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32話 カッコいいプレゼント

 32話




「ちなみに言っておくと、『数真』には『自己鑑定やプロパティアイ』が内臓されている。その二つの機能がどれだけ便利か、すでにわかっているな? 有効に使え」


「ぉお、異世界転生あるあるきたぁ。いやぁ、まさか、自分にもステータスオープンが使える日がくるなんて……ああ、夢のようだ」


「ただし、どちらも低ランクだ。ちゃんとした目や魔法は、自力で会得しろ」


「うっす」


「さて、次に名前をやろう」



「名前? ありますけど?」



「俺から名前を与えられるってことは、俺の加護をえられるってことだ。神の加護をもつアルファ人は、サイバーアルファ人という一つ上位の存在になれる」


「神様の加護を得ることで、なんでサイバー化よばわりされるのかナゾですが……まあ、くれるってものはもらっておきますよ。で、どんな名前をくれるんすか?」


「ゼン。それがお前の真名だ。これからはゼンと名乗れ」



「ゼンっすか……はぁ、まあ、別に……自分の名前にこだわりとかないんで、いいっすけど。ゼン……ゼン……はい、了解っす」



「さて、それでは、最後に、カッコいいやつをプレゼントしてやる」



 そこで、指をパチンと鳴らす神。



「……ん? うわっ、なんじゃこりゃ」



「どうだ、ファンタスティックだろ」



 ニっとイタズラに微笑んだ神の視線の先には、


 学ランの上から、丈の長いコートを合わせて冒険しているゼンがいた。


 漆黒で、タイトで、トレンチで、クロムハっている銀の装飾が、これ見よがしにジャラついている、シックでスタイリッシュでおしゃれでナウいヤングなコーディネートと相成っていた。



「おいおいおい、マジか、これ……うわっ、なんだこれ、うわっ、コートだけじゃねぇ……顔になにか……ひぃぃいいい……右目に、右目にぃい!」



 右目には眼帯。

 それも色は漆黒で、何やら意味深な多角形の星型が刻まれていた。

 マジックミラーのような特殊な素材で出来ていて、裏側からは全てが見通せる。

 かつ、数真と連動していて、簡易プロパティアイが発動しているので、見えなかったものまで見えるようになっていた。


 その眼帯の効果で、神のオーラが少しだけ見えた――が、今のゼン的には、そんなことはどうでもよかった。



「簡易版とはいえ、プロパティアイが常時発動していると、しんどいだろうから、集中しないと使えないように調整しておいてやるよ。……さて、それはそうと、鏡を用意してやったぞ。さあ、自分のカッコよさを堪能してくれ」



 目の前に現れた姿見に映る己の全体像を確認したゼンは、


「ぅわわわわわわ!」


 全身で、『この世の終わり』を表現しながら、その場にへたりこんだ。


「そのコートの名前は、『ファントムレクイエム』。眼帯の名前は『エレウテリアサーガ』。どちらも俺自作の究極超神器だぞ。そんないいものをタダでもらいやがって、羨ましいヤツだ。世界中の幸福を独り占めじゃねぇか……んっ……おいおい、どうやら、お前の幸運は、こんなところで立ち止まっちゃくれないらしい。やったな、ゼン。どうやら、そいつらはお前の事を心底から気にいったらしい。お前の事が好きすぎて、もう二度と離れてやらないとまで言っているぞ。このラッキーボーイめ」


「見た目だけじゃなくて、中身もゴリゴリに呪われてんのか、この服! え、うそ、マジで脱げねぇ!!」


「その二つはすごいぞ。なんと、着ているだけで、GL経験値が1,1倍に増えるんだ」


「呪いの重さにメリットがつりあってねぇ! ちょっ、神様、これ、マジでやめてください。むりむり、これで外は歩けねぇ!」


「そこに、この『黒炎が刻まれた革手袋』と『太ももの高さまである、チェーンつきのエンジニアブーツ』だ。これを合わせる事で、お前の全てが完成する」



「……ぅぅわぁ……っっっ!」



 抵抗も出来ないまま、手袋とブーツを装着させられ、全てが完成したゼン。

 完成した己の姿を目の当たりにして、心底から絶句するゼン。



「感謝しろよ、『革手袋の指だし』は流石に耐えきれないだろうと慮ってやった。そのせいでブーストを最大値まで持っていく事は出来なかったが、まあ、これでもセット装備ボーナスはSS+で、GL経験値は25倍。充分だろう。お前も、これだけの倍率ならば文句はあるまい」


「25倍……ぅ……それは、確かに……魅力的だけど……いや、でも、やっぱこのカッコは無理だって。こんな『世界中の中学二年生よ、オラに元気を分けてくれ』みたいな恰好は、流石に――」


「さて、それでは、準備も整った事だし、そろそろ旅立つ時間だ」


「あの、マジで、この恰好で異世界に送られる訳じゃないですよね? もちろん、ただの、この場で処理される、ちょっとした一発ギャグですよね? そんな訳ないですよね?」



「ゼン。これからお前は、過酷な――」



「まてまて、まとめようとすんな!」



「だが、安心しろ。必ず、努力は実を結ぶ。俺は信じている。たとえ、どんな苦痛、どんな苦難、どんな絶望であろうと、お前は、必ず、すべてを乗り越えて――」


「あんたから押し付けられた『この絶望』だけは乗り越えられねぇ! 俺は、呪われし暗黒の超勇者にはなれない! お願い、神様! これだけは――」


「掟に従い見送らぬ。すこやかにあれ、ゼン」




「俺を解き放て、俺は常人だぞ! ちょ、マジで、待っ――」







 ――こうして、ゼンは『原初の世界』に旅立った。






 ゼンを見送った直後、神――究極超神センエースは、


「さぁて、自分相手の神様ごっこ、終ぉわりぃ、っと。……それじゃあ、そろそろ本格的な修行を開始しようか。まずは、究極超神化6を強化する。今のままじゃあ、使い物にならないからな」



 言いながら、ストレッチをしつつ、



「そして、目指す。究極超神化7」



 センは、ニっと笑って、無限の空を見上げる。






「これから、複数のフルバグチートブーストを背負った『可能性の塊』が、必死になって追いかけてくるんだ。止まっているヒマはねぇ……俺も、とことんまで行ってやるさ」


 ボソっとそういうと、センは、完全集中モードに入る。

 この世の全てを遮断する、完全なる無の境地。


 そして、五分後、




「――究極超神化6――」




 真の姿になった神が、そこにいた。



「1分で動けなくなるんじゃあ、同格相手には使えねぇ……せめて15分くらいは変身できるようにしねぇと。……気が遠くなる道のり……だが、やる。やってやる。必ず越えてみせる」



 最強神の挑戦がはじまる。

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自作コミカライズ版35話公開中!ここから飛べます。 『センエース日本編』 また「センエースwiki」というサイトが公開されております。 そのサイトを使えば、分からない単語や概念があれば、すぐに調べられると思います。 「~ってなんだっけ?」と思った時は、ぜひ、ご利用ください(*´▽`*) センエースの熱心な読者様である燕さんが描いてくれた漫画『ゼノ・セレナーデ』はこっちから
― 新着の感想 ―
[気になる点] なんと、着ているだけで、GL経験値が1・1倍に増えるんだ カクヨムの方でみてたら点がこうなっていたのでこっちもこうなっていたので誤字なのか仕様なのか
2024/05/22 21:44 マグロっぽい鯖
[気になる点] ゼン、センから、呪いの装備を貰いましたが、 トイレとかお風呂はどうしてますか?
[気になる点] センエースの加護はどんな効果を持ちますか? サイバーアルファ人になると何か変わりますか?
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