44話 異物の大活躍。
44話 異物の大活躍。
膠着状態に陥った現状を見たことで、センは、
(……くそ……仕方ねぇ……)
といった感じで、場の空気を切り裂きにいった。
仕方なく飛び出したものの、
もちろん、『基本方針』は変わっていない。
(俺の事は、最後の最後までナメてもらわないといけない……)
『マグレ全開で奇跡的に勝ち残った』という印象を、
最後まで途切れさせないこと、
それが、今大会におけるセンのメインテーマ。
正直、その手の画策は、かなり苦手な分野だが、
しかし、状況が状況なだけに、
苦手だのなんだのは言っていられない。
やると決めたら奥歯かみしめて、最後までやり通す。
それが、センの根幹にある意地であり矜持。
「くらえ、必殺! ミラクルスペシャルウルトラスーパーメガトンパーンチ!!」
などと叫びながら、
センは、拮抗状態にある戦場に食い込んでいく。
参加者の視点でいうと、
おそろしくノロい自爆特攻。
そんなセンの自爆に対し、
今、武舞台に上がっている者の中では最もランクの高い男――『サボン』は、
(鬱陶しいな……)
さすがにイラっとしたようで、
(……普通に邪魔だし、飛ばしておくか……)
そう決意し、
一瞬で場外に吹き飛ばそうと、
センに対して、カウンターの飛び蹴りを入れた。
センの存在を、全員が鬱陶しく思っていたため、
『セン排斥の邪魔』をすることはない。
ただ、サボンの『攻撃後のスキ』だけは、
全員が虎視眈々とうかがっている――と、そんな状況で、
センは、
「おわっ……」
途中で、地面に足をひっかけ、豪快に転倒。
その勢いが、思いのほか強く、グルンと一回転。
遠心力タップリのカカトが、サボンの脳天――完璧な急所にピンポイントでズガンと叩き込まれた。
「ぐぅぁあああああああああああああああああああああああっっっ!!」
ビリビリと全身がしびれ、
一瞬、フラついてしまうサボン。
全身の気と血が停滞して、目がチカチカする。
大ダメージは受けていなが、
軽いスタン状態に陥ったサボンに、
ほかの高位参加者が、
「ははは、運がなかったな、サボン!!」
そのスキをついて、背面から豪快なドロップキックをかまし、
サボンを場外へと突き落とす。
この中では『もっとも強かったサボン』の脱落によって、
拮抗状態にヒビが入り、
事故った道路のように渋滞していた戦場は、
スムーズに動き出す。
一気に脱落していくわけではないが、
徐々に、徐々に、脱落していき、
残り1分になったところで、
武舞台の上にいる参加者は6人になった。
「よし! あとは、あのザコ(セン)を落とせば――」
そう意気込んで、『サボンを倒した男』が、
『それまでシカトされていたセン』に特攻をかける。
「サボンの排除を手伝ってくれて、感謝しているぜ! 礼と言っちゃあなんだが、ケガは負わないようにしてやるよ!」
そう言いながら、
優しくセンを場外に落とそうとした。
そのムーブに対し、『武舞台の端っこギリギリ』に立っているセンは、
「ひぇ!!」
と、悲鳴を上げながら、
身体を『奇妙な角度』にねじった。




