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相棒との出会い

1話目である『はじめまして異世界』において

銅貨1枚あたり10円としていたのを、100円に変更しました


変更理由ですか?

いや、そっちの方が都合が良いなぁ、って……


 上空から確認してみると、街道は結構近くにあった。

 求めていたものが見つかったので地上に降りて街道まで一直線に歩き、街道に出ると、その先に街らしきものが見えた。

 とりあえずそちらに向かって歩いていくと、出入りに使う門が見え、門の外には鎧を身に纏い、槍を持った男が二人立っていた。


「止まれ。ギルドカードを提示しろ」


 門のそばまで来ると、向かって右側の門番がそう言ってきた。

 ギルドカード……ギルドカードか。種類まではわからないが、ギルドがあるってなると、一気に異世界転生感が出てくるなぁ。

 いやぁ、ワクワクしてきた。……っと、それより、ギルドカードだよな。そんなもん、アイテムボックスの中にも無かったんだよなぁ。


「や、すまん。ギルドカードは持ってないんだ」

「そうなのか? なら、他に何か身分を証明出来るものは?」

「いやぁ、それもないなぁ」

「なんだと……?」


 オレが答えると、門番の二人が一気に怪しいものを見る目になって、こっちをじろじろと睨み付けてくる。


「……本当にないのか?」

「ああ、ない。だから、まあ、なんだ。仮の身分証とか貰えないか?」

「まあ、持ってない奴には発行出来るが……銀貨1枚だぞ」

「金はあるさ。だが身分証は無ぇ」

「なんだそりゃ? お前どっから来たんだ?」

「山奥……だなぁ。いやな、オレの剣術と魔法の師匠って奴が、これまたとんでもなく卑屈な人間でな? 『俗世のもんなぞ必要ない』とか言って、生まれて今まで稽古三昧修行三昧よ。だからギルドカードは無いし、身分証もない。持ってる金は師匠に最低限持っとけって渡されただけだ」

「……お前、歳は?」

「18だけど……」

「そうか……苦労したんだな……」


 門番二人の目が、急に憐れみを含んだものに変わる。

 な、なんだ……? 18で今言ったような境遇だと、同情されるのか?


「お前、名前は?」

「クロウだ」

「苦労してそうな名前だな……」


 上手い事言ったつもりか。ドヤ顔すんな。


「よし、クロウ。今から仮身分証を発行する。費用はさっきも言ったが、銀貨1枚だ。こいつは3日間は有効だが、それ以上滞在しようと思ったらギルドに登録した方が良い。もしも4日目以降を仮身分証のまま過ごしたら、1日滞在につき銀貨1枚の罰金が発生するから気を付けろよ」


 そう言いながら、右側の門番が『仮身分証』とこの世界の言葉で書かれた白い紙を懐から取り出し、渡してきた。

 オレはそれを受け取りつつ、アイテムボックスからだした銀貨1枚を渡す。


「確かに受け取ったぜ。ギルドの場所は、教えるか?」

「ああ、頼むよ」

「よし。まず、ギルドには色々ある。冒険者ギルド、商業ギルド、魔法使いギルド、錬金術師ギルド、鍛冶ギルド、魔導具ギルドだ。腕に自信があるなら冒険者ギルドに。商売がしたいなら商業ギルド。魔法使いを目指すなら魔法使いギルドだし、錬金術が得意なら錬金術師ギルド。鍛冶に興味があれば鍛冶ギルド。魔導具を作りたいなら魔導具ギルドだな」

「……じゃあ、冒険者ギルドだな」

「おっ、腕っぷしに自信ありか。まあ、ギルドまでの道はそう難しくない。ここから真っ直ぐ行くと、噴水がある広場に出る。そこに着いたら、2つの剣が交差してる看板を見つけな。そこが冒険者ギルドだ」

「わかった。……そういえば、ギルドの掛け持ちってのはありなのか?」

「ああ、問題ないぜ。どのギルドに所属するのか、掛け持ちするのか、しないのか。それはそいつの自由だ」


 なるほど。自信がある分野が複数あれば、掛け持ちしてしまうのもありなのか。

 とりあえず行くか。交差する2つの剣の看板を目指して、いざ行かん!


「ありがとう、助かったよ。あんた、名前は?」

「俺はラッソー。こっちは同僚のネルト。専らここの門番だ」

「ネルトだ。よろしく」

「ああ、こちらこそ。専らって事は、いない時もあんのか?」

「俺達は警備隊だからな。治安維持も仕事のうちなのさ」

「……大変そうだ」


 門から見える街並みを見ながら言う。

 この門から続く道はメインストリートなのか、人の往来が激しい。店も建ち並んでいて、商店街を思わせる。


「まあな。でも、やり甲斐はあるぜ」

「そうか。ま、頑張ってくれ」

「おう。とりあえず……ようこそ、ソルダルの街へ。俺達はお前を歓迎するぜ」


 ニカッと笑いながらラッソーが言う。

 ははーん? 少し強面だが、このラッソー、仕事熱心で根は良い奴と見た!

 こいつの同僚だし、ネルトも悪い奴ではなかろう。仲良くする事にしよう。


 ラッソーとネルトに別れを告げてメインストリートを行くと、25メートルほど歩いたところで噴水のある広場にでた。

 どうやら、ここがラッソーの言っていた広場のようだ。

 ぐるりと周りを見回してみると、噴水を挟んで左斜め前に件のギルドを見つけた。

 広場で人の往来がかなり激しいのか、それを目当てに展開されている食い物の屋台に後ろ髪を引かれながら、冒険者ギルドのドアを開けて中に入る。


「……………」


 冒険者ギルドの中に入ると、まずはそこにいた冒険者達の視線を浴びた。きっと、今度はどんな奴が入ってきたのか気になったんだろう。まあ、こっちを見てない奴もいるが。

 視線が外れないあたり、オレが見慣れない顔だから見続けてるんだろう。

 うーん……絡まれないといいんだが。


 冒険者ギルドの内部は、入り口から正面に行ったところに受付カウンターがあり、多数の冒険者を捌くためか、3人の受付嬢が座っているのが見える。

 受付カウンターの右側には階段があって、どうやら上階へと続く代物らしい。

 入り口の左手側には酒場のようになったスペースがあり、丸テーブルがいくつかあって、テーブル1つにつき椅子が4つ設置されている。

 逆に右手側には、壁に掲示板のようなものがあって、何かが書かれた紙が貼り付けられている。AとかDとかFとか書いてあるのを見るに、恐らくあれは依頼書を貼り付ける掲示板だろう。前世で読んだ異世界転生モノのラノベにそういう描写があったし、きっとそうだ。


 さて、とにもかくにも冒険者として登録しなければな。

 受付カウンターまで歩き、受付嬢に


「冒険者登録したいんだが」

「冒険者登録したいんだけど」

「……ん?」

「……え?」


 オレの後から来たのだろう、同じ受付カウンターの受付嬢に同時に話し掛けていたのは、オレと同い年くらいの金髪に蒼い眼の男だった。

 身長はオレのこの身体が184cmだから、彼の身長は大体160後半くらいに見える。

 まだ少し幼さが残っているが男らしい精悍な顔立ちをしており、『勇者って言ったらこういう奴だよなぁ』なんて思ってしまったくらいだ。

 軽そうな革鎧を身に纏い、腰には直剣を佩いている。ロングソードほどの長さはないから、ショートソードだろう。


 この時のオレは、まさかこれが本当に運命の出会いになるだなんて、思いもしなかった。


「わ、悪い! 横入りしちまった!」

「別に謝る事じゃねえだろ? こういう事だってあるさ」

「そ、そうか?」

「まあ、いいさ。お姉さん、こいつの手続きからしてやってくれ」


 受付嬢の犬……いや、狼の獣人に言うと、彼女は『良いの?』と訊いてきた。

 そういえば、この世界では獣人は受け入れられてるんだな。これは、エルフとかドワーフにも期待出来そうかな?


「別に手続きが前後したって困らないし、先にやってやって」

「優しいのね。じゃあ、そっちの金髪の子。この書類に必要事項を書いて」

「あ、ああ」


 受付嬢がカウンターの下から1枚の書類とインクとペンを取り出してカウンターに置いた。

 書類には、名前、年齢、職業を書く項目があった。職業……職業ってなんだ? ロール――RPGなどでプレイヤーに割り当てられる役割――の事なのか? 戦士とか、盗賊みたいなヤツ。


 金髪の彼はペンを取ると、すらすらと書類に書き込んでいく。

 ふむふむ。やはり職業の欄には役割(ロール)を書けばいいんだな。

 オレの場合は……なんだろう。普通に剣士かな? 武士とか浪人とか書けないもんな。そんな職業、この世界には絶対に無いだろうし。


 必要事項が記入された書類を持って受付嬢が奥の方に行くと、しばらくして、大きめのスマホくらいのサイズのカードを持って帰って来た。

 カードは緑色をしていて、受付嬢は金髪の彼にそれを『これが貴方のギルドカードよ。無くしたら再発行に銀貨5枚かかるから、注意してね』と言っている。

 銀貨5枚……天照サマの話によれば銅貨1枚で100円相当らしいから、銀貨5枚で5000円か。そんだけあったら携帯ゲームのソフトが1本は買えるな。中古品とかなら2本くらいか?


「じゃ、そっちの君も書類書いてね」


 そう言って新たな書類を出す受付嬢。

 ペンを取って書類に必要事項を記入すると、金髪の時と同じように、一度奥に引っ込んで、緑色のカードを持って帰って来た。


「はい、これが君のギルドカード。2人とも、説明は必要?」

「ああ、頼む」

「頼む」

「うん。まず、冒険者にはランクがあるの。一番上はSで、一番下がFね。ランクによってギルドカードの色が変わるんだけど……まあ、これはランクアップした時にわかるから、割愛しちゃうわね」

「ふむ……」

「ギルドに来る依頼は、SランクからFランクまで、難しい順に並ぶわ。でもSランクの依頼は指名依頼だけだから、貼り出される事はないわね。で、このランクは冒険者ランクと連動してて、FランクならFランクの依頼しか受けられないの。Eランクからはちょっと変わって、自分と同じランクと1つ上のランクの依頼を受けられるわ。覚えておいてね」

「ああ」

「わかった」

「それから、上位のランクに上がる時……えっと、DからC、CからB、BからA、AからSに上がる時にはランクアップの為の試験があるから、一応覚えておいてね」

「Dから上にはランクアップ試験が付きまとう、と」

「ええ、そうよ。それから……そうね。固定のパーティを組む時には、別途書類を提出する必要があるわ。依頼を1つクリアするまでのパーティなら書類なしで大丈夫よ」

「パーティか……」


 しばらくはソロで活動したいが、別にパーティを組んでるからってソロ活動しちゃいけないわけじゃないだろうし、組むだけ組んでみるのも一興か。


「……あ、そうそう。ギルドカードの説明もしなくちゃね。今渡したギルドカードは、身分証にもなるし、自分のステータスを確認する事も出来るの。ギルドカードを持って『オープン』って言うだけでステータスの確認が出来るわ。名前とレベルと年齢、職業、ステータス、スキルが確認出来るの」

「へぇ……」

「そうなのか」

「ちなみに、そのステータスは自分にしか見えないし、他人のギルドカードを持ってても身分証明には使えないわ。あと、基本ステータスはSからFのランク表示で、スキルはスキルレベルが1から10までの数字表示で表示されるわ。説明する事はそれくらいかしら……。何か訊きたい事はある?」


 訊きたい事……訊きたい事かぁ。

 あ、そうだ。アレ、一応訊いておこう。


「じゃあ、1つ。さっきチラッと話に出た、指名依頼ってのは?」

「指名依頼はCランクから受ける事が出来る依頼ね。普通、依頼って言うのは、依頼主がギルドで手続きをして掲示板に貼り出されるんだけど、指名依頼は依頼主が依頼を受けて欲しい冒険者を指名して依頼するの。特殊な依頼って扱いになるから、貼り出される依頼よりも報酬が良いわね」

「なるほどな……」

「あ、じゃあ、俺からも1つ」

「いいわよ、何?」

「オススメの宿ってどこ?」


 宿……ああ、宿。宿か!

 しまった、すっかり失念していた……。

 そうだよな。冒険者なんだし、どうせこの街を拠点に動く事になるんだから、宿は取っておかないとダメだよな……。

 よくやった金髪! よくぞ思い出させてくれた! ありがとう金髪!


「オススメの宿かぁ……。どんなところが良いの?」

「そうだな……」

「メシの美味いところが良い。多少値が張っても良い」


 幸い、アイテムボックスには天照サマの温情で金銀銅貨が結構な量入ってるからな。

 せっかくだからメシの美味い宿が良い。


「ご飯の美味しいところなら、黄昏の水面亭が一番ね。女将さんも優しくてサービスも良いから、高くても構わないならオススメよ」

「黄昏の水面亭か……。ありがとう、行ってみる」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

「……なんだ?」


 受付カウンターを離れて外に向かおうとしたら金髪が呼び止めてきた。なんなんだ?


「俺、シオンって言うんだ!」

「ああ、知ってる。さっきお前が書類に書いてるの見たからな。オレはクロウだ」

「なあ、クロウ。俺とパーティを組んでくれないか? いきなりで不躾だとは思うけど……どうだ?」

「……パーティ自体は別に構わないが、なんでオレなんだ?」

「うーん……上手く言えないんだけど、なんとなくお前とパーティを組んだ方が良い気がするんだよ。なんでかはわかんないけど」

「ふぅん……?」


 まあ、既に冒険者として登録してる奴らのパーティに入ったりするよりは、同じタイミングで冒険者になった奴とのパーティが安全か。

 見た感じ、シオンは盗みとかしても隠し通せるタイプには見えないし、多分駆け引きとかも苦手だろう。

 ……しょうがない。言ってみればこいつは同僚だしな。もしこいつが他の冒険者の毒牙にかかったらとか考えると寝覚めが悪そうだし、パーティ組んでやるか。


「ま、いいか。お姉さん、書類頼むよ」

「はぁい。ちなみに、私の名前はレインね。レインちゃんとか、レイン姉さんとかって呼んで」

「……ま、考えとくよ」


 狼獣人の受付嬢ことレインの取り出した書類には、パーティ名とパーティメンバーを書く項目があった。


「パーティ名か。……どうする?」

「金銀同盟!」

「……お前とオレの髪の色ってだけだろ。つまらんから却下だ」

「なんだとぉ……? じゃあ、そうだな……紅蒼同盟! どうだ?」

「そりゃ瞳の色だろ。あと、『同盟』をやめてくれ。破棄されそうだ」

「白黒同盟!」

「だから同盟から離れろってば! それから、それは着てるもんの色だろ!」

「凸凹コンビ!」

「見たまんまじゃねえか! 自虐ネタはやめろ!」

「背比べ、とか」

「比べるまでもなくオレが勝ってる」

「……うーん」


 パッと出るネタは尽きたのか、いよいよ腕を組んで考え始めるシオン。

 そうそう、そうやって真面目に考えてくれよ。オレも頑張るからさ。


 にしても、パーティ名か……。

 オレ、前世がそうだったけど、名前付けるってなるとメチャクチャ悩むんだよなぁ……。

 うーん……何が良いんだろう……?


「んあー……! 思い付かねえ!」

「放り投げんなよ。レイン、なんか良い案ってないか?」

「ボケとツッコミ」

「いや、だから、そりゃ見たまんまだろって」

「冗談よ。んー、そうねえ。二人とも剣士なんだから、『黄昏の双刃』とかどう?」

「よし、採用」

「えっ。いいのか、クロウ?」

「いいよ、別に。オレも思い付かないし、お前も無理だろ」

「まあ……うん……」

「それに、これから黄昏の水面亭に世話になるんだし、パーティ名と使ってる宿の名前で、オレ達が活躍した時に覚えが良くなるはずだ」

「あー、なるほど!」

「というわけで……」


 ペンで書類のパーティ名の部分に『黄昏の双刃』と書き、パーティメンバーの部分にオレとシオンの名前を書いておく。


「よし。レイン、受理よろしく!」

「はーい。じゃあ、あとは私が手続きしておくから、もう行っていいわよ」

「そうか? なんか悪いな」

「そういう仕事だからね。あ、そうそう。黄昏の水面亭は、ここを出て左手すぐの道を10メートルくらい行ったところにあるわ」

「お、そっか。ありがとう、レイン」

「どういたしまして」

「よし。じゃあ、行こうぜ、クロウ」

「ああ、行くか」


 シオンと共にギルドの外へ出る。

 異世界転生モノのラノベみたいに、他の冒険者に絡まれなかったのは幸いだったなぁ。視線は感じてたけど、害意はなかったし、良かった。

 さて、黄昏の水面亭か……。どんな宿なんだろうな……?



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