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105話 課題と寄り道

 ……いや、別に付きっきりで教え無くてもいいのか。




「僕が付きっきりで二人に魔法を教えるのはできないけど、僕が出した課題をするっていう形で良いなら教えることはできるよ」




 課題を出すという形を取ればネイと二人でいることができる時間は殆ど減らないし、二人の魔法の技量を高めることができる。後は二人がその課題をちゃんとするかどうかなんだけど、それは自己責任の問題なので深く考えなくても良いだろう。




「そうか。ならそれで良い。是非教えてくれ」




「私もその形で問題ありませんわ。是非教えてくださいまし」




 僕がそう提案すると二人は一も二もなく頷いた。なら僕から課題を出すという形に決定だな。




「分かったよ。それじゃあ今日の迷宮探索はこれで終わりにして、早速魔法の訓練を始めようか」




 それでも初めの一日くらいは付きっきりで訓練した方が良いだろう。ネイも特に不満はなさそうだ。転移の祭壇に向かう僕の横に来て大人しく歩いている。



 そうして僕らゴールドクラスの迷宮探索組は学園へと戻り、そこでオークの買い取りを済ませた。




「まだ実技の授業中みたいだから僕らは教室で魔法の訓練をしようか」




 実技の授業は第三体育館で行われている。そのため実技の授業中である今ならば誰も教室にいないだろう。だから邪魔者が入らない教室で訓練を行うことにした。

 ちなみに午後からの授業は全て実技の授業であるため、地下迷宮探索組はノルマの魔物ポイントを稼ぎ終えたらそのまま家に帰って良いことになっている。

 これからはすぐに家に帰ることもあるだろうけど、今日は当然帰るという選択肢は選ばない。

 僕らは誰もいないゴールドクラスの教室に戻ってきた。




「じゃあ早速始めようか。まずは二人とも魔力を少しずつで良いから体内から外に流して」




「分かった」




「分かりましたわ」




 教室に戻ってきた僕らは適当な席に座り、すぐに二人の魔法の訓練を始める。




「あたしはこっちで勉強しておくから、終わったら声をかけてね」




「りょーかい」




 ネイは二人の邪魔にならないように教室の端っこの席に座り、ストレージから勉強道具を取り出して勉強を始めた。

 意識をネイからジョゼットとフレンダに戻す。




「そうそう。そんな感じでいいよ。その状態で常にいることがまず最初の課題ね。そうすれば魔力量は上がっていくから」




 常に魔力を放出し続けることによって、体は減った分の魔力を回復させようとする。それを続けることによって単位時間辺りの回復量と保有魔力量は徐々に上がっていくのだ。

 ちなみに僕は今でも毎日魔力隠蔽を施しながら魔力を放出し続けて生活していたりする。ネイは僕があげたネックレスに常に魔力を注いでいるから同じ様なものだ。




「この状態を常に、か」




「それは……我ながら情けないことですが、魔力量がもつ自信がありませんわ」




 すると二人がそんなことを言った。そりゃあ最初から常に魔力を体中から放出し続けるのは厳しいに決まっている。




「常にとは言ったけど、僕も二人が最初から常に魔力を放出し続けることができるとは思っていない。だから魔力欠乏症の症状が出始めたらすぐに魔力の放出を止めてね」




 無理をするのは体にも精神的にも良くない。それに無理をし続ければ、魔法の訓練を行うことに対して嫌な感情を持つ事になるだろう。だから僕は二人に無理をしないことを徹底的に言っておく。

 そして僕は次の指示を出す。




「で、次は魔力操作の技量を高めるための訓練なんだけど、これは魔力欠乏症の症状が出始めて魔力の放出を止めてる間にやってほしいんだ。[ストレージ]」




 僕はそう言って[ストレージ]から恒例の黒い紙を三枚取り出し、その内の二枚を二人にあげる。




「これはスライム紙か?」




「そうだよ」




 僕がそういうと二人は不思議な顔をした。

 スライム紙は一般的には魔力量を手軽に測るものだと思われている。だからこれで魔力操作の技量を高めると言われてもピンとこないのだろう。




「僕が持っているこのスライム紙をよーく見ててね」




 だから僕はまず二人の前で実践する事にした。

 魔力を糸のように細くしてそれをスライム紙に慎重に流し込む。こうすることによってスライム紙には一本の線が入るのだ。その状態にして僕はスライム紙上に犬の顔を描く。




「嘘だろ……」




「スライム紙でそんなことができるだなんて……」




 僕が二人にできた絵を見せると二人は両目が飛び出んばかりに目を見開いて驚いている。

 そんな二人の反応を楽しみつつ、僕は二人にやってみるよう指示を出す。




「……くそ! これはかなり難しいな……」




「……そうですわね。魔力がスライム紙上に広がらないように制御するので精一杯で、とても線なんか描けませんわ」




「まぁ最初は誰だってそんな物だよ。だけどこれができるようになったら、大抵の魔法は使えるようになるよ」




 顔を下に向けてうなだれた様子の二人にそう激励の言葉を送る。

 すると二人はまるで暗闇の中から一筋の光を見つけたような顔をしてガタガタッと立ち上がった。




「それはホントか!?」




「それはホントですの!?」




「う、うん。ホントだよ」




 同じような顔をして同じ言葉を発する二人。そして二人は同じように僕に詰め寄ってくる。そんな二人の迫力に押されながらも僕はなんとかそう返事を返した。




「ならこれができたら俺も固有魔法を……」




「これができたら私もあのような強力な魔法を……」




 すると二人はさきの迫力が嘘だったように静かになり、元の椅子に座ってそう呟きだした。

 そんな彼らを見て苦笑しつつ僕は席を立つ。




「この二個を毎日することが僕が二人に課す課題だよ。最初は全然成果が出ないように感じるかもしれないけど、続ければ絶対に成果が出てくるから頑張って」




「あぁ! もちろんだ!」




「ラインに言われた通り、毎日これをしますわ!」




 僕が二人に激励の言葉を送ると、二人は目にメラメラとした炎を浮かべてそう言った。これだけのやる気があるなら、途中で折れる事無く最後までやり遂げるだろう。

 そう判断して僕はネイに声をかけ、教室を出る。一応ジョゼットとフレンダにも声をかけたのだが、二人は僕が与えた課題をやると言って教室に残った。







「ネイ、少し寄り道してから帰ってもいい?」




 教室を出て少し進んだ所で僕はネイにそう言う。

 当初の予定では学園の誰もいない所でネイをおんぶして、その上から透明マントを巻き、空を飛んで帰る予定だった。

 しかしとあることを思い出したので、僕はネイに寄り道をしても良いか聞く。




「別にいいけど、何で寄り道をするの?」




 するとネイは不思議そうな顔をしてそう言ってきた。

 なので僕はネイに寄り道をする理由を述べる。




「実は家に帰ってからしようと思っていたことがあったんだけど、その材料が無いことに気づいてさ。その材料が売ってないか探そうと思って」

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