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女になった相棒と行く異世界転生冒険譚  作者: 光月
女になった相棒と行く異世界転生冒険譚
30/73

無詠唱魔法の教え子


 ギルドマスターの部屋……もう面倒だから執務室でいいか。

 執務室にランバートと一緒に上がると、ランバートはすぐに通信用魔導具を使って王城に連絡をとった。


「おっし。これで後は待ってりゃ迎えが来るぜ」

「世話になるな、グランドマスター」

「構わねえよ。ヴァイス先生んとこの秘蔵っ子だからな」

「グランドマスター。その『ヴァイス先生』って誰なんだ?」


 大体の予想は出来る。

 出来る……が、どうせならこの予想は外れていて欲しい。

 いやほんとマジで。


「ヴァイス先生と言やあ、無詠唱魔法のヴァイスだよ。ほら、今はソルダルでギルドマスターやってる、あのヴァイスだ」


 やっぱりかぁ……。

 いや、なんか共通する点が多いなーって思ってたんだよ。まさか本当に本人だったとは……。


「先生ってのは、なんなんだ?」

「俺だけじゃねぇんだが、ヴァイス先生に無詠唱魔法を教わった奴らがいんのさ。まあ、結局誰も習得出来なかったがな」

「そうなのか」

「まあ、俺は元々魔法は得意じゃなかったんだが、魔法が得意な奴もダメだったからな。あれは多分、エルフみたいな長命の奴しか扱えねえんだろうよ」

「ふーん……?」

「へえ。でもクロウはよくやってるよな、詠唱なしで魔法使うの」

「なんだと……!?」

「……シオン、そこは黙っとくところだろ?」

「……そうなの?」


 すっとぼけた顔でこちらを見つめるシオン。

 ああ、いや、これはマジでわかってないヤツだ。

 グランドマスターでも出来なかった事が冒険者になって数ヶ月の奴に出来るなんて、顰蹙買うわ。


「クロウ! お前、無詠唱魔法が使えるのか!」

「あー……まあ、うん、一応?」

「一応じゃないだろ。普段の戦闘の時なんか、詠唱が煩わしいって言って無詠唱ばっかじゃねえか」

「シオン……」

「なんだよ。間違った事は言ってないだろ?」


 間違ってないけど!

 でも今は間違ってない事が問題なの!


「お前……本当に無詠唱魔法が使えるのか……」

「いや、あの……うん、まあ、うん……」

「ヴァイス先生に教えて貰ったのか……?」

「山奥で師匠に教えて貰ったんだよな。……いや、教えて貰ったのは基本的な魔法だけだっけ」


 その設定よく覚えてたなあ、シオン。

 口から出任せのテキトーな設定なのに。オレも今の今まで忘れてたわ、HAHAHA。

 まあ、ここまで来たらむしろ隠すのは悪手だし、大丈夫な部分まで公開するか。


「いやまあ、魔法や武器の扱いとか格闘術は師匠がいるんだが、無詠唱魔法は自前だ」

「ど……」

「ど?」

「どうやって、どうやって使えるようになったんだ! 教えてくれ! 頼む、この通りだ!」


 がばっ、と勢いよく頭を下げるランバート。

 そんなに無詠唱魔法が良いのか……魔法得意じゃないって言ったのに……。


「……まあ、教えるのはいいんだが」

「本当か!?」


 今度は勢いよく顔を上げるランバート。

 いや、そんな食い付かんでも……。


「でも、グランドマスターは魔法は得意じゃないんだろ? 無詠唱魔法なんか習得してどうしたいんだ?」

「……言っても、笑わないか?」

「……確約は出来ないな。余程滑稽な理由でもないなら別に笑わないと思うが」

「まあ、とりあえず言ってみてくれよ、グランドマスター」

「おう……。いや、実はよ、ヴァイス先生の門下は今でも交流があんだ。もう30年になるがな。ちょくちょく会ったりもしてるんだが……無詠唱魔法を習得したんだって、威張りてえんだ」

「なんだ、そんな事か」

「そ、そんな事?」

「そりゃ、『そんな事』だろ。新しい知識や技術をひけらかしたい、なんて、健全過ぎる欲望だしな。……それで、ヴァイスはどう教えてたんだ?」


 ランバートの欲望は理解したが、無詠唱魔法を教えるにあたっては、前任者であるヴァイスが何をどう教えていたのかを知りたい。

 場合によっては補足説明するだけで済むかも知れないしな。


「それがな……ヴァイス先生は、想像力が大事だって事くらいしか教えちゃくれなかったんだ」

「……………」


 頭痛くなってきた……。

 いくら面倒だからって、自分の教え子にする説明まで省きすぎだろう。

 まあ、一応的外れではないだけ救いがあるのは確かだが、それにしたって説明しなさすぎだ。


「……わかった。じゃあまず、基本的なところから順を追って説明しよう」

「おう、頼む」

「グランドマスターは、どうして詠唱をする必要があるのか、って考えた事あるか?」

「……いや、ねえな」

「そうか。まず、この詠唱ってヤツは、想像を補う意味が強い」

「想像を……補う?」


 魔法は、普通は詠唱をする。

 では、例えば、槍の形をした炎とか、盾の形の水とか、そういうのはどうやってその形を成しているのかと言うと、魔法発動者の頭の中にあるイメージをそのまま投影しているのだ。

 じゃあ、想像力が豊かなら、好きな形を作れるじゃん! なんて考えてしまうが、残念ながらそうではない。

 いくらイメージを投影しているとは言え、無詠唱で魔法に好きな形を取らせるのは、相当な技術を要する。

 だから、それで上手くいかない部分を補うために、詠唱をして、イメージをより現実に近付ける事で、魔法の発動を簡単なものにしているのである。


 ちなみに、この説明は『今日から始める無詠唱魔法 ヴァイス・エルサーディア著』から引用したものである。

 ソルダルの図書館で見つけた時は、そりゃあ驚いたもんだ。


「つまり、想像力と技術力さえしっかりしてりゃ、無詠唱魔法が使えるって事か?」

「理論上はそうだ。難しいのが難点だが」

「……どうすりゃいいんだ?」

「まずは、魔力を知覚するところからだな。魔力は自分が持ってるのとは別に、大気にも漂ってるんだ。まあ、大気中の魔力は今は関係ないが」

「魔力を知覚? 魔法使いなら、そんな事は朝飯前だろ?」

「ある程度実力のある魔法使いなら、確かにそうだろうな。ただ、オレが言ってるのは、肉眼で魔力を認識出来るか否かの話だ」

「肉眼で……? そんなの出来るのか?」

「出来る。人の持つ魔力には色があるから、それを見る事が出来るようになれば、第一段階はクリアだな」

「色か……」

「この色は、その人の適性も表す。例えば、火の魔法に適性があれば赤だし、雷に適性があればライムグリーンの色を帯びる」

「お、俺はどうなんだ?」

「それはグランドマスター自身が詳しいだろう。だが、魔力は……そうだな、赤と茶の色がある。火属性と地属性に適性アリだな」


 ゆらゆらとオーラのように揺らめく魔力を見ながら言うと、ランバートは驚いたように目を見開いた。

 どうやらアタリのようだ。


「で、問題はどうすれば魔力を肉眼で見れるようになるかって話だが……」

「あ、ああ、どうしたらいいんだ!?」

「まず、魔力を自由自在に動かせるようになる事だな。これは、魔力を動かすってのを意識してやってれば、そのうち出来るようになる」

「……どれくらいかかるんだ?」


 どれくらい……?

 うーん……まだ誰にも教えた事がないから、ちょっとわからないな……。

 まあでも、3ヶ月もあれば魔法が苦手でも大丈夫だろ。たぶん。


「ま、3ヶ月くらい毎日続けてたら大丈夫なんじゃないっすかね」

「な、なんでそんな適当な感じなんだ……!」

「いやぁ、こんなの教えるの初めてだし、加減なんかよくわからんしなぁ……。まあ、続けてればそのうち出来る。うん、たぶん」

「クロウ……せめて断言してやれ……」

「いやまあ、そのうち出来るから、マジで。それが出来れば、自然と魔力を見る事も出来るようになってる」

「そ、そうか……」

「そうすると後は無詠唱魔法を使うだけなんだけど……まあ、これは魔力が見えるなら出来るはずだ。言うほど難しくないし」

「……コツみたいなのはないのか?」

「ないではないけど、グランドマスターはその前段階がまだだからな……。魔力が見えたら、ヴァイスを通じて連絡くれればまた教えるよ」

「そうか……。ま、やれない事は1つずつ潰していかねえとな」


 うんうん、と頷くランバート。

 ま、腐っても鯛っていうか、グランドマスターだし、そういうのはきっちり順序だててやるだろうな。

 ……待てよ?

 無詠唱魔法を使う段になったらヴァイスに任せても……いや、最後まで面倒見よう。


 そういや、迎えって誰が来るのかね。

 王城勤めの騎士達かな?

 あるいは……王様が直接来たりしてな!

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