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38話 ヤンデレ・サーキュレーション

 38話



 シューリは、ゼノリカが嫌いだ。

 その理由は単純明快。

 シューリは、こう思っている。

 ――センが、ゼノリカという荷物さえ背負っていなければ、

 もし、センの全てが自由だったなら、

 あの時、ただ純粋に『自分』を求めてくれたのではないか――と


 そして、それは、実際のところ、事実だったりもする。


(どんな命令でも聞く、か……この女くらいだろうな、それをガチの精度で言えるのは。しかし……『どんな命令でも』……『なんでも言う事を』……んー、もしかして『俺の嫁になれ』とかでも叶えてくれたのかね……むりか。仮にそれを言っても『神経を疑いまちゅね、身の程を知ってくだちゃい』とか言われて終わりだったろうな。まあ、でもトライする価値くらいはあったかもなぁ。もしゼノリカの今後とかが頭になかったら、言っていたかもなぁ……はははっ)






 シューリは妄想家ではない。

 ありとあらゆる前提条件から、可能性はあると踏んで賭けにでたのだ。

 好かれている自信はある。

 愛されているという確信はある。

 なんせ、

 ただ自分を守るというだけのために、

 あのバカ男は、

 究極の邪神に挑んだ。


 神の世界におけるセンは、現世と違い、『責任をもって守らなければいけない荷物』を背負ってはいない。


 それに、そもそもの話、『究極超邪神』関連の問題は、シューリが魂魄を捧げればそれで解決するだけの、確定されていた一つの運命だった。

 そして、シューリは、その宿命を受け入れていた。


 その下らない定めを、ただ『シューリ・スピリット・アースを殺したくない』という理由だけで、ぶっ壊したのがセン。

 成りたての新神。

 転生してきたばかりの頃は虫ケラだったゴミ。




 ――根性はあると思った。

 ゆえに手ほどきはした。

 最初は師匠のように、

 いつしか友人のように、

 気付けば、思ったよりも距離が近づいて、

 けれど、だからって、


『シューリ。今日だけは……お前だけのヒーローをやってやる』


 必死になって守ろうとしてくれるなんて思わなかった。

 ボロボロになって、死にかけて、

 自分のために、そこまでしてくれる『誰か』がいるなんて信じられなくて、

 だから、懐疑的になってしまって、

 ついには、突き放してしまって、

 傷つけてしまって、

 なのに、

 それでも、


『ヒーロー見参!』


 ――あのバカは、あたしのヒーローになってくれた――


 この世で、たった一人、

 シューリ・スピリット・アースを守ってくれた男。






 それだけの力を持つ者が他にいなかっただけ?

 違う。




 あのバカが、最初に神の世界に足を踏み入れた時、

 その力はゴミみたいなものだった。


 足下でうごめく虫ケラ(超神たち)の一匹でしかなかった。

 有象無象(超神たち)の一柱でしかなかった。


 だが、あのバカは、辿り着いてくれた。



『お前でもどうしようもない敵? なら、お前を超えて、殺してやるよ』

『シューリ、見てろよ。俺は、必ず、お前を超える』

『笑うんじゃねぇよ、シューリ。俺は本気だぜ』



 絶対に踏破不可能だと思われるイバラの道を、

 ズタズタになりながら突き進み、

 超神全員が呆れる地獄を積んで、

 ありとあらゆる障害を乗り越えて、


 ついには、本物のヒーローになってみせた。




 バカ野郎だと思った。

 どうしようもないアホんだらだと思った。

 『絶対に無理だ』と誰でもわかる不可能を前にして、

 みっともなく、無様にあがくガキ。

 極めて思慮が浅い、短絡的で幼稚な、




 ――究極にかっこいいヒーロー。






 この感情は、ちっぽけな信仰なんかじゃない。

 センを崇め奉っている訳ではない。

 シューリのこの感情は、


 ど真ん中の愛。


 ただ、ただ、愛している。

 触れて、抱きしめて、口づけをかわしたいという純粋な感情。


 シューリは、センを良い意味でも悪い意味でも見誤ってはいない。

 全てを理解した上で、

 ダメなところも含めて、

 心の底からセンを愛している。







 今までは、『センほどの男』に近づく女性はいなかった(ゼロだった訳ではないが、センの『真なる威光』に触れれば即座に、『これほどの存在に恋慕の情を抱く』という愚かさに気付いて引きさがった)ので、ぶっちゃけ、シューリは油断していた――が、



 今、センの隣には、

 アダムという、とてつもない『可能性』を秘めた美女がいる。

 センに『選ばれる可能性』を秘めた、圧倒的なスペックを持つ女――



 ――目を見れば分かった。

   あの女は、間違いなく、

   センエースに惚れている。



(アダムを殺すのは確定、問題は場所とタイミング……まあ、あの程度のゴミを排除するくらい、あたしなら楽勝。幸い、ここでなら神の力が使える。その気になれば、どうとでもなる。……一番の問題は、原初の深層に辿り着いた際、センの周りに、アダムみたいな虫がウヨウヨと寄ってくる可能性があるってこと……今後、二度と、身の丈にあわない夢を抱くメスブタが近づかないよう、センの近くで見張っている必要がある。そのためには、さっさと一緒にならないと……けれど、その方法が難しい。どうやってプロポーズさせるか……さて……)



                                    //





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自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
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