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107話 お屋敷と木の柵

「で、これらはどこに運べばよろしいので?」




 なんと驚いたことにこのマッチョ店員ズは僕が購入した全ての木材を家まで運んでくれるらしいのだ。

 その心遣いはとても嬉しいが、僕達の家はここからとても遠い場所にあるので断らせてもらう。




「いえ、これらは自分で持って帰りますから大丈夫です。ありがとうございます」




 そう言うとマッチョ店員ズは何やら困惑した表情を見せた。それもそうだろう。[ブースト]を使ってないとはいえ、大人数人でようやく一本を運べる大きさの木材を、たかだか七歳児の子供二人が自分で持って帰ると言っているのだ。マッチョ店員ズが大いに困惑するのは仕方のないことである。




「いや、でもどうやってこれだけの木材を運ぶんですかい?」




 するとマッチョ店員さんがそんなことを聞いてきた。これは説明するより実際に見てもらった方が早いので、早速実践する。




「こうやってですよ。[ストレージ]」




「「「「「おお!?」」」」」




 [ストレージ]の入り口を木材が積み上げられている床に開いたことによって、まるでブラックホールに吸い込まれるように積み上げられた木材が僕の[ストレージ]の中に消えていった。

 マッチョ店員ズの声が見事にハモったな。しかもその驚いた表情は全員似たような顔をしている。




「それじゃあ、ありがとうございましたー」




 そんなマッチョ店員ズを置いて、僕らははぐれないように再び手を繋ぎ、オッズ商店を出た。




「店員さん達、凄いビックリしてたわね」




「そうだね」




 ネイが楽しそうな声でさっきのマッチョ店員ズの反応の感想を述べている。それに僕は相槌を打ちながら人のいない路地裏へとネイを連れて行く。

 目的の物は手には入ったのでこれから帰るのだ。もちろん[風撃]を使って。



 そして周りに人がいなくなったことをしっかりと確認して僕らは空を飛ぶ準備をする。まずネイをおんぶして、そしてネイが透明マントを僕の体ごと巻くのだ。




「あ、ちょっと待って。[ストレージ]」




 ネイが透明マントを僕らの体に巻きつけている途中に、僕は忘れていたことを思い出した。

 一旦ネイの手を止め、[ストレージ]から黒くて大きな鳥の形をしたマスクを取り出す。




「なんでそんなマスクをつけるの?」




「透明マントを巻いてない顔だけは空を飛んでも下から見えちゃうからね。そのための偽装だよ。……よし、マントを巻いちゃっていいよ」




 そう。透明マントで隠している部分は外から中は見えないが、同時に中から外の様子も見えないのだ。なのでいつも透明マントを使うときは最低でも顔の上半分は隠さないようにしている。

 だが飛んでいる最中にその顔の上半分だけ見つけられる危険性は十分にある。そうなれば人々が混乱するのが分かっているので、こうやって鳥の形をしたマスクを着けるのだ。これを着ければたとえ下から見られたとしても鳥だと誤認してくれるだろう。

 それをネイに説明するとネイはなるほどと頷き、再び透明マントを巻いてくれた。




「できたわよ」




「了解。それじゃあいくよ。[魔障壁]、[風撃]!」




 ネイが透明マントを巻き終わったらしいので、僕は円錐形の結界を周囲に張り、[風撃]で空を飛ぶ。

 空を飛んでいる間、相変わらずネイは透明マントの中で力強く僕の服を掴んで、下を見ないようにしている。慣れたら気持ち良いんだけどなー。



 結界を円錐形に周りに張ったことにより空気抵抗の問題がなくなり、全力の[風撃]で飛ぶこと約三十秒。僕は足下から上向きの[風撃]を何回か放つ事によって徐々に減速し、新しく住むことになる家の前に着地した。




「おぉ。近くで見ると意外と大きいな。あ、ネイ、着いたよ」




 この家全体から僅かに魔力が感じられる。恐らくこの家には耐久性を伸ばすための保護魔法がかけられているのだろう。空き家とは思えないほど白くて綺麗な家だ。




「早かったわね。……わぁ、本当に大きな家ね!」




 すると背中でもぞもぞと動いていたネイが透明マントを解いて出てきた。

 彼女もこの家を見て驚いている。




「ライン、早く中に入りましょ!」




「はいはい」




 ネイが僕の手を引っ張りながら扉を開け、今日から住むことになるこの家の中に入る。




「うわぁ!」




「へぇ……」




 ドアを開けるとそこはロビーであり、そして二階へと続く階段が正面にある。そして両脇には通路があり、その先は食堂やテラスがある。……完全にお屋敷じゃないですか。いやー、下見の時にちゃんと近くまで来て確認すべきだったわ。管理大変だわ、これ。……いや、魔法があるから管理はそれほど大変でもないか。現に実家ではアンナとサーシャだけであの屋敷を管理していたわけだし。なら大丈夫だな。

 ……むしろ部屋が多い分色々とできるから得じゃん!




「ライン、どうしたの? おーい」




「……あ、ごめん。一人で考え事をしてた」




 いかんいかん。一人で考え込んでいたせいで意識が現実に向いてなかった。

 僕の意識が現実に戻ったことを確認したネイは、再び僕の手を引っ張って今度は家中を探検し始めた。




「すごい! すごいわ! こんなに大きな家に住めるなんて夢みたい!」




 そして探検が一段落し、ロビーに戻ってきたネイは目をキラキラとさせながらそう言っている。それに対して僕は、この屋敷が思っていた以上に広い事を知りどう管理していこうかと考えを巡らせる。

 うーん。まぁなんとかなるか。とりあえず今は目先のことをするとしよう。




「ネイ、僕は落下防止のための木の柵を作ってそれを設置してくるよ」




 この家は緑の広大な土地がある代わりに、家の裏庭から少し歩くと海に面した崖になっている。その崖は落下したら確実に死ぬ高さなので、僕はさっきオッズ商店で買い込んだ木材で落下防止の柵を作りそれを設置することにする。




「わかったわ。それじゃあ、あたしは……掃除でもしようかしら」




 ネイはそう言ってルンルンと水場の方にスキップしていった。

 僕もさっそく作業に取りかかるとしますか。




「[ストレージ]、[ブースト]っと」




 裏庭に出て[ブースト]を使い、先程オッズ商店で買った丸太の内の一本を取り出す。




「高さは……大体胸辺りでいいかな?」




 それに多量の魔力を流して魔力掌握し、特に特徴もないシンプルな木の柵に変形させる。とりあえず今は実用性重視で、余裕がある時にちょっとずつおしゃれにしていこうかな。




「[アースホール]。よっと」




 そしてそれを、魔法で崖っぷちに開けた穴に差し込んで柵の下半分を地面の中に埋める。これで後は穴を魔法で埋めて……完成っと。

 後はこれと同じことを繰り返すだけなので落下防止の柵はすぐに設置することができた。これで不慮の事故で崖下に転落することは無いだろう。あ、魔法陣を刻んで耐久力を上げておこう。柵が朽ちてしまったりしたらそれこそ危ないからね。

 ……今はこれでよしとするけど、念には念を入れて後々ここに結界の魔道具を設置して更に安全性を高めていこうかな。

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