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51話 そして、つながっていく

 51話


(100……いや、200は減ったか?)



 バクバクしている心臓。

 動揺からか、指先が震えている。


 ゼンは、スマホを取り出して、サっと確認してみた。


(ちょうど真ん中の150くらい……か……ちょっとずつ分かってきた……)


 ふぅ、ふぅ、と呼吸を整えながら、火ゴブリンから奪いとった「こんぼう」をギュっと握りしめる。



(不意打ちのクリティカルヘッドショットでその程度……MAX近いダメージの攻撃でも50発くらいは耐えられるなら、最悪でも、逃げ切るくらいはできそうだな……)


 そこで、ゼンは、左目を閉じて、集中して、目の前のゴブリンを見据える。



 000000000000000000000000000000000000000


 『ザーノ』

 『ホブゴブリン』


 《レベル》    【23】


 [HP]     【578/866】

 [MP]     【0/0】


 「攻撃力」    【21】

 「魔法攻撃力」  【0】

 「防御力」    【27】

 「魔法防御力」  【15】

 「敏捷性」    【12】

 「耐性値」    【11】



 111111111111111111111111111111111111111




(防御力、たけぇ……てか、全体的に、めちゃくちゃ強ぇなぁ)


 ゴブリン種のステータスは基本的に弱い。

 種族値が低い人間種の中でも、最下級クラス。

 ホブに進化してもタカがしれていて、龍種や鬼種などの上位種と比べれば、全ての能力値が半分以下と、べらぼうに弱い。


 が、レベルだけは高いという事もあり、今のゼンからすれば、『凶悪さ』を感じるほどに強い。


(ただ、魔法は使えないっぽいな。完全戦士タイプってやつか)


 ゴブリンは『暗視』や『暗闇』などの最下級闇属性魔法を得意としている種族だが、当然、例外というのはどこにでもいる。


(けど、MAXダメでも150程度。俺を殺し切れるほどの火力は有していない。かといって、勝てるかと言えば、それは否。防御力が高すぎる。おそらく、こっちの攻撃は通らない。負けないだろうが、勝てない事もほぼ確定的な敵……よし、戦闘は回避しよう。えっと……どう逃げるか……えっと、えと……よし、決めた)



 頭の中で、対応プランを固めると、ゼンは、ニっと不敵に笑って、



「隠れているのは気付いていたが、……進化種とは思わなかったな。会話が出来るのなら、話は別だ。取引しないか」


「……ぁ?」


「俺はフーマーの奥地出身だ。村の掟で旅に出る必要があってな。で、ジイサマの魔法でテキトーに飛ばされたんだ。というわけで、俺は、ここがどこかも知らん。なあ、ここがどこか教えてくれねぇか?」


「……」


「そう警戒するなよ。ザーノ」






「っ!!」






 目を見開いたザーノに、ゼンはたたみかける。


「まあ、そういう事だ。さっきは、隠れているお前を誘い出すために弱いフリをした。狩りの基本ってヤツだよ。実際、お前はノコノコと釣られた。さあ、ここからが重要だ。思考しろよ、ザーノ。……俺はフーマーの部落出身で、高位のサードアイが使える。その意味が分かるな?」


「……」


「さあ、ザーノ。教えてくれ。ここはどこだ? ん? どうした? まさか、無粋に俺と殺し合いたいのか? 別に俺は、それでも構わないぜ。ただ、無駄な血を流したくないという当たり前の思想を持つなら、どうか、ここがどこか教えてくれねぇか? ん?」


「……セファイルの北東。フロー山」


「北東……ね。なるほど、なるほど。ちなみに、お前、コンパスか何か持ってる? なんの準備もなく放り出されて困っているんだ。……あ、もしあれだったら、ここから出る案内とかしてくれないか?」


「……」


「なあ、頼むよ、ザーノ。俺はモンスターならともかく、亜人はあまり殺したくないんだ。亜人は人間と変わらないっていう主義でね。もちろん――」



 と、そこで、


 ザーノが、ゼンの発言を遮るように、




「常にセファイル王国を示す魔道具なら持っている。この山を根城にしているヤツで持っていないやつはいない。これがなきゃ、迷って死んで終わりだからな」




 言いながら、懐から、一部分だけが光っている宝石を取り出した。


「オレを殺せば手に入るぞ。がんばれ」


 そう言うと、ザーノは宝石を懐に戻す。

 そして、鉄のハンマーを捨てて、腰の剣を抜いた。




「おいおい……なんで、闘おうとするんだ? 聞いてなかったのか? 俺はフーマーの――」






「お前からは、『必死に生きようとしている者の焦り』を感じた……ソレは、圧倒的な強者からは感じないものだ」



(Oh、バレテーラ)



「少なくとも、あの女のような、異常性を……お前は持ち合わせていない。圧倒的な力、ゆえの、圧倒的な余裕……」


「あの女? ……あの女って?」


「オレはとある盗賊団の一味なんだが……ついさっき、異常な召喚獣を使役しているバケモノ女に、アジトを襲われてな。……超差別主義者の帝国の敗残兵ども相手に、こびへつらいながら、これまで、どうにかこうにか、上手くやってきたってのに……あっさりと制圧されて、幹部連中は全員殺された。俺の努力は一瞬で灰になった」


 よくみると、ザーノは疲れ切った顔をしていた。

 悪党としての矜持だけで自分を保っている。

 けれど、それを1枚はがせば、恐怖にそまった顔がべったり。


 ――苦い顔で、





「地獄みたいな光景だったぜ。今でも目を閉じれば、思い出す。『極悪な性能のケルベロス』を纏い優雅に空を支配しながら、『地獄から呼びだしたと思しき恐ろしく強い兵士3人』で地上を血で埋め尽くしていく死神。鬼みてぇに綺麗な顔をした、妙なイントネーションで喋る、頭ぶっちぎれた黒髪の魔女……」





 

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