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女になった相棒と行く異世界転生冒険譚  作者: 光月
やっぱり女になった相棒と行く異世界転生冒険譚
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冒険譚は、ここにある


 話をするために、執務室を離れ、オレとシオンに割り当てられている部屋に向かう。

 まあ、要するにこのオレ――ローゼンクランツ男爵の自室なわけだが。


「……さて。シオン、覚悟はいいか?」

「お……おう」


 ごくり、とシオンが生唾を飲む音が部屋に響く。

 なまじ静かな室内であるが故に、余計に大きく聞こえてしまう。


「…………くく」


 握り拳を作って、しっかりした目でこちらを見つめてくるシオンに、果たしてこいつはどんな覚悟をしているのかと、思わず笑いが漏れる。


「な、なんだよ!?」

「いやいや。ふふ。お前、面白いな!」

「なんなんだよ!」

「いや……くく……すまん。まあ、なんだ。早速聞くか?」

「早く話せよ」

「悪い悪い。んー…………そうだな、まずはざっくり行くか」


 細かい話は一問一答形式で話せばいいだろう。


「シオン。実はオレは、この世界の人間じゃない」

「…………は?」


 ぽかん、とした表情になるシオン。

 わかるぞ。オレだって、急に『実はこの世界の人間じゃないんだ』って言われたら混乱するし。


「シオンは、転生って信じるか? ある場所で生きていた存在が死を迎え、同じ世界、あるいは違う世界で新たな生を得る。そんな事象だ」

「転生……。クロウが、その転生者だって事か?」

「まあ、そうなるな。どうだ?」

「どうって言われてもな……。それを証明する事って出来るのか?」


 言われて考えてみる。

 転生の証明……か。《鴉》、黒天洞、ホロスリングは証拠にはならない……よなぁ。


「無理だな。証明する事は出来ない。……けど、確かにオレは転生者だ。元々、こうして帯剣する事も、魔法を使う事もない世界で生きてた」

「剣も魔法も……? それで生きていけるのか? 魔物は?」

「……そもそも、魔物ってのがいない。人間同士の小競り合いはあったが、それ以外には大した脅威もない、至って平和な世界だった」

「そんな世界があるんだな……」

「まあな。で、その世界で死を迎えたオレは、神様の計らいでこの世界に転生したわけだ。クロウという男として」

「……元はなんて名前だったんだ?」

「この世界的に言うなら、イズモ・アサギリだな」

「元いた世界でも貴族だったのか……!?」

「いや、貴族制度は廃れて久しい世界だった。単に、苗字……つまり、家名と名前でセットなのが一般的だっただけだ。身分の違いなんて、せいぜい王族あるいは皇族か庶民かの違いしかない」

「へえ……。でも、王族や皇族はいたんだな?」

「国の象徴ってだけだがな。この一族を主軸に纏まってるってだけのものだ。だから王族や皇族は政治に口出しが出来ない」

「……それで政治が出来るのか?」

「一応出来てたな。合議制っつってな。民衆が選んだ代表者が議論をして、可決されたものを国の政策として実行するって感じだった」


 今にして思えば、色々と面倒な制度ではあったが。

 ニュースでやってたバカな政治家の発言とか、不祥事だとか……そういうのを考えると、王政のなんと単純で楽な事か。

 ……まあ、日本にしても他の国にしても、今さら国王として立てる王族皇族もいないだろうが。


「……じゃあ、クロウは、今いくつなんだ?」

「ん、歳か?」

「ああ」

「……そうだなぁ。大体半年ってところか」

「…………半年?」

「そう、半年」

「……ナニガ?」

「だから。この世界に生まれてから半年なの」

「……ハントシ? ハントシってナニ?」


 いかん。シオンが混乱している。


「あの……あのな、シオン? この身体は、神様に用意してもらったものなんだよ。前世の記憶はあるが、生まれてからって事なら、半年なんだ」

「神様に用意……?」

「そう」

「……じゃあ、見た目と実年齢が違う?」

「そうだな」

「で、今いくつなんだ?」

「半年だって言ってんだろ」


 正確には、生後5ヶ月とちょっと。

 ……神様に身体を用意してもらわなかったら、今ごろはどこかの家でベビーベッドの中か、そうでなければ母親の腕の中だな。


「まあ、シオンにはそれを踏まえた上で、よく考えて答えて欲しい」

「……うん」

「……オレは、変わらない。お前が欲しい。相棒として、恋人として、伴侶として。この先もずっと、お前に、隣にいて欲しい」

「…………うん」

「ま、今すぐ答えを出せとは言わないから、じっくり考えて――」

「俺も」

「え?」

「俺も……クロウの隣にいたい、んだ。転生してたって、今は『クロウ』なんだろ。じゃあ、迷う事なんて無い。ずっと、お前の隣に立っていたい」


 顔を真っ赤に染めながら。それでいて、こちらをしっかりと見つめながら、シオンはそう言った。


「……そう、か」

「おう!」

「……旅に出ようか、シオン」

「旅?」

「ああ。知らないところに行って、知らないものを見て、知らない事を聞いて、知らない料理を食べて、知らない土地で眠る。時には魔物も斃すだろうし、面倒事に巻き込まれるかも知れない。けど、それを楽しむ旅に出よう」

「……旅、か」

「冒険をしよう。冒険をしてはいけないオレ達冒険者にしか出来ない冒険を。世界には、きっと面白いものが沢山ある」

「そうだな……俺達、『冒険者』なんだもんな。いいぜ、クロウ。お前と一緒なら、どこだって行ってやる」

「よし。じゃあ、早速準備するか」

「……領地はいいのか?」

「この前、遠距離連絡用の魔導具が完成したからな。もしアレなら魔法で飛んで帰ってもいいし、問題ない」

「放蕩貴族め」

「男爵位なんて、いるのかいないのかわからん爵位だからな。自由にさせてもらうさ」


 国王には悪いが、今の段階でも十分に利益は出ているはずだ。

 海水塩は軌道に乗ってるし、特許も取ってある。心配事なんて、そう無いはずだ。


「じゃあ、準備するか。何が要る?」

「とりあえず食料かな? ……あ、そうだ」

「ん?」

「なあ、シオン」

「……なんだよ。なんか嫌な予感するぞ」

「旅の仲間が増えるのは、良い事だよな!」

「このバカ! 期待した俺の心を返せ!」

「ま、そう怒るな。殿下とフレイくらいしか連れていかないから」

「あーもう……。わかったよ、好きにしろよ」

「悪いな。愛してるぜ、シオン」

「はいはい、俺も愛して――」


 やれやれ、といった表情でぞんざいな返答をするシオンの唇を奪う。

 別にキスで誤魔化そうってわけではないが、長く深く、想いを刻み付けるようにキスをする。

 30秒か、1分か、あるいはもっと。


「――っぷは。息苦しいわ、バカ!」


 やがて押し退けるように唇を離したシオンから、そう言われ怒られた。

 どうやら本当に息苦しかったらしい。


「悪い」

「謝るなよ……一応、嬉しかったからさ……」

「一応?」

「一応!」

「……そうか」


 もっと嬉しくさせられるように精進しなければ。


「……なんか、変なこと考えてるだろ」

「……さあな? それより、ほら、『冒険』に行こうぜ、相棒!」

「はいはい……どこまでもついてってやるよ、相棒!」


という事で完結です。

本当はまだ色々と書くつもりだったのですが、終わりの形が自分自身まったく見えてないので、この辺りで完結とさせてください。

これ以上は広げた風呂敷を畳めなくなりそうですので。



さて。

『女になった相棒と行く異世界転生冒険譚』

如何だったでしょうか。


とある音声作品を聞いていた時に、ふとこの『シオン』の設定を思いついて、その思いつくままに書いてきました。

だからってわけじゃないんですが、明確な『終わり』を決めていなかったのもあって、『この辺で終わるかぁ』みたいに考えて、この運びとなりました。


ブックマークもしていただいて、拙作を楽しんでいただいている皆々様には本当に申し訳ないですが、この小説はこれで終わりとさせてください。

ただ、もし良ければ、他にも2つほど執筆しておりますので、そちらも読んでいただけたらなと思います。


またいつか、どこかのタイミングで新たな小説を書き始めるかも知れません。

その時もまた、良ければ目を通して、出来れば評価や感想、ブックマークなどいただけると幸いです。


それでは、またいつか、あるいは別の小説で、お会いいたしましょう。

ここまで読んでくださり、本当に、本当にありがとうございました。




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