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38話 殺し合い


 38話



(あの火の玉は避けない! こんぼうの攻撃も体で受け止める! 俺は、異常に硬い生命力バリアに守られているから、簡単には死なない! 大胆かつ合理的にいけ! 殺せ! まず殺せ! こっちのバリアがなくなる前に殺せ! どう考えても、その方が生存率は高い!! 殺される前に、殺せ!!)


 その原始的な思想に呼応するかのように、全身の、ありとあらゆる拍動部がドクンと脈打った。


 視界が、わずかだが鮮明になった。

 スローモーションというほどではないが、いつもよりも、明らかに、『今』がダイレクトに理解できている。


「うらぁあああああ」


 真正面から突撃するゼン。

 ゴブリンも、こんぼうを振り上げて向かってきた。


「ゲギャッ!」


 ゼンは、尖った石をゴブリンの頭部に叩きつけた。

 ズンっと震動は来た、が、石の先が貫通した感じはしなかった。


(っ……浅いっ……)


 その直後、ゼンの左顎に、こんぼうの衝撃。


「うぉお!!」



 ズシンとして、クラっとする。

 視界のズレはすぐに戻ったが、


(痛ぇえええ! これ、マジで、痛みカットされてんのか?! メチャクチャ痛ぇぞ!)



 すでに視界はハッキリしているし、痺れもない。


 ただ、ジンジンとした『鋭さ』と『鈍さ』を併せ持つ痛みがいつまでも残る。


 痛みというより、重み。

 左の下愕角が痺れている。

 骨の具体的な形が分かる。

 肌が、自分のものではなくなったかのような……


(痛い……が、動ける……動けないくらいの痛みじゃないとカットされないってことか? ボーダー、シビアだな!)


 ゼンは、そのまま、腕をふりあげる。

 まだまだ、動ける。


 心は熱いまま。


 だから、


「うぁあああああ! 死ね、死ね、死ねぇええ! うらああああ!!」


 ゼンは、叫びながら、何度も何度も石を振り下ろした。


 一瞬、『大声を出したら、他のゴブリンが寄ってくるのではないか』とも思ったが、もし仲間がいるなら、このゴブリンが叫んで呼ぶだけの話なので、そこを気にしても意味はないと判断し、腕に力がこもるように腹の底から声をだした。



「硬ぇな、くそ!! ああぁ、うぜぇえ!!」



 何度、石を振り下ろしても、ゴブリンは果敢にこんぼうを振り回して応戦してくる。

 まるで、質の低いAIみたいな行動。



「いいかげんにぃいい!!」



 ゼンは、両手で石を持って、ゴブリンの額めがけて、思いっきり叩きつけた。



「ゲギャッ……」


 すると、ようやくゴブリンが、クラっとよろめく。



「っ、おらぁ!!」



 ゼンは、ゴブリンの腹に蹴りを入れて、横転させると、

 グアっと飛びあがって、ゴブリンの頭を両足で踏みつけた。


 そして、そのまま、頭の上で、何度も、何度も、ジャンプして、


「死ね、死ね! まだ、死なんのかい! おわっ」


 5回ほど踏みつけたとこで、バランスを崩して、ゼンは倒れた。


 倒れながらもゴブリンを確認すると、


「ゲ……ギャ……」


 ゴブリンは、まだギリギリ生きていて、ゼンから距離を取ろうと這いずっていた。


「ふざけんなよ……くそ……全然死なねぇ……」



 少しだけ距離をとったところで、ゴブリンはゼンの方に振りかえり、



「ゲィ……」



 両手に魔力を集中させる。


 先ほどよりも大きな、軟球サイズの火の玉を両手につくり、ゼンを睨んでいる。



「決して諦めず……みっともなく……最後まであがく……そうだよなぁ……そういうもんだよな……殺し合いって……」



 ゼンは、そこで、左目を閉じて、眼帯を通し、ゴブリンのHPを確認してみた。







(……残り、6……)







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