表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
210/5853

33話 不穏なゼノリカ

 33話



 アダムの言葉を聞いて、

 ミシャは、


「はぁあああああ?!」


 目を見開いて、口をあんぐりと開けて、


「……どういうこと? ……わけがわからないわ。なに、その破格の特別扱い……」


「そうじゃな。今までも、アレは、かなり優遇されておる方じゃったが、今回は異常じゃのう。そもそも……これまでなら、アレを使うにしても、遊撃以外はやらせんかったはず……なのに……ふーむ」


「今回は、まとめ役も容認……はてさて、どのようなご意思によるものでしょうか。酒神は真性のアレでアレなアレ……とても、まとめ役が出来るような人材ではないのですが……んー」



 平は、ぶつぶつと、そんな事をつぶやきながら、


「まあ、なんにせよ、それが御命令であるならば、黙って従うまでですが」


 平の言葉を受けたミシャが、ブスっとした顔で、


「そんなことは分かっているわ。それが師の命ならば、たとえ、自害であったとしても喜んで受け入れる。……けれど……疑問を消すことはできないわ。私は人形じゃない」


 当たり前の事を口にしてから、眉間にグっとしわを寄せて、


「――ねぇ、なんで? なんで、あれだけが、『許される』の?」



 ボソっとつぶやいたその言葉に、ゾメガが、


「さぁのう。それだけは誰にも分からん」


 続けて、平が、苦笑いを浮かべて、


「はははっ、まあ、いいんじゃないですかね。組織の活性化には、彼女みたいな『特異』な存在が必要不可欠だとボクは思いますよ」


 別に本気でそう思っている訳ではない。

 しかし、ゼノリカ内部で唯一、酒神だけが、『妙な立場に在る理由』は師から聞かされていない。

 ゆえに、テキトーなところで言及を避けるしかない。


 もし、余計な事を口にして、それが主の意志に反していた場合、目も当てられないから。



 ――などという配慮はなく、ミシャは、思ったままに、


「私は、あんなもん、ただの癌でしかないと思うけどね。お許しさえあれば、今すぐにでも殺してやるわ」


 ボソっとそう言った。

 それに対して、ゾメガが、ニっと笑い、


「師から妙な特別扱いを受けているアレに嫉妬しておるのがみえみえで可愛いのう」


「このクソジジイ、ふざけっ――」


 一瞬で沸騰したものの、激昂する方がみっともないと、自分を即座にいさめ、


「師に世界を託された至天帝の一人である、この私、ミシャンド/ラが、あんなガキに嫉妬なんてする訳ないでしょう」



 その発言に対し、平が、


「デスヨネー」


 ニコっと微笑みながらそう言った。


 両方からイジられたミシャは、眉間にしわをよせながら、


「……ふん」


 プイっと顔をそむけた。


 長い時間、超越者・支配者として生きてきて、精神的にもかなり成長したミシャだが、センが関わると、とたんに子供に戻ってしまう。










 ――ちなみに、

 酒神終理の、センエースに対する忠誠心はゼロ。

 信仰心もゼロ。

 センエースの事を、『完璧な素晴らしい神』だと思った事は一度もない。

 もっといえば、センエースの事を『どうしようもないアホ』だと思っている。

 センエースなど、ただの、しょうもないアホガキ。

 極めて思慮が浅く、短絡的で幼稚な思考の持ち主。

 確かに突飛な力は持っているが、それだけのバカ。

 ――それが、センエースに対する酒神終理の評価。






 酒神は、ぶっちゃけ、ゼノリカにも興味がない。

 ゼノリカがどうなろうが知ったこっちゃないし、

 というか、そもそも、ゼノリカに属する者全員を下等生物だと認識している。

 見下している訳ではない。


 ゼノリカの面々に対して、

 『見下す』などという、

 そんな、上等な感情は抱いていない。


 ただ、純粋に、『しょうもない下等生物』だと認識しているだけ。

 アリをわざわざ日常的に見下して生きている者は少ない。


 『足下でうごめいている』と『認識』する方が、実際のところ珍しい。

 ふと、下を見たら、あいつらは『生きていた』。

 基本的には、それだけのこと。


 いつだって、


 『あ、いたんでちゅね。へぇ、アリさん、がんばっていまちゅねぇ。砂糖を運ぶの、大変そうでちゅねぇ』


 それだけの話。

 つまりは、なんの価値もないゴミ。

 いてもいなくても、どっちでもいい、『自分以外の何か』でしかない。


 酒神終理は――









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ