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17話 恐悦至極にございます

 17話。


 慣れているのだ。

 かしずかれる程度のことは。



 当然。

 この御方は、無上の神。

 尊き、その御御足おみあしの前に、全てを捨てて身を投げ出さぬ方が、魂を持つ生物として間違っているのだから。




 アダムは即座に納得する。

 アダムの精神は、確かに、神の領域にあった。



 心を立て直す。

 光を食らうように、目が輝く。



「そこをっ――」


 アダムは怯まない。

 ただ、愚直に、前へ――


「――どうかっ」


 前へ!


「どうかぁ!!」


 五体投地で懇願する。

 決して引かない。


「あなた様に尽くすために、わたしは生まれてきたのです。どうか、この哀れな子羊に、どうか、どうか、御慈悲をっ! この身のすべてを、どうか、あなた様にささげさせてくださいませ!」


 そんなアダムの姿を見て、センは、辟易した顔で、



「俺は、かつて、世界全てを従えたことがある。その世界に存在する全て、神を含めた丸ごと全部を配下にした」



 滔々と、ため息をまじえつつ、



「王様……天帝ってやつになってみて思ったことは、すげぇメンドくさい。それだけだ」


「主を煩わせる全ての事象を、わたくしが屠ってみせましょう」


「お前がそうなんだよ」


「今、私は私を殺し、かつての私は、細胞一つ残らず死に絶えました。そして、主の奴隷として生まれ変わったのです。おぎゃー」


「うわぁ、これ、何言っても諦めないパターンのやつだ……だっるぅ……そっち系のヤツじゃないと思ったから、ちょっと闘ってみようとしただけなのに……はぁ、どうすっかなぁ、めんどいなぁ……記憶を消す魔法でも使うか? ……でも、記憶系の魔法、めんどいし、しんどいんだよなぁ……ぶっちゃけ苦手だし……」


 その言葉に、アダムは肩を震わせた。


 豊かな胸がプルンと震える。


 今となっては、神の存在を忘れてしまうことが何よりも恐い。



 今のアダムは、

 ただ、この大いなる光の側にいたかった。



 離れたくない。

 この輝きのそばで、その輝きが照らす全てを、この目で見てみたい。





 それは、きっと、これまでに見てきた何よりも美しいはずだから。





「ああ、でも、そういえば……これまで、存在値1000を超えているヤツを子分にしたことはなかったなぁ……まあ、そんなヤツは、ほとんどいなかったってだけの話だが。――神は、いろんな意味でノーカンだしなぁ。あいつ、俺に対して最初から最後まで余裕でタメ口だったし……つか、実際、あいつの立場は、手下ってか、臨時の共同経営者って感じだったし……」


 主が悩まれている間、

 アダムは、ひたすらに祈っていた。



 生まれて初めて神に祈る。

 目の前に実在する、全てを超越した無上なる神に、心の底から祈る。




 ――神託が下る。




「まあいいや。雑用係は必要だしなぁ……お前、今日から俺のパシリってことで」



「恐悦至極にございますぅぅぅうううううう!!」



 額を地面にメリこまさんばかりの勢いで叫ぶアダム。



「パシリ認定で感涙って、どんなマゾだよ」



 呆れ顔で頬をポリポリとかきながら、


「さてと……んーじゃあ、まあ、目の前のイベントをサクっと処理していこうか」


 アダムは、センの視線の先にある二人を睨む。

 いまだ、閉じた時の中にいる魔王と勇者。


 一方は剣を振り上げており、一方は魔法詠唱中。


 アダムは思う。


 神の御前でありながら、なんとふてぶてしい不敬な態度か!



 膝をつけ、膝を!!

 バカモンがぁ!


 時間が止まっている?

 知ったことかぁ!


「お任せください。あのしょうもないゴミ二つは、わたくしが、綺麗に掃除しておきますゆえ」

「……あのさぁ、それ、殲滅するって意味で言ってる?」


「はいっ」


「何、晴れ晴れとした笑顔で頷いてんだ。ダメに決まってんだろ、ドアホぉ!」

「しっ、失礼いたしましたっ。どうかお許しください!」


 お叱りを受けた瞬間、顔を真っ青にして、ブルブルと震えるアダム。


「失態を払拭するチャンスを! 必ず償ってみせますので、どうか、どうか! お願いですから、見捨てないでくださいませ!!」


 また頭をめりこませるアダムを見下ろし、



「そこまでするこっちゃねぇだろぉ……超ウザぃぃ……だから、イヤなんだよ、こういう感じで子分を作るの……」



 これも初めてではない。

 これまでにも何人か、こんな感じの配下はいた。


 過去を思い出し、これから起こるであろう確定的な面倒事に想いをはせ、

 センは深い溜息をついた。

 

「顔あげろ。そして、二度と勝手に謝るな。俺が謝罪を要求した時以外で謝ったら、それは俺に対する背信と受け取る。いいな」


「は、はいっ! もうしわ――ぃえ、なんでもございません!」


 飛び起きて直立し、姿勢をただすアダムに、センは続けて、


「俺は、これから『終わらせる方法』を探す。その邪魔をするヤツ以外は無視しろ。どうしても邪魔なヤツは殺してもいいが、特に理由もない殺戮は絶対にするな。俺の子分になった以上、お前が、悪意をもって誰かを殺せば、俺の殺戮ポイントが上がって、善系の魔法の威力が下がる」


「かしこまりました。全て、至尊が望むままに」


 腰を五十度ほど曲げて、恭しく頷いてから、


「あ、ところで、主上様。御命令は当然承りましたが……その、主上様が望まれている、終わらせる方法とは、いったい?」


「ん? ぁあ、実は俺って死ねないんだよ。いや、死ぬことはできるんだけど、死んでも、違う世界で蘇っちゃうんだな、これが」


「この上なき神であらせられる主上様であれば、それも当然のことかと存じます。そもそもの、『主上様に死が訪れる』という概念が少々理解できませんが、まあ、しかし、主上様は、何もかもが規格外の御方。きっと、己の死すら『不可能』ではないということなのでしょう」


「どう思ってくれてもいいよ。……とにかく、俺は死ねない。終われないんだ。とっくにカンストしちまって、特にやることもねぇのに、ダラダラと生き続ける。これはなかなかの地獄だ。というわけで、俺は、俺を終わらせる方法を探す。お前は、俺が調べ物している間のパシリ、それ以上でもそれ以下でもない。いいな」



「かしこまりました!」



 元気に返事をしながら、アダムは考えていた。


(死によって、違う世界に転生してしまう。ふむ。何かのアリア・ギアスか、それとも別の何か、か。あるいは、不死鳥の血族? ……ふーむ。いや、考えるだけムダだな。そして、理由云々は、実際のところ、どうだっていい。大事なことは、主が、終わり方を探しているという、ただその一点)


 アダムの頭が冷たく回転する。


(どうやら主は、本当の意味で『死』を求めておられるご様子。ふふふ。ありえませんなぁ、主よ)


 やれやれと、心底から呆れたようにため息をついた。


(あなた様は、永遠に世界を照らす耀き。もし仮に、あなた様を終わらせる方法などというものがあったとしても、あなた様の消失を、私は絶対に認めませんよ。あなた様は、永遠に、私を包む後光。決して逃がしは致しません)



 アメーバがヤンデレ化しました。

 本当にありがとうございました。






 この作品のヒロインは、かつて一つの世界を吸収し尽くした、神に限りなく近い最強の狂信者系ヤンデレアメーバ(超巨乳の究極美少女)です。


 ……まあ、あるあるですね。

 知り合いの異世界転生モノに五人はいます。


 というわけで、魔王と勇者がガン無視で放置されていて、特に何も始まっていないプロローグ、エンド。



ここから、しばらく、世界観説明的なチュートリアルです。

本編だけみたい――という方は、『69話 疲れるジャンケン』まで飛んでください。


チュートリアルを飛ばす方へ。

『30話 魂の系譜』の次話である『設定』と『設定2』に目を通していただければ、

この作品の世界観について、最低限は理解できるかと思われます(*´▽`*)

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自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
アダムのぶっ飛んだ忠誠心と、 それに対するセンの面倒くさそうな反応が、 最高に面白いです!
[良い点] >主の奴隷として生まれ変わったのです。おぎゃー www 知的で冷静なキャラだったのに、 なぜ急にギャグ台詞を使いおバカで可愛いキャラアピールしてきたのw しかも心の中はヤンデレだし [一…
[気になる点] 不死鳥の血族はアダムの妄想ですか?、それとも実在しますか?、いるとしたら無限蘇生の劣化版みたいなスキルを持っていそうですね
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