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女になった相棒と行く異世界転生冒険譚  作者: 光月
女になった相棒と行く異世界転生冒険譚
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両手に華のアラクネ討伐道中


「私は何故ここにいるのか……」

「クロウに捕まったからだろ」

「ははははっ!」


 ソルダルから延びる街道。

 たまには魔法使わずに歩いて行こうぜ? とのシオンの提案により、オレ達はそこをゆったりと歩いていた。


「クロウ! 貴様という奴は、なんの権利があって私を連れてきたんだ! 私にだって、王城警備隊第3隊の部隊長として、上層部からの命令を遂行するという重大な役目が――」

「はいはい、そうですね。すみませんね」

「まったく反省してないではないか!」

「うるさいな……どうせ冒険者と同じ事しかしてないんだから、別に構やしねえだろ?」


 王城警備隊第3隊に通達された任務。

 それは、簡単に言えば『冒険者みたいに魔物を倒してレベルアップしてね!』というものだ。

 要は、冒険者として辺境のソルダルで生活しろという事なわけで、文句を言われる筋合いはないはずだ。


 ……拡大解釈?

 ははは……さあ、なんの事か……。


「貴様が何も話さずに連れてくるから怒っているんだろうが!」

「そうなのか、クロウ?」

「えー? ちゃんと話したぜ? 話したい事があるからついてきてくれ、って」

「話してないんじゃねーか」

「……あっ、中身か!」

「そりゃそうだろ」

「そっか、中身か。いやー、失念してたわ」


 そういえば、アラクネを討伐しに行くとか依頼に関する事はなんにも話して無かったなぁ。


「ま、というわけでフレイ。アラクネを斃しに行きます」

「……………」

「…………?」

「……いや、それだけか?」

「他に何を話せば……?」

「詳細を話せバカ者! アラクネなら貴様達だけで斃しに……アラクネ? アラクネだと!?」

「もう、ちょっと黙ってろクロウ。俺が話す」


 呆れたような表情でこちらを見てくるシオン。

 んー? そんな呆れられるような事したか?


「えっとな、フレイ。まず、俺達のところにヴァイスから依頼が来たんだ」

「……ヴァイスと言うと、ギルドマスターか。うん。なるほどな。それで?」

「うん。その依頼はアラクネを斃して欲しいってものだったんだけど、王都の向こうからの依頼なんだな、これが」

「ふむ……王都の……東側か?」

「そうそう。他に斃せる冒険者がいないからって、俺達に御鉢が回ってきたんだ」

「なるほど。うん、依頼については理解した。しかし、それでなぜ私はここにいるんだ?」

「それはクロウに訊いてくれ」

「クロウ。なぜ貴様は……貴様はどうして浮いているんだ?」

「え? あ、話終わった?」

「いや、依頼については理解した。だが、なぜ私は連れて来られたのだろうかと思ってな」

「ああ、その事か」


 別に、そんな大した理由があるわけではない。

 オレはそもそも転生者で、王国の地理と言えばソルダルとロクソール、あとは申し訳程度に王都くらいしか知らない。

 それに、移動には大体魔法を使って陸路の面倒事はカットしていたから、例えば、ソルダルと王都の間にある町や村の名前なんかは知らない。


 もちろんそれはシオンも同じだ。

 それに、シオンだってせいぜい自分が生まれた村からソルダルまでが頭の中にあるだけで、あとはオレと大差ない。


 たからつまり、フレイは道案内に最適なのである。


「なるほど。……帰る」

「待て待て待て待て。帰ったって暇だろ? 知ってるぞ、今日のお前は休養日だって」

「なぜ知っているんだ!」

「お前を拉致る前にレンカに会って聞いた」

「レンカ・ロスティ! 帰ったら覚えておけ……!」


 ぐぬぬ、とでも言うかのように、両手で握り拳を作って悔しそうにしているフレイ。

 ……まあ、本当は、第3隊の協力者として予定を把握出来てないと困るって事でレンカに教えておいてもらってただけなんだが。

 レンカに聞いたってのは嘘じゃないし、いいか。


「でも、よく東側ってわかったな? 俺達もヴァイスから聞いただけなんだけど」

「うむ。どういうわけか王都の東側……つまり、セストの辺りには、定期的に強大な魔物が棲みつくのだ。王都の学者達の間では、あるいはその辺りから魔物が発生しているのではないか、という見方もあるらしいが……」


 なるほどなぁ。

 定期的に棲みつく、のではなく、定期的に発生している、か。説得力はあるな。

 まあ、仮にそうだとしたら、じゃあなぜ定期的に発生しているのか、という疑問が残るが。


「ともかく、どうして私が有無を言わさず連れて来られたのかは理解した。まったく、それならそうと素直に言えばいいだろう?」

「……いや、有無を言わせない方が良いような気がして」

「どんな予感だ! 大体、私が貴様の頼みを断るはずがないだろう?」

「そうなのか?」

「そうなのだ」


 そうらしい。


「まあ、今後は多少の遠慮をしつつ問答無用で頼むとして、今は道案内を頼む」

「うむ、頼まれた。……む、どうしたシオン? そんなに私を睨んで」

「簡単に相棒は渡さねえ……!」

「フッ……では、しっかりと掴まえておく事だな」


 バチバチとシオンとフレイの間で火花が散ってるように見える。

 だから、オレはまだ誰のものでもないんだけどなぁ……。まあ、相棒であるシオンのものと言えない事もないような気がしないでもないが。


「……アラクネ。どんななのかな……」

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