86話 女神をイライラさせるのがうまいおバカさん。
86話 女神をイライラさせるのがうまいおバカさん。
(あのバカには、確かに、『どんな理不尽も実行してしまうかもしれない』と、そう思わせる『狂気の可能性』がある。けれど、さすがに、センエースを消滅させるという理不尽だけは、センエースでも実行不可能だと断言できる)
『根拠』が『感情論』という、
あまりにも曖昧がすぎる『定性的な超理論』だが、
しかし『センエースを主軸に置いたメソッド』の場合、
ソレが『通じてしまうことの方が支配的である』という、
なんとも不可思議な道理こそが、
この世界における最強のセオリーだったりもする。
(あの変態は『本物のバカ』だから、その辺のことが一ミリも理解できていない……が、事実として、この世界は、センエースが存在しなければ成立しない。ゆえに『センエースがいなくなった後のことを考える』というのは、そもそもの前提からして、ぶっちぎりでナンセンス。あまりにも無意味な想定)
自己の中での証明終了を経て、
シューリは、
『……ふーん、ま、どうでもいいでちゅけど』
感情の投げっぱなしジャーマンを決めていく。
・センエースは死なない。
・だから、センエースの死後を考えることは無意味。
無意味なことに対して、
カロリーを使うほど、
シューリは歪に酔狂じゃない。
『超恋盲目』状態だからこその超理論展開。
ある意味で、
センエースという英雄を信じ切っているがゆえの結論。
だが、事情を知らないセンは、
「自殺します、っつってんのに、どうでもいいときたか……相変わらず、俺に対する興味のなさがハンパねぇな。言っておくけど、無敵の精神力をフル活用して耐えているだけで、心の中では泣いているからな」
『お兄に対する興味なら、まったくのゼロってワケでもないでちゅよ。その証拠に、時折、無性に、ボコボコにしたくなる時がありまちゅ。興味がない相手のことは、ボコボコにしたいとも思いまちぇん。よかったでちゅね。オイちゃんほどの超絶美女から多少なりとも興味を持ってもらえて』
「うれしいね。俺の精神力を持ってしても我慢できずに涙がこぼれてしまうレベルでうれしいよ」
――と、
そこで
センは指をパチンと鳴らした。
すると、
装着している指輪と、
頭上の天輪がわずかに光って、
センの体がその場から消えた。
『シューリと二人で過ごすためだけの世界』に瞬間移動したセン。
そこでは、身支度を整えたシューリが、
『二人用のソファー』に腰を掛けて待っていた。
センが、シューリの隣に腰をかけると、
シューリは、姿勢を変えて、無言のまま、
ゴロンと仰向けで寝転び、
センに向かって、その長い足を投げ出した。
センは、『いつも通り』、
差し出された足を、
まるでヒザ掛けのように、
自分の太ももの上にセッティングすると、
ペルシャ猫でも扱うように、優しくなでながら、
「……あのさぁ、なんで、俺って、お前に、そんなに嫌われてんの? 俺、お前のために、超ヤベェ邪神と命がけで闘ったりとかしたこともあるんですけど?」
「はっ。その程度でオイちゃんと結婚できると思うだなんて、片腹大爆発でちゅ」
「いや、そんなことは一ミリも思っちゃいねぇんだが」
「なんで、思わないんでちゅか!」
「……もう、ほんと、今日、どうした? 情緒がラビリンスだぞ。更年期か?」
「あー、ほんと、お兄はオイちゃんをイライラさせるのがうまいでちゅねぇ。全力でボコボコにしたいでちゅ。ケツの穴から手ぇつっこんで奥歯ガタガタいわせてやりたいでちゅ」




