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女になった相棒と行く異世界転生冒険譚  作者: 光月
女になった相棒とする異世界転生貴族生活
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領地経営計画、発動


 ライヤの案内で執務室へとやって来たオレは、早速ホロスリングから領地経営計画書を取り出してライヤに渡した。

 既に領地の視察を終わらせているし、無駄は省きたいのである。


「旦那様、これは……?」

「国王から叙爵されてから今までの1週間で視察を済ませ、考えておいた領地経営の計画書だ。とりあえず目を通してくれ」

「わかりました」


 ライヤは短く答えると、早速計画書に手を伸ばし、ぺらぺらとページを捲り始めた。


 計画書に書いてあるのは、何の事はない、前世では散々やられていたあれこれだ。

 海水塩の精製計画とその手順、ノーフォーク農法の概要と利点、魔導具を利用した海産物の内陸への輸出計画、その他生活を豊かにする計画。

 日本や世界の先進国では既に使い古されたようなあれこれだが、こちらの世界ではそのどれもが革新的である事を確認している。


 故にこそ、それをオレの領地で行ったならば、いくらでも……とまではいかないが、割と楽に発展させる事が出来るはずだ。


「これは……!」

「むむ……我が子の頭は一体どうなっているんだ……?」


 気付けばクシャナ殿下とコルナート辺境伯とが、ライヤの持っている計画書を覗き込んで唸っている。


「旦那様、このノーフォーク農法ですが」

「うん、どうした?」

「概要は理解しましたが、利点がいまいちわかりかねます。そもそも何故ノーフォーク農法をしたいのでしょう?」

「……ライヤ。今現在、家畜はどうしている?」

「……冬には潰します」


 アバウトな質問だったが、ライヤはそれだけで理解してくれたようだ。


「そう、冬には家畜を潰してしまう。何故ならば、今の状況では越冬にかかる費用が大きすぎて、家畜の方まで手が回らないからだ」

「その通りです」

「そこでノーフォーク農法の出番だ。この農法は、4年をかけて小麦、蕪、大麦、クローバーを輪作する農法だ。当然だがクローバーは人間は食べない。これは家畜の飼料になる。蕪は人間も喰うが飼料にもなる。……ところで、蕪には家畜の食欲を維持させる事が出来てな?」

「……まさか、家畜に越冬をさせて畜産物を輸出しようという事ですか?」

「如何にも。まあ、流石に今年からは難しいだろうから、来年から始める事にする。今年は例年通りに小麦を栽培しているから、蕪から栽培を始めさせる。それに際して新たな農具も導入するつもりだから、きっちり読み込んでおいてくれ」


 まあ、多少の失敗は想定の範囲内だから、ノーフォーク農法に関してはゆっくりでいい。

 そもそも4年かけてやらないといけないから、どうしたってゆっくりになってしまうんだが。


 その間は塩と海産物で利益を得よう。

 海産物は……まあ、それなりに早くやれるだろうが、塩はとりあえず1年ほど見るか。

 領内だけで海水塩が安定供給されたなら、その時こそは外側に売りに出すとしよう。

 幸い、国王には5年の猶予を貰っているし、それだけあればノーフォーク農法も完全に起動して、ローゼンクランツ領をそこらの領地より繁栄させる事が出来るだろう。

 急いては事を……とも言うし、あまり焦らずやっていこう。


「……ふむ。しかし、これをどうやって思い付いたんだ? とても、本を読んだだけでは思い付けないと思うのだがな?」

「まあ、話してしまってもいいですが、今のところはオレだけの秘密という事にさせてください」

「意地悪な息子だな」

「そう言わずに。いくらかそちらに回しますから、勘弁してください」

「……仕方ない。孝行息子だな、クロウは」

「おや、辺境伯は『お母さん』と呼ばれたいので?」

「まだそんな……いや、もう良い歳だが。貰ってくれてもいいぞ?」

「……考えておきます」


 イタズラに笑みを浮かべながら言う辺境伯に苦笑で返しておく。

 コルナート辺境伯……見た目は良いから旦那の1人や2人いるかと思ったんだが、独身なんだよな。

 これがほんとの独身貴族……。上手くないな。


「――旦那様。旦那様の計画書、隅々まで拝見致しました。所々、何かのマークが描かれていましたが、あれは?」

「ああ。マークが描いてある項目は、優先的に手配して欲しい項目だな」

「なるほど。では……この手動ポンプの作製を鍛冶屋に手配しましょう。あとは……これは、なんでしょう? 名前はわかりましたが、用途がわかりません」

「ん、どれだ?」

「こちらです」


 ライヤに計画書の該当箇所を見せてもらって、納得した。なるほど、確かにこれじゃわかりにくいな。失敗した。


 ライヤが指した箇所は遊戯道具の項目だった。

 オセロやチェスなんかのボードゲームが羅列してある。


「これはボードゲームだ」

「ボードゲーム……ですか?」

「文字通り、(ボード)を用いてやる遊戯(ゲーム)だな。とりあえず1個、見本を見せるか」


 どれでもいいのだが、この場には貴族階級の人間が多いので、ゲームでありながら戦術を学べるチェスにしよう。

 という事で、樹属性魔法で木製のチェス盤と駒を作り上げる。レベルは低いが、これくらいなら問題なくやれる。


「旦那様、これは……?」

「これがチェスだ。殿下や辺境伯もいるから、打ってつけだと思ってな。簡単にルールを説明するから、是非やってみてくれ」


 そうしてルールを説明していくと、みるみるうちに、クシャナ殿下とコルナート辺境伯の目にキラキラとした輝きが宿りだした。

 いや、いっそ煌めきと言っても差し支えないかも知れない。

 まるで、未知のオモチャを与えられた子供のような、そんな無邪気な瞳が2対……そこにあった。


「クロウ! 是非、是非私にやらせてくれ!」

「私もだ! 頼む、息子よ!」

「……まあ、テストプレイは必要ですから、構いませんが」

「よし。やろう、メリッサ」

「負けないぞ、クシャナ」


 嫁候補と寄親がチェスを挟んでソファに腰掛ける。

 これは……アレだな。満足するまで絶対に離れないし放さないヤツだ。


「……仕方ない。ライヤ、まずは手動ポンプの手配から頼む。設計図は……ほら、ここにあるから。早速鍛冶屋に持っていってくれ」

「……………」

「ライヤ?」

「――えっ? は、はい!」

「手動ポンプの設計図を鍛冶屋に、な」

「か、畏まりました。早速……手配、を……」


 釘付けである。

 ライヤの視線が、チェスに、釘付けである。

 堅物そうな見た目の割に、こういうものには弱いらしい。


「失敗したなぁ。……しょうがない」


 クシャナ殿下とコルナート辺境伯に続けてライヤまでもが使い物にならなくなってしまったので、仕方なく廊下に出る。


「誰かいないか!」

「――お呼びでしょうか、旦那様」


 虚空に向かって呼び掛けると、どこからともなくメイドが1人現れた。

 ……どこから現れたんだろう……。


「ああ。悪いが、ひとっ走り鍛冶屋に行って、この設計図を渡してきて欲しい」

「鍛冶屋ですね。畏まりました」

「悪いな。給金は弾むから、よろしく頼むよ」

「いえ。このくらいは業務の範疇ですので。それでは、行って参ります」


 メイドはそう言って頭を下げると、来た時と同じように消えるように去っていった。

 いや、というか、消えた。……どうなってんだ、この屋敷のメイドは。


「手動ポンプは手配した。ボードゲーム関係は……今はまだ封印だな。娯楽の少ない世界に、ああいうのを放り投げる事の恐ろしさを理解してなかったなぁ……」


 あの様子だと最低3時間はあの場から動くまい。

 オレだって、新しいゲームソフト買ったら3時間なんか余裕で消費してたし、最低でも……最低でもそれくらいは動かないだろう。


「なあ、クロウ」

「ん、どうしたシオン?」


 廊下で今後の情報開示に関して考えていると、執務室のドアの隙間からシオンが顔を出して、話し掛けてきた。


「暇だ」

「ああ……うん、ごめんな。いいよ。どうせ殿下達は動かないだろうし、デートでも行こうか?」

「デっ……!?」

「嫌ならいいぞ?」

「嫌、じゃない……けど……デートじゃないからな!」

「まあ、名目はなんでもいいんだよ。どこ行きたい?」

「んー……あ、じゃあ、騎士団だっけ? そいつらのとこ行きたい」

「そりゃまた、なんで?」

「や、なんか身体動かしたくてさ」

「なるほどな。それなら、行こうか」

「おう!」


 元気よく返事をしたシオンを連れ、通りかかったメイドに騎士団の詰所の場所を聞いてから向かう。


 ここに来る時は空の旅だったし、連中も体力有り余ってるだろうから、オレも訓練の相手して貰おうかな。

 それに、あいつらがどの程度の実力を持ってるのかってのも気になるしな。

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