43話 聖なる死神の芸術。
43話 聖なる死神の芸術。
極大パワーアップを果たしたナイアに対し、
「うん。すごく大きいね♪ さすが、さすがぁ♪」
言いつつ、武を構えるセイバーリッチ。
口調ほど余裕はない。
というより、最初からずっと、別に余裕があるわけではない。
彼は、『必要』に駆られて『聖なる死神』を演じているだけ。
どんな時でもシニカルかつコミカルに、歪んだ笑顔でニヤリと笑う。
そんな『かつて彼が追い求めた理想の姿』を演じているだけ。
「ぶち殺してあげる♪ 『あの時』とは違うってところを、みせつけてあげたい♪」
「そりゃ、すげぇ時間が経ってんだから、『あの時』とは違うだろうぜ。しかし、結果はかわらねぇ。てめぇごときに、俺という絶望はこえられねぇ」
煽りはそこそこに、
両者は時空を駆け抜ける。
互いに距離を奪い合う、移動だけの闘い。
その戦いが、数秒過ぎたタイミングで、
ナイアが最初に仕掛けた。
ヌルリと、セイバーリッチのふところに忍んで、
「――爆牙・鳳凰仙丸ランク3800――」
手の中に圧縮させた爆裂属性の塊を、
鮮やかにぶち込もうとして、
けれど、セイバーリッチは、冷静に、
「――装壁・不鬼銘城ランク3800――」
高度な防壁魔法を展開し、
ナイアの魔法をいなしてみせた。
「さすが主役級! 相変わらず、判断力いいじゃねぇか!」
「ほとんど、それだけが取り柄だからね♪」
言葉を交わし合いながらも、
両者は、貪欲かつ狡猾に、
有利を奪い取ろうと、細かく画策していく。
オーラを分断して、
八方に配置する。
命のカケラがまたたいて、うごめいて、
魂魄の死角を虎視眈々と狙いすます。
「あはは、たのしいね♪ キラキラ光る♪ ピカピカうたう! 全部が見える♪」
弾けた爆風が、逆再生したみたいに、細かなチリへと変わって、
隠忍しながら反撃の時期をうかがう。
無数のグリムアーツと、
それを支える数々の極大魔法。
世界が神様の絵画になる。
「勘違いもはなはだしいぜ、セイバーリッチ。まだまだ、てめぇには何も見えちゃいねぇ。本物の『絶望の底』ってのは、目視できちゃいけねぇんだ」
互いに、慇懃な積み技の応酬で、メンタルを削り合っていく。
『豪快なグリムアーツ』や『派手な魔法』の影に隠れて、
緻密で繊細な11次元のチェスが行われる。
「――『凄惨たる死神の咆哮』♪」
「カオスティック・マキシマイズ・ドリームオーラァァァ!!」
厨二の神と、混沌の神が、
お互いの異常性を、これでもかとぶつけ合う。
領域外の芸術を切り取ったような、
刹那を噛み砕く静寂が、
ザラリと、互いの頬に触れた。
コンマ数秒の瞑想で明暗を上書きしていく。
これは、たがいの雅量を測り合う死闘。
「聖なる死神の芸術を見せたげる!!」
そう叫んでから、
セイバーリッチは、両手の拳に、聖なる死を圧縮していく。
膨れ上がる、歪なオーラ。
聖なる邪悪さという、完全なる自己矛盾で、
自身の不可解さを底上げしていく。
「――メギドグリムアーツ・セイバーゼノリカレント!!」
超次元のグリムアーツで、
ナイアに削りを入れていくセイバーリッチ。
覚悟と憤怒と執念が込められた美しき一手。




