
「勘弁してくれ! それだけは! マジでぇえええ!」
「安心しろ。センエース。貴様は強い子だ。貴様以外であれば、絶対に不可能な難題だが、しかし、貴様ならば楽勝――」
「楽勝、楽勝、うるせぇええ! 楽勝なわけねぇだろうがぁああ! よしんば、物理的な意味合いで現実化可能だったとしても、こっちの精神的な問題で不可能なんじゃい! ぼけぇえええ!」
魂の慟哭。
心からの叫びは止まらない。
「こちとら、もはや、実質何十年単位で生粋の童貞をやらせてもらっている、稀代のモンスターレジェンドだぞぉお! それが……はぁぁあああ?! あの四人全員とそういう関係にならないと世界が終わるぅ?! 冗談は、茶柱のキ〇ガイっぷりだけで、勘弁してくれぇえええ! あの一要素だけで、こっちはお腹パンパンで、ゲロ吐きそうなんだよぉおおおおおおおおおおおおおお!」
「安心しろ、センエース」
「お前は、二度と、『安心しろ』っていうんじゃねぇ! お前がその言葉を口にしたら、地獄が待っていると、俺は強く学習した!」
★
さすがに、今回の周だけは、
『アイテム探索をしている場合じゃねぇ』、
ということで、
その日の夜は、寝ずに、
『この周をどう乗り越えるか』
ということだけを、必死に考えるセン。
(アウターゴッドが、いかにヤバいかは、もう、何度も、身をもって体験した。正直なところ、アウターゴッドが相手の場合、今の俺ではどうにも出来ねぇ)
『究極超神化プラチナム』という、一時的に、
反応速度を加速させる術を身に着けはしたものの、
(実のところ、あの変身技、スーパーサ〇ヤ人3ぐらい燃費悪いんだよなぁ……第二アルファでは、なぜか、ほぼ無限に使えたが、こっちの世界では、数分が限界……)




