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女になった相棒と行く異世界転生冒険譚  作者: 光月
女になった相棒とする異世界転生貴族生活
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騎士達に手解き


 しかし、それにしても。

 いくら悪評や揶揄の類ではないとは言え、笑われているというのは、あまり気分の良いものじゃない。

 既に、ざっと5分くらいは笑い声が収まっていないのを見るに、この騎士共にはオレの挨拶がよほどツボだったらしい。

 ……段々イライラしてきた。


「……く、クロウ?」


 オレの変化に気が付いたのか、シオンが心配そうな声音で声をかけてくる。……が、もう遅い。

 どうせ部下の実力は測らねばなるまいと考えていたし、むしろこれは丁度いいのかも知れない。主君自らが実力を見てやろうというのだから、きっと彼らも部下冥利に尽きてくれる事だろう。

 いや、むしろ尽きろ。


「なるほどなるほど。お前達は望んでオレの下に来たのか。そうかそうか。……なあ、セルバス。こいつらは、まだ元気があるなぁ?」

「は。この度の行軍は旦那様のお蔭様で体力を温存出来ましたからな。訓練も始めたばかりですし、有り余っておる事でしょう」

「それを聞いて安心した。せっかくだし、特別訓練といこう」

「特別訓練、でございますか……?」

「ああ。オレが手ずから、一切の甘えなく叩きのめしてやる」

「それはそれは。主君御自らの手解きとなれば、今後の助けにもなりましょう」

「そうだろう、そうだろう。号令は任せるぞ、セルバス」


 頼もしき監督官にそう告げながら、ホロスリングの中から1本の直剣を取り出す。

 今後、『鴉』ではオーバースペックな場面が来た時の事を考えて王都で買っておいた、そこそこ有名な職人により鍛えられた1本だ。

 もちろん、目的としてはそれだけでなく、シオンとの鍛練の時にも使う予定である。流石に神造の刀だけあって、普段使いには向かないからな。


「静まれッ!!」


 轟ッ! とかいう書き文字が付きそうな迫力で、セルバスが騎士達を一喝する。

 そうすれば、不思議なことに、先ほどまで腹を抱えて笑っていた騎士達の笑い声がピタリと止み、打って変わって真剣な表情でセルバスに注目している。


「体力が有り余っているようで何よりだ。そんな貴様らのために、クロウ様御自ら手解きをしてくださるそうだ。各自、その御心に感謝し、また、無様な姿を晒さぬよう死力を尽くせ!」

『『『はッ!!』』』

「うむ。……旦那様、最初の相手は、如何なされますかな?」

「……フン。外から言われなければ笑い声ひとつ止められないような奴なぞ、どれでも大して変わらんだろう。そんな子供を相手にするのだから、誰が最初でも構わん。所詮は有象無象だ」

「なるほど、まったくですな」


 そのセルバスとのやり取りの直後、ピリッとした空気が肌を刺してきた。間違いなく殺気である。

 騎士だとか志願者だとか言ってみたところで、仕える相手は冒険者上がりの18歳の若僧という事を、そう簡単に受け入れられるはずがない。

 となれば、見え見えとは言え、そんな若僧からの挑発を看過出来ようはずもなく、明確な殺意、殺気を振り撒かずにはいられないだろう。

 まあ、あるいはそれは『苛立ち』と言うのかも知れないが。


 ともあれ、良い殺気だ。

 普通の人ならまず気絶、最悪はショック死。

 冒険者や騎士でも、半端な奴なら失禁するか気絶するかくらいするだろう。

 魔物でも、ゴブリンやコボルト程度ならその場で固まって動けなくなるだろうか。

 流石に、これまで鍛えてきて、やれ国王直属だとか辺境伯直属だとかいう立場に居ただけの事はある。


 まあ、オレやシオンには効かないが。


「殺気だけは1人前だな、お前達。だがまあ、一応言っておいてやるから、よく覚えておけよ?」


 そう言いながら、騎士達の間をすり抜けて広い場所に出る。オレはそこから更に歩いて、騎士達と充分に距離を取ったところで反転し、片手で直剣を構えた。


「――かかってこい。1人でも、複数でも、誰でもいい。オレを殺すつもりで来い。もしオレが道を違えた時……その時に、主であっても討つ覚悟のない部下は、オレの下には要らん。……そら、来いよ。胸は貸してやるぞ?」


 ふふん、と鼻を鳴らしてドヤ顔で言ってみれば、一拍の沈黙の後――


『『『上等だァ!!』』』


 苛立ちを多分に含んだ、男達の怒号が響き渡った。


 そして、騎士達のうちから3人ほどが抜けて出てきた。様子見という事なのか、想像していたよりも少ない人数だ。


「なんだ、お前達。最初はそれっぽっちでいいのか? 様子見にもならんぞ」

「いいんです!」

「最初で倒せば問題ないはずです!」

「行きますよ、クロウ様!」


 3人は口々にそんな事を言って、腰に差した直剣を抜き放った。


 ――バカだなぁ。


「「「うおおおおっ!!?」」」


 様子見に出てきた騎士3人を風属性の【エアロバースト】で上空高くに打ち上げる。

 打ち上がった3人はそのまま重力に従って自由落下で地面に激突した。


「どこの世界に『今から斬りかかるから覚悟しろよ』っつって戦闘を始めるバカがいるんだ。お前ら3人は不合格だな。セルバス、運べるか?」

「お任せください、旦那様」

「悪いな。一応補助をかけておくよ」


 老いた身を押して仕事をしてくれるセルバスに、申し訳程度かも知れないが補助系統の魔法をかけてやる。

 まあ、補助系統とは言っても聖属性の範疇なのだが。


「これは――! ありがとうございます、旦那様」


 セルバスはそう言って一礼すると、地面にノビている3人のうち2人をまず両脇に抱えて訓練場の隅に運んでいき、残った1人をこれまた片手で担いで運んでいった。


 ……おかしいな。

 そんなに強い補助魔法をかけたはずはないし、騎士達だってフルプレートアーマーを着込んでいるはずなんだが。

 なんであんなに軽々と運べるんだ……?


 ……まあ、いいか。


「次、出てこい。言っておくが、オレは剣術も、魔法も、格闘術も使う。必要に応じてこの地面だって武器として使う。……まあ、当然だな。戦闘には卑怯も非道もない。勝った奴が正義だ」

『『『……………』』』

「くだらん騎士道精神を掲げたければ、今すぐ荷物を纏めて元の職場に帰れ。オレの部下に必要なのは、思考を止めない事と臨機応変に対応出来る事くらいだ。順次追加していくからな」


 そこまでを口にしたところで、今度は8人の騎士が前に出て剣を抜き、その後ろで5人の騎士が魔法の詠唱に入っている。

 なるほど、こちらが魔法も使うなら同じく魔法で対抗しようという事か。

 ……まあ、魔法で後ろの魔法使い役を狙い撃ちしてやってもいいんだが、それをすると何の訓練にもならんだろうし、やめておくか。


 なんて考えていると、8人の前衛騎士のうち4人が飛び出してきて、無言のままに剣撃を繰り出してきた。

 4方向……いや、魔法も含めれば果たして何方向から来るのか知れたものじゃない。

 素直に打ち合うのは愚策。――それなら。


「はぁっ!」


 まずは迫り来る4人の騎士のうちの1人にターゲットを絞って、土属性の【アースクラフト】で地面を弄って足を引っかけて転ばせる。

 うち2人には水属性の【アクアジェイル】で顔を覆って溺れさせ、最後の1人は樹属性の【ソーンバインド】で縛り上げて無力化する。


 と、そこまでしたところで、魔法使い役達の詠唱が終わったらしく、無数の【ライトバレット】が四方八方から襲いかかってきた。

 普通【ライトバレット】と言えば、そこそこ使い慣れた人間で1回につき10~15発前後くらいの光の弾丸を生み出すのがせいぜいなのだが、この騎士達はかなり使い込んでいるようで、1人あたり30~45発前後の弾丸を生み出している。

 騎士だからと思って魔法の腕なんてオマケ程度にしか考えてなかったが……いやはや、これはなかなかに侮れないな。


「いい腕ではあるんだが……単一の属性なのは、なんというか、玉に瑕だなぁ」


 ぼやくように口にしながら、闇属性の【エクリプスフォース】で光の弾丸を飲み込む。

 光と闇で対になっているのか、下位の光属性魔法の大半はこの【エクリプスフォース】で飲み込んでしまえるからありがたい。


「魔法使いとの戦闘経験に乏しい……かな?」


 騎士達の戦い方からとりあえずそう断じて、今度はこちらから切り込んでみる。

 試験的に、魔法は使わずに。


 さてさて。どう対応してくるかな?

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