現実≠≒=地獄
動画サイトは面白い。
俺はゲームのライブを見るのが好きだ。
ゲームは自分で遊ぶのも楽しいけど、俺の知らない海外のゲームをライブしてくれるのとかすっごく楽しい。
お、知らないゲームをやってる人がいる。
おじゃましまーす。
・・
・・・・
ジェミニ「実況中です。見に来て下さい・・あ、こんにちは。」
俺の訪問に気付いたのか、向こうが挨拶してきた。
俺も返事をする。
こんにちは初見です
ジェミニ「初見さん初めまして。ゆっくりしていってくださいね。」
女の子の綺麗な声だ。
これは当たりかな?
いい実況者だと知らないゲームでも楽しめる。
見たところ古いゲームなのかな?3Dだけど画面が粗いや。
その代わり大勢のキャラや車がリアルに動いている。
現実みたい・・と思ったら、タイトルが”リアルゲームをやってみた”だった。
ネットで検索したけど、そういうゲームは見つからなかった。映画や小説ならあったけど。
ちょっと聞いてみるか。
リアルゲームってなんですか?
ジェミニ「リアルゲームというのは、現実で遊ぶゲームのことです。」
ジェミニ「なんでもできますよ。リク(リクエスト)ありますか?」
んー、これはデジタルゲームだし、現実らしさを追求したゲームってことなのかな?
リクエストか・・銀行強盗・・はダメだよな。
ま、とりあえずこれかな。
交差点でダンス
ジェミニ「それくらい簡単♪」
ジェミニさんのアバターが横断歩道で楽しそうに踊る。
周りの人たちがそれを横目で見ながら通り過ぎる。
注目を浴びる行動をするとモブが見てくれるのか。結構楽しい。
ジェミニ「こんなに楽しいのにひとりしか来てくれなーい!実況中ですよー。」
無名だとよくある。
実はこっちもちょっと気まずい。
ジェミニ「あ、警察!逃げますね!」
ジェミニさんのキャラが路地裏を駆け抜ける。
まぁ交差点でダンスしてたら怒られるよな。交通妨害だし。
逮捕されてもおかしくない。
ジェミニ「ふー逃げ切りました。でも楽しかった♪」
現実っぽいゲームだってことがわかった。
これは期待。
ジェミニ「ちょっと喉が渇いたから飲み物買って来ますね♪」
走り回ったら喉が渇く・・その機能は必要か?
面倒な機能はいらないと思うんだけど。
・・これがリアルを追求した結果か。クソゲー間違いなし。
ジェミニ「お茶とジュースどっちがいいかなー?」
これはコメントせざるを得ない。
おしるこ期待
ジェミニ「・・わーん、もっと喉乾いちゃうよぉ。」
そう言いつつ、おしるこ買ってくれた。
ノリいいね。
ジェミニ「熱いおいしい熱いおいしい熱いおいしい。」
いいね!
ジェミニさんいいキャラだ。
ジェミニ「むー絶対許さないからー。」
ジェミニさんは、缶にドクロマークを描いた。
結構細かいなこのゲーム。
壁に落書きとかできるんだろうけど、小さな物にも描けるのか。
・・メモ帳とかも使えるってことなのかな?
あっ、やばいタイムセールの時間だ!
買い物あるので落ちます
ジェミニ「えー。また見に来てね♪」
はーい
俺は見るのをやめて、買い物へ出かけた。
もっと見たかったな・・もし買い物から帰ってもやってたら、続き見ようかな。
・・
・・・・
買い物から帰る途中、空き缶を見つけた。
・・その缶に、ドクロマークが描いてあった。
ふと、ジェミニさんがゲームの実況中にドクロマークを描いていたのを思い出した。
・・まさかな。
俺はありえない予想をしながら家に帰った。
そして・・ジェミニさんは、まだ実況中だった。
ジェミニ「また来てくれたんだ。ありがとう嬉しい♪」
透き通った綺麗な声。
ジェミニ「他に誰も来ないから、あなただけのために実況するね♪」
それはそれで嬉しいけど・・一応聞いてみた。
さっきドクロマークの描かれた空き缶があったよ。
ジェミニ「うん、私が置いたの♪」
いやまさか。
話を合わせてくれただけだよな。
ジェミニ「あれー、信じてないな。」
そりゃまぁ・・
俺の個人情報どこで知ったの?
ジェミニ「ちょっとアカシックレコード調べました♪」
なんという嘘臭さ。
でもこういう適当なのもライブならではだよね。
ジェミニ「じゃあ強盗しまーす。」
いきなり強盗?
これは期待!
ちょっと煽ってみた。
ま、ゲームだし。
ジェミニ「ありがとうがんばります!応援よろ~」
ジェミニさんは近くの民家に突撃した。
ジェミニ「金を出せ!」
住人「・・は?」
寝っ転がってテレビを見ている男と、かわいい女の子の姿をした強盗。
異様としか言いようがない。
住人「え、なに?キミ誰?」
ジェミニ「強盗です♪」
住人「はあ。」
ジェミニさん素手やん。
しかもかわいい女の子の姿してたらそりゃ”はあ”ってなるだろうな。
ジェミニ「ビンタ!」
ぺちん。
かわいい音がした。
住人「なんだこいつ?ガキだからってふざけんなよ!」
ジェミニ「キャー♪」
住人「・・ふーん、かわいいじゃねえか。不法侵入で警察に通報されたくなかったらオレの言うこと聞けよ。」
ジェミニ「えー言うことって?」
住人「おや、もしかして最初からそのつもりだったのか?なら話が早い。脱げよ。」
ジェミニ「どうしよっかなぁ♪」
住人「手間かけさせんなよ!」
ジェミニ「やだー♪」
・・粗いポリゴンでこんなん見せられて俺はどうすればいいんだ?
なんだこのゲーム。
ドンドンドンドン!ドンドンドンドン!
警察1「警察ですが、女性を無理やり連れ込んだという通報がありまして。どなたかいませんか?」
警察2「ドアが開いてる。」
がちゃ。ドアが開いた。
警察1「すみませーん、どなたかいませんか?」
ジェミニ「た、助けて下さい!」
住人「ちょ、ちょっと待てよ!」
警察1「はい動かないように。キミ大丈夫だったかい?」
ジェミニ「怖かったです・・あの人が家に来いって無理やり・・」
警察1「・・もう大丈夫だ。辛かっただろう。」
警察2「はい大人しくして。両手を前に出して。」
住人「だ、だからオレは違くて・・」
警察2「言い訳は署でゆっくり聞こうか。」
住人の男とジェミニさんは警察署へ行くことに。
ジェミニ「次は警察編。楽しいよ♪」
わけがわからない。
こんなゲームがあったのか。
画像は粗いけどリアルでありそう・・なことをイベント化したのか。
誰得だろうか・・
僕は見るのをやめることにした。
落ちます
ジェミニ「おつです。また見てくださいね~♪」
面白いチャンネルってわけじゃなかったけど、なんか変なリアルがあった。
ゲームっぽくないというか、いやゲームなんだろうけど・・
インディーゲームなんだろうか。
そういえば・・俺しか視聴者いなかったな・・
・・
・・・・
次の日、ネットを見ていてふと気になるニュースがあった。
”女性を自宅へ連れ込みわいせつな行為をした男を逮捕”
”男は、女性が自宅へ強盗に来ただけで何もしていないと不明瞭な供述をしており・・”
いや偶然だろうけど、昨日の出来事とは違うよね?
あれはゲームの話だろうし・・
・・気になる。
俺は携帯から動画サイトを覗いてみた。
・・・・ジェミニさんはライブ中だった。
ちょっと覗くだけだから。ちょっとだけだから。
ジェミニ「遅いです。ずっと待ってたんだから!ぷんぷん!」
入るなり遅い人呼ばわり・・俺のことだよね?
こんにちは
ジェミニ「こっんにっちは♪今日も楽しんでいってね♪」
ジェミニ「リクあればどんどん書いていいですよ♪」
・・昨日の聞いてみるか。
昨日の逮捕された男ニュースになってなかった?
ジェミニ「いえーい!」
答えになってないし。
ジェミニ「ゲームなんだし何してもいいんだよ♪」
ゲームなら・・ローカルの中で完結するならそうかもな。
ジェミニ「視聴者さんも参加してみます?」
参加?
ふとゲーム画面を見て思った。
ここ・・見覚えがある。
近所だ・・
ジェミニ「もう少しであなたの家に着きます♪」
俺は携帯を持って窓から外を見てみた。
・・ジェミニさんが・・ゲームのアバターをリアルにした女の子が歩いていた。
ジェミニ「あ、視聴者さんはっけーん♪」
現実のジェミニさんが、窓の向こうにいる俺を見つけて手を振る。
携帯の向こうでも同じように手を振っている。
現実のジェミニさんが・・にやりと笑った。
ジェミニ「一緒に遊びましょう。」
ジェミニさんは妖しげな顔をして玄関へ向かう。
携帯のキャラは無表情のまま・・
ピンポーン。
チャイムが鳴った。
ジェミニ「しっちょおっしゃさーん、あっそびっましょー♪」
携帯と現実でデュアルに声が聞こえる。
落ち着け。落ち着くんだ。
こんなことありえない。夢か・・なにかの間違いだ。
ピンポーン。
ジェミニ「勝手に入るよー。」
い、嫌だ!
来ないで!
俺は急いでコメントした。
入ってきたら・・俺もゲームの世界に連れてかれる・・?
ジェミニ「えー楽しいですよ・・一緒に遊びましょう♪」
なんでだよ。なんでこんなことになるんだよ。
俺がなにをしたというんだ。
俺が悪いのか?
俺があんなことしたから・・・・
家の中に散乱する山形県。
液状になったドライアイスがそこらかしこに散見されている。
俺が悪いんじゃない。みんな土星から来た火星人が悪いんだ。
あいつらは惑星直列を3時間周期で並列処理するという愚行を16分単位で行っている。
俺のどこに非があるのか。
ジェミニ「ゲーム楽しいわ。一緒にゲームやりましょう。」
俺は騙されないぞ!
ドアを開けたら正体を現すつもりだろう。
俺はお前の正体を知っている!
現地集合おやつは615円まで(税込み:税率23%)
ジェミニ「大丈夫だよ。怖くないよ。さ、こっちにおいで・・」
嘘だ!
俺をゲームの世界に引きずり込むつもりだろう!
ジェミニ「こっちが現実だよ。そっちは現実じゃないよ。」
・・は?
そんなバカな!?
俺は後ろを振り向いた。
そこには・・広大な世界があった。
自宅にいたと思っていたのに・・
ジェミニ「そっちは地獄だよ。こっちに来よう♪」
・・いやだ!
俺のいるべき場所はそっちじゃない。
絶対にだまsれnいからな!
俺は広大な世界へ駆けだした。
そうだ、俺は新しい人生を歩むんだ。
今までの間違った人生とはさよならして・・
ジェミニ「・・罪からは逃れられないのよねぇ・・」
・・
・・・・
町があったから入ってみた。
ははは、ゲームっぽくて楽しそうじゃないか。
武器屋があって、道具屋があって、宿屋があって。
?「お、お前大丈夫だったか!?心配したんだぞ!」
え?誰?
鬼柳「・・まさか記憶喪失か?友達の鬼柳だよ。」
俺に友達なんて・・あれ、どうだったかな・・
いたような、いなかったような・・あんなやつ友達じゃなかったような・・
鬼柳「お前が町を襲った盗賊に復讐すると言って出て行ってから一週間か・・とにかくお前が無事でよかった。」
盗賊?復讐?
ここは・・ジェミニさんの言う通りなら・・地獄か?
ははは、そんなわけない。そうだな・・ここはゲームの世界っぽいな。
なら、俺の設定があるってことか。
すまない記憶が混濁していた・・良ければ俺のことを教えてくれないか?
鬼柳「・・辛い話になってしまうけどな・・」
俺は妻と娘を盗賊に襲われ殺されたという設定らしい。
盗賊に復讐すると言って町を出て行ったのが一週間前。
まぁ設定なら別になんとも・・現実の俺の話じゃないし。
そしてこの鬼柳も俺と同じ立場らしい。
つまり盗賊に妻子を襲われ殺された。
俺とこいつの違いは、復讐に行ったか行かなかったかってくらいか。
なんでお前は復讐しようとしないんだ?
鬼柳「・・復讐は復讐を生む。」
鬼柳「盗賊だって仲間がいるだろ?親がいるだろ?盗賊が殺されたらその人たちがどう思う?」
・・こいつバカか?
なら一方的に殺した方が得な世界になるじゃないか。
みんな気に入らないやつを殺すようになる。
鬼柳「そうだ、だから警察に委ねるんだ。私刑は復讐を呼ぶ。」
それは分からんでもない。
だが・・
警察が犯人を逮捕できなかったら?
逮捕しても加害者側の都合で罰を受けなかったら?
誰がお前を助けてくれる?お前が苦しむだけだぞ。
復讐は正しい!
鬼柳「個人の都合を優先するだけじゃダメだ。みんなが幸せになる方法が必要だと思うんだ。」
・・みんなが幸せになる方法か・・
ああ、それならわかる。
だが世の中はそうなっていない。
鬼柳「オレは考え続けるよ。なにが正しいのかを。」
鬼柳「でもさ、盗賊が犯人だってわかっているのに警察はまだ逮捕してくれないんだよな。」
鬼柳「お前の気持ちもわかるよ・・だからオレはお前を止められなかった。」
悪い奴じゃなさそうだな。
ただ考えが違うだけで。
鬼柳「盗賊は倒せたのか?」
どうだろう?
まだ・・だと思う。
鬼柳「そっか・・無理すんなよ。お前が生き残ったことにはなにか意味があるのかもしれない。」
鬼柳「その助かった命を軽々しく捨てたら意味すらなくなってしまうと思うんだ。」
もしゲームなら、この言葉にも意味があるのだろうか?
というか・・
死んだら教会で復活できないの?
鬼柳「死んだらそれまでだろ。」
復活の呪文とか。
鬼柳「ここをゲームと一緒にすんなよ。」
あれ?
もしかして・・・・死んだらおしまい?
セーブロードなし一発ゲームオーバーってクソゲー過ぎない?
・・まぁ現実と同じか。むしろここが現実?
あーやだやだ。そんなことのために命を懸けて盗賊退治とかやってられない。
それも顔も知らない設定上の妻と娘のためにだろ?馬鹿げてる。
そんなことより、俺は自由を謳歌しよう!
新しい人生の始まりだ!
・・
・・・・
まずは金が必要だな。
働けばいいのか?
ハロワを探しに町を歩いていたら・・死体があった・・
この町どうなってんの!?鬼柳説明して!
俺はすぐ鬼柳に会いに行った。
鬼柳「ああそのことか・・治安が悪いんだよ。」
それは見ればわかる!
警察は?
鬼柳「いるけど事件の方が多くてな。いまいち追いつかないんだ。」
そっか・・
教えてくれてありがとな。
俺はひとりになって考える。
そして結論を出した。
警察が仕事しないなら、俺も強盗とかで金を集めればいいんだ。
悪いのは警察だ。
なに、捕まっても妻と娘を殺されたかわいそうな人ってことで泣き落としすりゃいい。
俺はかわいそうな人なんだから仕方ないよな。顔も知らない妻と娘だけど。
・・
・・・・
・・とはいえ、強盗なんて難易度高そう。
包丁は用意したけど・・ええいままよ!
ドンっ!とドアを乱暴に開ける。
強盗だ!金を出せ!
老婆「ひぃえええ、いいい命ばかりはお助けを!」
中には太った老婆がいるだけだった。
これはイージーモード。
金を出せば命は許してやるよ。
老婆「はい!はい!すぐ持ってきます!」
老婆は金と宝石を持ってきた。
結構ため込んでるじゃん。
老婆「警察には連絡しません。それは差し上げます。だからどうか命だけは・・」
ま、金さえもらえば構わないかな。
それにしても強盗って楽だな。働くってバカらしい。
こんなにくれちゃって、婆さん老後は大丈夫なのか?
老婆「へえへえ、孫夫婦がございますのでそちらを頼ろうと思います。」
孫夫婦?
・・俺は、この老婆を殺した。
孫に事情を聞かれれば、俺の犯罪が明るみになる。
警察に通報しないと言ったが、他のやつに言わないと言ってない!
こんなやつ信用できるか!
俺は金と宝石をいただいて帰った。
・・
・・・・
鬼柳に教えてもらった自宅に帰る。
・・どう見ても知らない家だ。
ま、金はあるんだ。どうにでもなるさ。
そして1年後。
金が尽きた。
そして金で買える女にも飽きた。
あいつら金金金金って、金しか興味ないの丸わかりなんだよ!
俺の良さをちっともわかっちゃくれない。
イライラする。このゲームはクソゲーだ。
俺はな、いい女がいれば真面目に働くし、浪費もやめる。
悪いのは全部この世の中だ。
クソみたいなやつらしかいないのが悪い。
みんな自分のことばかり考えて、俺のことを考えてくれるやつがいないのはおかしい。
とにかく金が無いと生きていけない。
強盗でもするかな。前の婆さんは強盗し甲斐があったけど、世の中そんなに甘くないはず。
・・
・・・・
また適当な家に押し込むかなぁ。
おばさん「あ~らお兄さん。いつも高そうな服を着てるけどお金持ちなの?」
なんだこいつ。
どうせ金目当てだな。無視無視。
おばさん「あなたならミィシャちゃんのハートを射止めることができるかもねぇ。」
ミィシャ?
誰?
おばさん「昔この町に住んでた子なんだけどね、最近帰って来たの。」
おばさん「それがね・・うふふ、とってもかわいくなっててね~。」
はぁ。顔がいいだけの女は飽きた。
おばさん「性格もすっごく良くて、もてまくりなんだって。」
ビッチは興味ない。
処女こそ至高。
おばさん「でもね~、ミィシャちゃん誰とも付き合おうとしないのよ。」
おばさん「そういうのは大人になってから考えたいって。若いのに真面目よね~。」
・・へぇ。
その子、どこに住んでいるんですか?
おばさん「この近くのアパートよ。うふふ、告白するの~?」
告白より楽しいことかな。
おばさんとさよならして、俺はミィシャちゃんの住んでいるアパートへ向かう。
ピロリン♪
なんだ?携帯・・?
こっちじゃ充電できないから使わないでいたら無くしたと思ってたのに・・
というか戻れなくなったんだよな。別に帰らなくていいけど。
とりあえず携帯を見る。
通知だ。
”ジェミニさんがリアルゲームを実況しています”
お気に入り登録したっけ?
いやそれより充電どうなってんだ?
・・ま、ゲームの世界だしなんでもありか。
たまには見てみるか。
ジェミニ「あ、久しぶり~楽しんでいってね♪」
1年前と変わらない感じ。
時間の流れが違うのかもしれないな。
なんでいきなり携帯が・・はっ。
もしかしてこっちとそっちがつながったの!?
ジェミニ「そうみたいですね~、今なら現実に来れるかも。」
現実・・現実・・
ジェミニ「ゲームを見るのもいいけど、外に出るのも楽しいですよ♪来る?」
なんだろう、現実で俺はなにかとんでもないことをしたような気がする。
このいいようもない不安はなんだ?
これからこっちで楽しいことするんで・・ごめん
ジェミニ「そう・・」
そうだ、俺はこれから強盗をする。
結局1年前の婆さんの件で捕まることはなかった。
ここは簡単に金が稼げるいいところだ。
用があるので落ちます
ジェミニ「おつー、また来てね♪」
ここが楽しすぎて行く気がしない。
現実はゴミだ。
・・
・・・・
ここがミィシャちゃんの住んでいるアパートか。
俺は彼女が帰って来るのを待つことにした。
その夜・・かわいい女の子がアパートへ来た。
間違いない、この子がミィシャちゃんだ。
思った以上に俺好みの女の子だった。
俺は静かにミィシャちゃんの後ろに近づき・・包丁を背中に当てた。
大声を出すな。出したら刺し殺す。
?「・・え・・?」
ミィシャだな?
ミィシャ「は、はい・・」
よし、ドアを開けて中へ入れ。後ろは見るな。
ミィシャちゃんは震えながらドアを開け、中へ入った。
仕草もかわいいなぁ。お尻もかわいい。
強盗だ。金を出せ。
ミィシャ「お、お金を出したら助けてくれますか?」
ああ、約束する。金が欲しいだけだ。
ミィシャ「なら・・奥に金庫が・・」
金庫のある奥の部屋まで案内させる。
若いのに金庫があるのか。
ミィシャ「亡くなった両親から譲り受けたものです・・」
へー。
中を開けろ。
ミィシャ「は、はい。」
ミィシャちゃんは金庫の鍵を開けた。
あまり大きくない金庫だったが、中には現金や宝石が大量に入っていた。
どこでこんな金を手に入れたんだ?
ミィシャ「全部家族の形見です。事故でみんな亡くなって・・遺産や生命保険が・・」
すげえ。あの婆さんより持ってる。
ミィシャ「お金が欲しければ差し上げます。こんなものより、家族と一緒にいたかった・・」
なんてかわいそうな子だ。
家族が欲しいんだな?
俺はミィシャちゃんを目隠しした。
ミィシャ「あ、あの、なにを・・?」
その目隠しはとるなよ。なに、すぐ終わる。
俺はミィシャちゃんに家族をプレゼントした。
あと、ミィシャちゃんが誰とも付き合おうとしなかったのは本当だとわかった。
・・
・・・・
大金を手に入れ、スッキリもして家路を急ぐ。
ミィシャちゃんが俺の子を育ててくれたらと思うと・・また興奮してきた。
あ、鬼柳だ。
やぁ久しぶり。
鬼柳「ああ、ほぼ1年ぶりくらいだな。元気にしてたか?」
こいつは・・痩せた?
お前は調子悪そうだな。
鬼柳「時々思い出すんだ。妻と子の殺された姿を・・そうなると眠れなくて・・」
鬼柳「仕事も失敗しまくってなぁ。お金が無いって大変だわ。何をするにもお金がいるし。」
真面目に働くなんてかわいそうなやつだ。
仕方ないな。
金なら余裕あるから少しやるよ。
鬼柳「いや遠慮しとく。お前とは友達でいたいから。」
変わってるなぁ。
鬼柳「気持ちだけありがたく受け取っておくよ。」
鬼柳「・・お前みたいないい奴もいるってわかったらちょっと元気出てきた。」
鬼柳「みんな自分勝手だと思ってたよ・・」
わかる。
超わかる。
実感しまくりだよ俺も。
鬼柳「お互い苦労するな。なんか他人とは思えない・・本当にありがとな。」
鬼柳は優しく微笑んで行ってしまった。
金があればあいつも幸せになれると思うんだが。
ま、いらないと言うなら無理にやる必要もない。
さーて、今日はコンパニオン呼んで豪華にパーティでもするか。
・・
・・・・
半年後。
おかしい。前より金を持っていたのに、もう無くなった。
原因の一端があるとしたら、女を買う金をちょっと増やした程度なのに。
だって安い女じゃ満足できないから・・ミィシャちゃんは良かったなぁ。
そうだ!俺好みの女の子を片っ端から襲って金を奪っていれば、いつまでも金と女にありつける!
婆さんの時もミィシャちゃんの時も、俺は捕まらなかった。
ここはまるで天国のようなところだ。
早速いい女を見繕いに出かけた。
おばさん「え?清楚でかわいい女の子?」
博識で綺麗なお姉さんならご存知かと思いまして。
おばさん「もう、そんな本当のこと言ったってなにも出ないわよ!」
おばさん「えっとね、そこの商店の近くにあるアパートに・・・・」
ふむふむ。
おばさん「ちょっと離れているけどこの通りの向こうにある住宅街に・・・・」
ふむふむ。
おばさん「学校の近くに学生寮があってね・・・・」
ふむふむ。
いやぁたくさん教えていただきありがとうございました。
お姉さんは綺麗で性格もいいんですね。
おばさん「やだもう本当のこと言っても嬉しくなんかないんだから。」
超嬉しそう。
ちょろいな。
俺は道具を持って早速めぼしい女の家へ向かった。
・・
・・・・
まずは女の帰りを待つ。
ブスだったら嫌だからな。
・・来た!
顔よし、身体つきよし、服装もおとなしめでとても良い。
これは高評価。
女は1階に住んでいるのか・・なら・・
俺はわくわくしながら女が寝静まるのを待った。
・・・・
そろそろだな。
俺は足音を立てないようゆっくり女の部屋の裏へ行き、静かに窓に穴を開ける。
心の中でお邪魔しますと言って中へ入った。
熟睡している女にクロロフォルムを嗅がせる。
これでそう簡単には起きない。
まず部屋を物色することにした。金目当てなんで。
清楚で真面目だからといって、金があるとは限らない。
・・なんだけど、この子は堅実に貯めてるじゃないか。
こつこつ貯めた金を俺が使うなんてちょっと申し訳なく思ってくる。
でもありがたくいただいておこう。
この子ならまた貯められるよね。
そして・・この子は合格!俺の御眼鏡にかないました!
合格証書の代わりとして、新しい家族をプレゼント。
大切に育ててください。
・・・・
そこそこ大金だけど、豪遊して暮らすには全然足りないな。
いい身体だったから文句ないけど。
どうせ逮捕されないなら・・・・もっとやろう。
お金が無くなるまで待つ必要なんてないよな。
この辺りのいい女みんなに新しい家族をプレゼントしてあげよう。
・・
・・・・
・・これで30件くらいかな。
今日もいい女だった。生娘だったし。
おかげでつい朝まで長居してしまった。
眠くて辛い。
なんというか、生きてるって実感できるっていいな!
男「あの、ランプ買いませんか?」
は?
いきなり声をかけられた。
間違いない、こいつは危ない奴だ。
俺の稼いだ金を奪うつもりなのかも。いや絶対そうだ。
男「いえ、うわさを聞いたことありませんか?これはあの魔法のランプなんですよ。」
魔法のランプといえば、3つの願いを叶えるというやつか?
どうせ高いんだろ。
男「1円です。」
は?
男「あと3つの願いではありません。何度でもいくらでもお金をもらえるのです。」
男「そして、このランプを使った者が所有したまま死んだら地獄へ堕ちます。」
死にそうになったら手放せばいいんじゃないか?
見たところ元気そうだけど。
男「いえ事故はいつ起きるかわかりません。事件に巻き込まれることもあるでしょう?」
男「知っていますか?最近若い女性を狙った強盗が多発しているそうですよ。」
・・うわさになっているのか・・
知らないなそんなうわさ。デマじゃないのか?
男「いえいえ、警察が本腰をあげたという話ですよ。」
な・・・・
やりすぎたか?しばらく控えるか・・
男「で、買いませんか?あなたも大金を手に入れたらさっさと売ればいいんですよ。」
・・なんで”売る”なんだろうか?
捨てればいいんじゃないか?
男「それではいけません。他の人が持ち主にならなければならないのです。」
男「譲渡ではいけません。対価をいただくことで所有権が移るのです。」
悪い話じゃないけど・・金には困ってないからな。
ちなみにさ、買った金額より安い値段で売らないといけないとか言わないよな?
男「そんなルールはありませんよ。なんなら100万で買っていただいても構いませんが。」
男「ああいえ、お好きな金額でよいので買いませんか?」
つまり、買って大金もらってすぐ他の人に売れば殆どリスクないわけか。
うん。
買わない。
男「そんな><」
むしろさ、こいつを今殺したらすっごく楽しいことになるんじゃないかな。
地獄巡りに行ってらっしゃーい、みたいな。
鬼柳「あれ?」
おや鬼柳。半年ぶりだ。
こんな朝からどうした?悪いことでもしてたの?
鬼柳「ただの散歩だよ。健康のために歩いているんだ。」
鬼柳「前は夜歩いてたけど、治安どんどん悪くなってるみたいだし・・」
悪人天国かここは。
ひどいところだな。
男「おお!そこのお兄さん、魔法のランプ買いませんか?」
鬼柳「魔法のランプ?」
節操のない売り方だ。
まぁ買ってくれれば誰でもいいんだろうな。
いくらでも金がもらえるランプなんだって。
でも使ってから誰かに売る前に死ぬと地獄行きだとさ。
鬼柳「オレもうわさは聞いたことあるけど・・まさかこれが・・?本物か!?」
男「もちろん本物ですよ。なんなら使って見せましょうか?」
男はランプに100万を願った。
すると、ランプから100万が出てきた。
すげえ。
鬼柳「買う、買います!買わせてください!いくらですか?」
男「特別価格1円です!」
鬼柳「買った!!!」
いいのかな~?ここってゲーム世界だろ?
こういうのってイベント扱いだと思うんだよね。
つまり、使った瞬間から命を狙われるとかそういうの。
男は鬼柳にランプを売り喜んで去って行った。
おい大丈夫か?地獄に行く可能性があるんだぞ。
堅実に生きた方がいいんじゃないか?
鬼柳「・・オレも魔法のランプのうわさを聞いたことあるんだ。」
鬼柳「使えば大金が手に入るが、使ったら地獄行きだっていうシンプルなうわささ。」
ん?さっき聞いたのとちょっと違うな・・
売ればいいとかそういうのは?
鬼柳「オレが聞いたうわさにそんなのなかった。」
ええとつまり・・よりやばいじゃないか!
そんなのなんで買うんだよ!
使ったら地獄行き、使わなかったら価値無しだろ!?
鬼柳「・・なぁ、なんで世の中から悪人が無くならないと思う?」
・・は?
警察が仕事しないから。
鬼柳「オレはさ、悪人がいなくならないのには意味があると思うんだ。」
意味?
鬼柳「もしかしてここは、悪人が入れられる檻なんじゃないかって・・」
檻?監獄ってことか?
いやいや、ロトカ・ヴォルテラの方程式みたいなものじゃないのか?
あれ自体は捕食者と被食者のバランスについてだけど、善人と悪人もそういう関係があると思う。
悪人が増えれば人は警戒を強め、結果悪人は生きづらくなり善人が繁栄する。
善人が増えれば人は警戒を弱め、結果悪人は生きやすくなり悪人が繁栄する。
つまりはバランスを常に取り合おうとするから、善人も悪人もいなくならない。
鬼柳「果たしてそうだろうか。もし善人だけの世界があったとしたら・・」
あるの?
鬼柳「そこは天国とか極楽とか呼ばれているのではないだろうか?」
つまり悪人だけの世界があったら・・そこは地獄かな?
鬼柳「ああ。そして悪人にも天国へ行くチャンスがあると思う。」
鬼柳「オレはそれを証明したい。」
こいつもしかして・・奥さんと子供を殺されて頭がおかしくなったんじゃないだろうか?
な、なぁ、悩みとかあるなら相談に乗るぞ。
鬼柳「大丈夫だ。オレは真理に近づいている。」
間違いなくやばい!
鬼柳「お前も早く気付くといいな。きっとこの魔法のランプが鍵となる。」
まぁいいけどさ。そんなヤバいの早く手放した方がいいぞ。
鬼柳「これこそ天国への扉さ。」
心配だ。
ピロリン♪
・・携帯?
あれ?しまっておいたはずなのに・・俺の勘違い?
”ジェミニさんがリアルゲームを実況しています”
鬼柳「なんだそれ?」
このゲーム世界には携帯なんてなかったな。
無くても困らないけど・・金さえあればな!
通信機みたいなものだったけど、多機能化しすぎて一言ではわかりやすく説明できないな。
まぁ見ればわかるさ。
俺は鬼柳にライブ動画を見せてやった。
鬼柳「な、なんだこれは?面妖な・・」
ジェミニ「やっほー久しぶりー、元気してた♪楽しんでいってね♪」
鬼柳「しゃ、喋った!なんという高性能な通信機・・こんな小さいのに。」
こういう反応見るのも久しぶりだな。
ちょっといいか?挨拶するから。
鬼柳「挨拶?あ、ああそうだな。」
久しぶりです。友人と見ています。
ジェミニ「お友達も楽しんでいってね♪リクはいつでも受け付けてるから。」
鬼柳「な、なあこれは一体なんなんだ?」
どう説明すればいいんだろうな。
ぱっと見ゲーム世界だけど、あっちが現実で、ここがゲーム世界であって・・
まぁ違う世界、かな。
鬼柳「おお、やっぱり天国はあるんだ!」
天国とは違うけど・・
説明面倒だしいっか。
ジェミニ「今日はゲーセンに来てみましたー。」
うわぁ懐かしい。
でも粗い3Dだから現実って感じがしない。
鬼柳「おおお・・」
鬼柳が目を見開いて凝視している。
楽しそうでなにより。
しばらく鬼柳にライブ動画を見せてやった。
・・
・・・・
ふぁ~あ。眠い。
徹夜だったからなぁ。
鬼柳はいつまで見てるんだか。
そういやお前仕事はいいのか?
鬼柳「ああ!そうだ帰って朝ご飯食べないと!」
鬼柳「すまなかったな。じゃあオレ行くから!」
まったく慌ただしいやつだ。
金さえあれば生き急ぐこともない。
・・あいつは魔法のランプを使って金を手に入れるつもりだろうか?
でも大丈夫か?・・うわさもなんかいくつかあるっぽいし。
ジェミニ「ねえねえ、そろそろこっちに戻って来ませんか?」
ジェミニ「いつでも戻れるとは限りませんよ。これはチャンスかも。」
俺に問いかけているんだよな。
だって他に視聴者いないし。変なライブだ。
鬼柳・・友人が気になるからもう少しここにいるよ。
金もあるし。
ジェミニ「お友達の邪魔しちゃダメだよ。」
はいはい。
俺も帰って寝るか。
落ちます。
ジェミニ「また来てね・・次が最後よ。」
なにが最後なのかさっぱりわからん。
携帯をスリープにして、俺は家に帰った。
・・
・・・・
しばらくして、友人の鬼柳が亡くなった。
自殺・・だったそうだ。
他に身寄りもいなかったから、俺が火葬と埋葬だけやってやった。
遺品は役所の人が持っていった。
その中には、魔法のランプもあった。
あいつは一体、なにをしたかったのだろうか。
やっぱり悩んでいたのか?苦しんでいたのか?
役人「もしもし?あなた宛ての手紙がありましたよ。」
俺宛て?
お礼を言って手紙を受け取った。
”お前がこの手紙を見たのなら、もうオレは死んでいるだろう”
”突然のことですまない。だが相談したら止められると思ってな・・”
”オレの仮設をここに記す”
”あの魔法のランプこそ蜘蛛の糸のような存在だ”
”お前は地獄を知っているか?”
”もしここが地獄だとすると、オレたちは●●●●●なのだろう”
”●●と●●●●●●を味わうこととなる”
”何千年、何億年、何兆年、何京年・・”
”だがそれを抜け出す方法があるとしたら・・”
”●●●●●●は、使った者を●●へ堕とす”
”逆●●●●●、使わない●●●●●●●●●●●”
”もしここが地獄なら、●●●●●●を●●●●●●●●●●で●●から●●●●●”
”オレはそれを試そうと思う”
”天国で待ってる”
所々黒塗りされていていまいち意味がわからん。
でも・・あいつは・・鬼柳は悲観しての死ではなく、なにかを試そうとしたってことか?
抜け出す方法・・地獄から抜け出す方法・・?
鬼柳はここを地獄だと考えたわけだ。
地獄から抜け出す方法が書かれていたのか・・?
だが肝心なところが黒塗りされてわからなかった。
・・
・・・・
朝、買い物でも行こうと外に出たら警察がいた。
警察官「あ、少しよろしいでしょうか?」
・・何の用だろう・・?
はい、少しなら。
警察官「実は最近女性宅に強盗する事件が多発していまして、怪しい人物など見かけていないかと聞き込みしているんです。」
来た!
本当に本腰いれて捜査していたのか・・
自白したら俺の人生終わりだ。嘘をつけば嘘がバレた時に困る。
いえ特には。
近所付き合いも多くないので、人がいても怪しいかはちょっとわからないんですよね。
万能な言葉”わからない”
これが一番だ。
警察官「そうですか。突然金回りが良くなったとか、生活が変化した人などでもよいのですが・・」
俺のことかな?
さぁ・・わからないです。
すみませんお役に立てなくて。
警察官「いえいいんですよ。そういう人が”いなかった”場合も重要な意味を持ちます。」
警察官「狡猾な犯人かもしれません。遠方に住んでいて気付かないだけかもしれません。」
警察官「交流の少ない地域なら犯人が潜伏しやすかったりします。」
警察官「小さなヒントが大きな答えにつながることもあるんです。あなたの証言は必ず役に立ちます。」
・・無能警察じゃないのか・・
むっちゃやる気じゃないか。
警察官「では聞き込みを続けます。どうもありがとうございました。」
警察官「必ず犯人を捕まえ、みなさんが安心して過ごせる町にします!」
やばい。やばい。やばい。
このままだと絶対捕まる。
日の出の後に女の家から帰ったこともある。
俺を見ているやつもいるかもしれない・・
逃げるか?
町を出ればきっと・・
俺は買い物をやめ、家に帰って荷物を整理することにした。
ドンドン!ドンドン!
警察官「警察です!すみませんよろしいでしょうか!?」
え?なんで?
さっき話したばかりじゃないか。
別件?それとも俺が怪しいと踏んで・・?
捕まる。逮捕されてしまう!
警察官「あなたの奥さんと子供を殺した盗賊が捕まりましたよ!」
・・え?
寝耳に水だった。
な、なんだ・・そのことか。
がちゃ。
俺はドアを開けた。
警察官「ああ、無事でよかった。」
無事?
警察官「あなたと同じ被害に遭われた方がいたのですが・・・・自殺しておりまして・・」
鬼柳のことか・・
知っています。俺の・・友人でした。
警察官「そうでしたか・・それでですね、あなたに裁判で証言をしてもらいたいのです。」
と言われても、顔も知らない妻と娘だしなぁ。
警察官「いやまあ確実に死刑判決が下るような裁判ですよ。しかしまあ、全部明らかにするという意味もありまして。」
・・待てよ。これはチャンスかも。
俺が如何に善人なのかをアピールすれば、強盗の容疑者にならずに済むかも。
わかりました。俺の思ったように証言していいのでしょうか?
警察官「はい。素直な気持ちを話してください。嘘や悪口など言わなければ大丈夫ですよ。あ、あと物理的に容疑者を攻撃しちゃダメです。」
しませんよ。したら善人だって伝えられないじゃないか。
警察官は日時と場所を伝えると、すぐ帰っていった。
なんだ。心配して損した。
俺の善人っぷりを裁判で話せば、天国へもいけるんじゃないか?
裁判が楽しみだ。
・・
・・・・
そして裁判の日。
俺が証言する番が来た。
どうかその盗賊に更生する機会をお与えください。
私は死刑を望みません。
場がざわめく。
傍聴人「正気か?オレなら愛する妻と子を殺されたら、そいつを100回殺しても殺し足りないよ。」
傍聴人「オレもだ。それにあんな盗賊が更生なんかできるのか?」
傍聴人「なんにせよ・・あんな証言しちまったら、判決にも影響出るだろうな。」
顔も知らない妻と子のために復讐とか断罪とか何の意味があるのか。
それなら俺の役に立ってもらおう。
俺は紛れもなく善人。
悪事とは無縁の人物になれる。
裁判官「被告人はあなたの妻と子を殺したのですよ。」
裁判官「下された判決は覆りません。それでもいいのですか?」
同じ被害に遭った私の友人は自殺しました。
しかし彼も犯人を恨むようなことは一度もありませんでした。
悪いのは罪であり、今回の罪を償えるのは盗賊しかいないのです。
もし救いがあるとしたら、それは盗賊が罪を償った場合だと思います。
傍聴人「とんでもないアホかとんでもないバカだよこいつは。」
傍聴人「わけわからん・・罪を憎んで人を憎まずってことだろ?でもそんな考え本気でできるものだろうか・・」
傍聴人「盗賊が罪を償うかもわからないのに・・それなら死刑にした方が確実だろう。」
裁判官「・・勇気ある証言ありがとう。」
そして、盗賊は無期懲役となった。
・・
・・・・
あれから数日。
賛否はあったが、概ね俺のやったことは評価されている。
新聞にも尊い決断だと掲載された。
金は十分稼いだし、しばらくは遊んで暮らしても困るわけじゃない。
ほとぼりが冷めるまで大人しくするか。
ドンッ!
強盗1「大人しくしろ!」
強盗2「死にたくなければ金を出せ!」
ドアを蹴破って、男たちが押し入ってきた。
か、金なんかない!
強盗3「おう、なら命をもらうぜ。」
強盗4「金のない自分を恨むんだな。」
なんてやつらだ!
こ、こんなことしてただじゃ済まないぞ!
強盗1「そんなことないよなあ。」
強盗2「死刑にはしないでくれるんだろ?」
こいつら・・俺のことを知って・・
強盗3「ま、お前を殺して家探しでもするわ。」
強盗4「少しでも金目の物があればいいんで。」
わ、わかった!
そこの納戸の下に・・金はある。
強盗1「なんだ、初めからそう言えよ。」
強盗2「時間の無駄だぞぷっぷー。」
それ持ってとっととどっか行けばいいさ。
強盗3「いんや。せっかくだし楽しませてもらうぜ。」
・・は?
強盗4「最近流行ってるみたいだからなあ。強盗した家の家人を襲うの。」
待て!!!俺は男だぞ!!!!!
強盗3「あ、性別とか気にしないんで。」
強盗4「オレら平等主義者。」
あー!
強盗1「意外とよかった。」
強盗2「GOOD」
強盗3「ここは天国だ。」
強盗4「男一筋でもいいかも。」
男たちは、好き勝手やって帰っていった。
・・なんで俺がこんな目に・・お尻が痛い。
ピンポーン。
警察官「すみませーん、ちょっといいですか?」
警察?ちょうどいいのか遅いのか。
い、今強盗がうちに来まして!
まだ遠くへは行ってないと思うので早く捕まえてください!
警察官「そうですか大変ですね。でも今日は別件なんですよ。」
は?
この間の盗賊の件ですか?
そんなことより早く捕まえてください!
警察官「今日は、連続強盗&婦女暴行の件であなたを逮捕しに来ました。」
・・・・え?
・・
・・・・
俺は逮捕された。
だ、だが証拠が無ければ起訴はできまい!
俺がやったという証拠はあるんですか?
警察官「いえまだ確証はないんですよ。」
イケる!うまく世論を味方につければきっと・・
泣き落としくらいやってやる。
信じる気持ちを訴えよう。
愛は世界を救う。
警察官「加害者の体液がありますので、DNA鑑定すればすぐわかりますよ。」
・・え・・DNA鑑定あるのこのゲーム?
当然のように、俺が犯人だとバレた。
200件余りの強盗と強姦の罪で起訴され、俺の犯行だと認められたのは100件ほどだった。
・・俺がやったのって、強盗と強姦で30×2くらいなんだけど・・
だが、俺の言うことを信じる者はいなかった。
被害者からは死刑にしろと声高に叫ばれ、俺を擁護する声はなかった。
そして死刑判決が下された。
・・
・・・・
俺の処刑はギロチンだった。
ここは中世かよ!意外と苦しむって話じゃないの?
抵抗空しく、無理やり絞首台にセットされた。
なんでこんな・・
周りには俺の処刑を見ようと大勢の人が集まっていた。
趣味の悪いやつらめ!
ピロリン♪
え・・?
絞首台にセットされた俺の目の前に、俺の携帯があった。
さっき抵抗したときに落としたのか?
いや・・間違いなく持っていなかった。
なにかがおかしい!
”ジェミニさんがリアルゲームを実況しています”
いつものように通知が来た。
そして今回だけなぜか、勝手に通知が開きジェミニさんのライブ映像が流れる。
ジェミニ「やっほー。元気してた?ゆっくりしていってね♪」
ずっと変わらないジェミニさんの声。
助けて!
俺は大声を出した。
こちらの声が通じるわけがない・・はずだが・・
ジェミニ「罪を犯したら罰を受けなきゃダメですよ。」
なぜか通じている・・?
もっと早く捕まっていたら、こんなに罪を重ねることはなかった!
俺の罪は最初の罪だけだ!あのお婆さんだけ!
他は警察の怠慢が悪いんだ!
ジェミニ「その罪じゃないよ。」
え?
ジェミニ「そうそう、キミのお友達は地獄から抜け出せたよ。」
そうか・・良かった・・
そして、刃が俺の首をはねた。
・・
・・・・
ジェミニ「閻魔ちゃんただいま♪」
閻魔「これはジェミニ殿。罪人の様子はどうでした?」
ジェミニ「まだ改心するには時間かかりそう。」
閻魔「そうですか・・仕方ありません。彼は幾度も強盗を働き、その際に罪もない女性とその娘など、10人を強姦し殺害した凶悪犯です。」
閻魔「あと729京2937兆1933億4793万8193回の地獄巡りが残っています。」
閻魔「彼はどの様な行動をとろうと、己が犯した罪の被害者となる苦しみが待っているのです・・」
ジェミニ「これをもって即ち、因果応報。」
閻魔「はい。苦しんだ者へは救いを。苦しめた者へは罰を。」
ジェミニ「そういえば、私あまり地獄に詳しくないんだけど、なんで地獄が人間の町並みしているの?」
閻魔「もしかして、天国は花が咲き乱れていると思っていますか?」
ジェミニ「人間はそう言いますよね。」
閻魔「ですが、それは違います。実は天国も地獄も違いはありません。」
ジェミニ「ああなるほど、なにがあるかではなく、なにがいるかの違いね。」
閻魔「はい。心に地獄を宿した者は、どこへ流れ着こうとその地を地獄へ変えてしまいます。」
閻魔「地獄とは、心に地獄を宿した者が住む地なのです。」
閻魔「天国も同様。花が咲き乱れているのは、花を育て咲かせる者が住んでいるだけのこと。」
閻魔「ですので天国も地獄も、そこに住まう者にとっては”当たり前の世界”なのです。」
閻魔「他者を救う者のいる世界は、他者から救われる世界でもあります。」
閻魔「他者を苦しめる者のいる世界は、他者から苦しめられる世界でもあります。」
ジェミニ「その理論でいけば、地獄も天国のように変えられる?」
閻魔「理論上は。しかしそうはならないでしょう。」
閻魔「彼らの殆どが改心に途方もない時が必要だから、そして人間は場に流される生き物だからです。」
閻魔「仮に、もし銀行の貸出金利が高かったらお金を借りる人は少なくなりますよね?」
ジェミニ「ええ。」
閻魔「では逆に、貸出金利が低かったらお金を借りる人は多くなりますよね?」
ジェミニ「ええ。」
閻魔「ならばその差は、お金を借りる必要がないのに借りた人です。」
閻魔「人は己の意志で全て決めているわけではありません。環境で行動は変化します。」
閻魔「地獄へ行った者は、大抵地獄作りの一端を担うだけです。」
ジェミニ「今回はひとり地獄から脱出したけどね。」
閻魔「彼の者は欲に溺れずよくぞ答えを見つけました。魂は浄化され新たな人生を歩むことでしょう。」
ジェミニ「鬼柳ちゃんのヒントを全部見せてあげたかったな・・ちらっ。」
閻魔「あんなのが広まったら地獄は地獄で無くなってしまいます。」
閻魔「本来なら黒塗りなどせず没収していましたよ。どうしても見せたいというから・・」
ジェミニ「残念。」
ジェミニさんは、例の遺書を見て微笑んだ。
”お前がこの手紙を見たのなら、もうオレは死んでいるだろう”
”突然のことですまない。だが相談したら止められると思ってな・・”
”オレの仮設をここに記す”
”あの魔法のランプこそ蜘蛛の糸のような存在だ”
”お前は地獄を知っているか?”
”もしここが地獄だとすると、オレたちはきっと罪人なのだろう”
”延々と地獄の苦しみを味わうこととなる”
”何千年、何億年、何兆年、何京年・・”
”だがそれを抜け出す方法があるとしたら・・”
”魔法のランプは、使った者を地獄へ堕とす”
”逆に考えると、使わない者は地獄へ送れないんだ”
”もしここが地獄なら、魔法のランプを使わないまま死ぬことで地獄から抜け出せる”
”オレはそれを試そうと思う”
”天国で待ってる”
ジェミニ「じゃ、また行ってくる。」
閻魔「天使殿がそこまでお手をわずらわなくてもよろしいと思うのですが。」
ジェミニ「途中で地獄から抜け出す方法を見つけるのが先か、729京2937兆1933億4793万8193回の地獄巡りを終わらせるのが先か。」
ジェミニ「デッドヒート!」
ジェミニ「ま、最後まで見ててあげる。見捨てたりなんかしないわ。」
閻魔「私らはそこまでひとりひとり相手にすることはかないません。すべては天使殿のご意志のままに・・」
END.
あとがき。
まずは見ていただきありがとうございました。
なんかよくわからない話だと思ったら地獄だった。
・・というだけの話です。
とりあえず元ネタ紹介。
最初の現実とネットの境目がわからなくなるのは前作と同じ。
ナナシ〇ゲエムさんからだと思います。
ネット楽しいお(^p^)
裁判で、盗賊さんを許すのは漫画であったような。
Q.E.〇.という漫画でしたっけ。
ええと・・(何巻か調べ中)46巻です。
漫画楽しいお(^q^)
ええとあとは・・終盤の、このセリフかな?
”閻魔「はい。心に地獄を宿した者は、どこへ流れ着こうとその地を地獄へ変えてしまいます。」”
ネット掲示板の書き込みなんですが、元ネタ検索したらヒットしませんでした・・
とりあえず↓これが元ネタ。うちのハードディスクに保存してあったやつです。
83<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´ )さん2017/11/12(日) 18:21:38.69ID:eiJOjrvj
>>75
所詮心に地獄を宿した者達は例えどんな場所に流れ付こうとも
その場所で新たな地獄しか生まないと言う話の奴だな。
たぶん消されたか、アーカイブに入ったかなんかで検索から漏れたのかなーと。
わかりませんが、まぁこれが元ネタです。
あとはまぁ、仏教とかは書かなくてもわかるとは思いますが。
仏教って、刑罰の期間長いですよね。そのあたりを使わせてもらいました。
エンドレスエイト!・・ちょっと違うか。
ええと、刑罰そのものについては変えました。
個人的な意見で申し訳ないですが、例えば盗みを働いた人がいて、
その人が熱湯の中に入れられる罰を受け、反省したと言った場合・・
それ、熱湯の中に入れられるのが嫌なだけで、反省してないよね?って話。
罰を受けるのが嫌だから罪を犯さないという考え方は、果たして善人の考え方でしょうか?
罰がなくても罪を犯さない人こそ善人・・というか常人だと思います。
そう考えた場合、罪に対する罰は、同じ被害を与える方がわかりやすいかなと考えました。
つまり、盗みを働いた人への罰は、盗まれる被害に遭うこと。
レイプした人は、レイプされます。
人を殺したら、殺されます。
犯した罪と同じ被害に遭うことで、こんなにも辛いことなんだよ。こんなことやっちゃいけないよね?
と、理解してもらおうという考え方です。
仏教でも一部の地獄はそういう感じでしたが、全部じゃないので、根本的な考え方は違うのかと。
ハンムラビ法典も近いですが、あれ身分差別があるんですよね。
より上の身分の人への罪は、犯した罪より大きな罰を受けるようです。
つまり、罪を犯す相手によって罰が変わるというもの。
なので今回のとはちょっと違います。
あ、この考えをそのまま現実に当てはめるとおかしなことになるのでしないでくださいね。
人が罪を犯すということは、その人の悪性だけでは決まりません。
例えば貧しき故の犯罪があります。
衣食足りて礼節を知ると言うように、暮らしに余裕が無ければ道徳や社会秩序などを守る余裕もないのです。
それはその人の善悪に関係ありません。
だからといって犯罪が許されるというわけではありませんが。
あ、この話は下手すると”貧乏人=犯罪者”みたいな発想に行きつきかねないので、話半分程度に聞いといてください。
あくまでも、犯罪行為に導かれやすいという程度です。
貧しくても殆どの人が犯罪とは縁のない生活を送ります。
他にも心弱き故の犯罪があります。
これは多少心が強くても防ぐのは困難です。
みんなやってるから、お金がもらえるから、親しい者からの誘い、捕まらなければいい、
ちょっとだけ、仕方なく、いつでもやめられると思った、興味本位で、こんなことになるとは思わなかった・・
主に周りから誘われたり勧められたりと、誘惑された場合です。
わかりやすいのは麻薬の類。
自分で興味を持って、苗を用意して作り出す人・・なんてそうそういません。
基本的に、他者から勧められて使いだす人ばかりです。
では他者からの悪しき誘惑に乗った人がみな邪悪なのかといえば、そうではありません。
生活のストレスから逃れたくて手を出す人もいます。
誰だって苦しいのは嫌です。そこから逃れようとするのは悪ではありません。
気付かずに使ってしまい、中毒になってしまった人もいます。
悪人だからそうなったわけではありません。
興味本位で手を出してしまった人もいます。
きっかけは様々です。しかしみな悪人だからというわけではないのです。
悪しき者からの誘惑があっただけ・・しかし麻薬は犯罪です。
一時的な幸福があっても、その行きつく先には破滅が待っていたりします。
とまぁ少し例を出したように、悪人だから犯罪に手を染めるとは限らないのです。
話をちょっと戻して・・なので、作り話と現実はごっちゃにしないでください。
作り話は作り話、現実は現実です。
もし現実の犯罪について考えるのなら、作り話をソース(情報元)にしてはいけません。
現実のことは、現実の常識で考えるようお願いします。
いるんですよ。
現実と作り話をごっちゃにする人が。
A「お医者さんって大変ねぇ」
私「なんでそう思ったの?」
A「ドラマで大変そうだったから」
海外ドラマをよく見てた人なんですけどね・・
本当にこういう人がいます。
みなさんは、現実と作り話を間違えないようお願いします。
マジでやばいですよ。
指摘しても説明してもまったく考えを変えません。
・・まぁ、私の信用が足りないだけかもしれませんが・・
その人は、なにを言ったかより、誰が言ったかを重視する方なので・・
人間って、怖い。
とまぁ今回の話ですが、元々は以前書いた”悪魔の声”の続編にするつもりでした。
最初はそのつもりで書いていましたが、なんか違うなーと思って結局別の話にしました。
悪魔の声が無くてもサクサク悪いことしちゃうし・・タイトル詐欺になりかねないです。
あ、そうそう。
税率23%で税込み615円なら、税別価格は500円です。
きゃー怖い。
あとがき終了!
”現実≠≒=地獄”は完結しました。
(ちなみに読み方は、”げんじつ いこーる じごく”です)
2018年7月22日(日)19:39
書いた人:おぺ